米国バイデン政権2年目の正念場~「バイデンのオセロゲーム」評価は?
ジョー・バイデン氏が米国大統領に就任して、2022年1月20日でちょうど1年を迎える。政権についてからの日々を「バイデンのオセロゲーム」を名づけてみた。
トランプ前政権とは違うカラー
オセロゲームは、黒と白2種類のコマを使うボードゲームで、相手のコマをはさむと、そのコマは自分の色に反転する。前大統領の共和党ドナルド・トランプ氏と民主党バイデン大統領、どちらが黒でどちらが白かは定かではないが、バイデン氏の1年は、トランプ政権の政策を次々とひっくり返すことに費やされた。トランプ氏が唱え続けた「アメリカ・ファースト(自国第一主義)」からの脱却をめざし、バイデン氏は「国を結束させる」「同盟関係を修復する」と訴え、それを実行した。
バイデン政権の外交とは?
地球温暖化対策に取り組む「パリ協定」。トランプ政権が脱退したが、即刻復帰した。WHO(世界保健機関)からの脱退手続きも中止して留まった。核軍縮の新戦略兵器削減条約(新START)も5年間延長した。中東和平問題では、イスラエルに肩入れした前政権と違い、再び相対するパレスチナの支援を再開し「二国間共存」へ舵を切った。これからすべて国際社会に大きく関わるものばかりであり、トランプ前大統領が軽視(?)したG7サミット各国からも歓迎の声が上がった。しかし、一方で、バイデン大統領が「オセロゲーム」でコマを“ひっくり返さなかった”あるいは“ひっくり返せなかった”ものが2つある。この2つのテーマが、世界に影を落としている。
アフガン撤退のジレンマ
ひとつは、アフガニスタンからの撤退である。2001年9月の同時多発テロ以来、米国はアフガニスタンに軍を駐留させたが、それを終了した。ベトナム戦争の10年間を大きく超える20年という歳月だった。これはトランプ前政権とタリバンが結んだ和平合意に基づくものだったが、米軍撤収のタイミングでタリバンは攻勢に出て、政府を倒した。米国内の世論は、戦争の長期化に疲れていて基本的には「撤退を支持」。しかし、国際社会においては、この撤退の持つマイナス面がクローズアップされた。
「米国はアフガンとのパイプ役の座を譲り、その影響力は低下してしまった」
日本記者クラブで講演した中東調査会の青木健太氏はこう分析する。厳冬を迎えたアフガン、その人道支援も大きな国際問題になっている。
台湾をめぐる中国との緊張
もうひとつは、対中国政策である。中国を「敵」としたトランプ前大統領と違って、バイデン大統領は「競争相手」と言う。2021年11月には中国の習近平国家主席とオンラインながら、顔を見合わせて会談をした。しかし3時間半に及んだ会談は、多くのテーマで平行線。とりわけ深刻なのは「台湾問題」だった。台湾をめぐる米中対立は前政権から続いている、中国はあくまでも台湾の独立を認めないが、米国は蔡英文政権を支持して一歩も引かない。その緊張の舞台が台湾海峡である。米連邦議会の調査委員会は「台湾海峡をめぐる“危険な不確実性の時代”に突入した」と分析し、ブリンケン国務長官も「中国が台湾に侵攻すれば、多くの人にとって恐ろしい結果になる」と動きをけん制する。
どう動く?アメリカ国内の世論
中国への強硬姿勢に対しての米国内での支持は大きい。「中国に厳しく」という世論はますます強く、対中国政策で弱気な対応を見せれば、それはバイデン氏の民主党政権にとって国民の支持を失いかねない局面に直結する。秋には中間選挙がある。2021年11月の2つの州知事選挙、バージニア州ではバイデン大統領が応援に入ったにもかかわらず民主党候補が破れ、ニュージャージー州でも民主党の現職知事が大苦戦して辛くも逃げ切った。中間選挙の結果、そして次期大統領選の結果によっては「オセロゲーム」の主役が再びチェンジしかねないのだ。
2022年の世界も“世界唯一の超大国”と言われる米国を中心に動くだろう。2月の北京冬季五輪パラリンピックを見据えた外交戦術、さらにロシア軍が国境に展開して緊張が続くウクライナ情勢など外交の課題は山積である。その一方、苦戦している国内での支持率。「バイデンのオセロゲーム」の評価はいかに?バイデン政権2年目は、秋の中間選挙に向けて、国内外の多くの緊張と共に歩んでいくことになる。
【東西南北論説風(312) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】