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揺れる英国と沖縄に見る「国民投票」「県民投票」の民主主義の姿とは?

揺れる英国と沖縄に見る「国民投票」「県民投票」の民主主義の姿とは?

「民主主義」という言葉を誰もが一度は口にしたことがあるだろう。それはかつての学校の授業だったかもしれないし、所属する組織での何かの場面だったかもしれないし、もっと日常のさりげない風景の中だったかもしれない。
『広辞苑(第7版)』(岩波書店)によれば「民主主義とは“人民”と“権力”とを結合したもので、権力は人民に由来し、権力を人民が行使するという考えとその政治形態」とある。ならば、国政上重要なテーマについて国民が投票する「国民投票」は、民主主義を具現化する手段としては最も分かりやすいものであるはずだ。

国民投票の結果は「離脱」だが・・・

EU離脱に向かう英国が揺れている。2016年(平成28年)6月に行われた国民投票は52対48という比率によって「EU離脱」というイギリス国民の意思が明らかになった。かなり拮抗した結果であるが、その方向に進むことが民主主義である。
しかし、いよいよ離脱の日を2019年3月29日に控え、英国政治の混乱が続いている。イギリス政府とEU(欧州連合)との離脱合意案が、1月15日の議会で否決された。
それも反対票432に対し賛成票202というダブルスコア以上の大差である。国民投票の結果とは正反対である。

イギリスはどこへ向かうのか?

離脱日が刻一刻と迫る中、その延期、または国民投票の再実施などという声も出始めている。メイ首相はいずれも否定しているが打開の道は見出せていない。離脱日の延期にはEU27か国の同意が必要であり、そう簡単に事は進みそうもない。
ならば国民投票の再実施か?しかしそれを認めるということは、投票時点で実は数々の問題が積み残されていたことを認めるということになる。そもそもの国民投票の存在自体を否定することにならないか。
一方で「別れる」と言われた側のEU各国も戸惑っている。東西ベルリンの壁が崩壊してからちょうど30年の2019年、ヨーロッパは予想外の事態に直面している。

県民投票に思わぬ局面が・・・

わが国ではこれから実施しようという「県民投票」に悩んでいる自治体がある。沖縄県だ。名護市辺野古への米軍新基地建設に向けて埋め立ての是非を問う「県民投票」は2月24日に予定されている。
しかし、ここでも思わぬ事態が起きた。沖縄・うるま・宜野湾・宮古島・石垣という5市が、県民投票への不参加を表明した。この5市の有権者数が沖縄県41市町村全体の3割余りというから事態は深刻だ。それだけの有権者が参加できないと県民投票の価値自体に関わる。

沖縄の基地問題その行方は?

法律によって県民投票への参加については市町村の裁量に任される。それに立脚した上での不参加判断であり、県民投票条例でも「投開票の事務は市町村が担う」と定められているため、「不参加」はその意味で正当な主張と言える。
ようやく県民投票の選択肢を一部で反発のあった「賛成」「反対」二者択一から、「どちらでもない」という新たな答を加えた三者択一で実施する方向で、全県での実施に向かい始めた。しかしそんな中、辺野古の埋め立て工事は日に日に進んでいる。
「国民投票」と同じく民主主義を具現化する手段の「県民投票」、賛成か反対かという答の以前に、意思表明の機会が失われる有権者が多数出かねなかった事態はやはり残念なことである。同時に今回の県民投票をめぐる沖縄県内の分断劇は、辺野古問題の深刻さをあらためて浮き彫りにもした。

国民投票を実施して国民の意思が示されたにもかかわらずその方向に歩めない国。
県民投票を実施しようとしても県民全員が参加できない可能性があった自治体。
2つのケースを目の当たりにして、「民主主義」を貫くことは本当にむずかしいものだと考え込んでしまう。それに向き合う私たち自身が真剣に考えなければ「民主主義」は守れない。

【東西南北論説風(83)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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