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鉄道の未成線が“バス専用道路”に!? 紀伊半島の難所を攻略した国道168号の歴史を紐解く旅

鉄道の未成線が“バス専用道路”に!? 紀伊半島の難所を攻略した国道168号の歴史を紐解く旅
CBCテレビ『道との遭遇』

ミキの昴生と亜生がMCを務める、全国の道に特化したバラエティ番組『道との遭遇』。今回は、バイクで日本を2周したこともある道マニア歴29年の松村真人さんが、奈良県にある未完成の道“未成道”から歴史を紐解きます。

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バス専用道路に転用 鉄道が一度も通ることがなかった未成線

CBCテレビ『道との遭遇』

松村さんと一緒に旅をするのは、一般の男性。2人は、大阪府・和歌山県と隣接する奈良県五條市を訪れます。

(道マニア・松村真人さん)
「ここは昔から交通の要衝。五條には国道168号が通っていて、大阪から奈良を通って、山々を貫いて和歌山の新宮まで向かう。険しく難所があるにも関わらず、整備や改良が繰り返されるのには理由がある。道にハマるきっかけであり原点でもあるこの場所を、ずっと紹介したかった」

CBCテレビ『道との遭遇』

難所ゆえに中止された整備計画の痕跡が今も残るという国道168号を巡り、歴史を紐解きます。まずは、国道168号を語る上で欠かせないものを見るため、国道24号へ。目的地へ行ってみると、鉄道用に造られたアーチ橋の遺構が現れます。

(道マニア・松村真人さん)
「国道が整備されてない時に、鉄道で五條から新宮に向かう期待された線路だった。国鉄の赤字などで計画は中止になり、一度も鉄道が走ることがないままの未成線」

昭和14年、人々や木材などを輸送するため、五条から和歌山県の新宮までを鉄道で結ぶ「五新線」の工事が着工されました。

しかし、急峻な山地を貫くトンネル工事の難航や莫大な建設費用により、昭和57年に計画は中止に。五新線は開通することなく、未成線となりました。かつては川の中に建てられた巨大な橋脚も、しばらくは遺構として残されていたそう。

さらに、「未成線の一部が、変わった使われ方をされていた」という場所へ行ってみると…

CBCテレビ『道との遭遇』

(道マニア・松村真人さん)
「開通するまでの暫定期間、国鉄バスがここを走っていた。一般車両がバス専用道路に間違って入らないようにする遮断機もあった」

かつては五新線の線路が敷かれるはずだった道は、鉄道開通までの間、バス専用道路として使われていました。

五新線の工事着工から20年後に、五条から城戸(じょうど)までの区間の路盤工事が完了。地元の人達からの強い要望で、鉄道が開通するまでの間、この区間をバス路線として活用することになりました。鉄道工事が中止になってからもバス専用道路として使われていましたが、平成26年に利用者減少によりバスの運行も廃止となりました。

(道マニア・松村真人さん)
「国道168号のバイパスとして、この路線を使ったバスがめちゃくちゃ便利だった。未完成の鉄道でこういう使い方をしているのはここだけ」

4つの鉄道トンネルが残る遊歩道

CBCテレビ『道との遭遇』

「バス専用道路の一部は遊歩道になっていて、鉄道ならではの遺構が残っている」と松村さん。2人は、バス専用道路の終点「城戸」へ。遊歩道には、バス停として使われていた風よけの囲いも残っており、バス専用道路の名残を感じます。

その先に現れたのは、鉄道の遺構。昭和54年竣工の「黒渕トンネル」や「衣笠トンネル」があり、鉄道トンネルの特徴である馬のひづめに似た形をしています。その先には、「大日川トンネル」「屋那瀬トンネル」もあり、城戸と賀名生(あのう)を結ぶ約4キロの遊歩道では、4つのトンネルを歩くことができます。

難所の峠を攻略した「天辻隧道」

CBCテレビ『道との遭遇』

最後に訪れたのは、城戸から10キロほど南下した場所にある交通の難所「天辻(てんつじ)峠」。「国道168号の歴史を語る上で最も重要」と松村さんは言います。

天辻峠を越えるため、昭和34年に「新天辻トンネル」が造られました。それ以前に使われていた旧道が近くにあり、大正11年竣工の「天辻隧道」が今も残っています。この隧道が造られたことにより、車で天辻峠を往来できるようになりました。

(道マニア・松村真人さん)
「今は現役の林道として使われている。日本にある現役のトンネルとしては、2番目に古いコンクリートトンネル。当時の最先端技術で造られた」

なぜそこまでして天辻峠を越える必要があったのか…?その理由を探るため南下すると、現れたのは五新線の「天辻トンネル」。鉄道が全線開通するまでの間、城戸まではバス専用道路として使用され、さらに大塔村(おおとうむら)阪本までの区間では工事が進められました。

そして昭和46年、長さ5キロの「天辻トンネル」が完成。トンネルの先に阪本駅を造る予定でしたが、未着手で鉄道計画自体が中止されました。

(道マニア・松村真人さん)
「道路も鉄道も“阪本を目指せ”だった。なぜなら、そこには川があり、昔は船で物を運んでいた」

CBCテレビ『道との遭遇』

かつて木材や鉱山などの資材は、紀伊半島沿いを船で運搬していました。しかし、紀伊半島の複雑な海流や地形に対応するのが難しく、事故が多発。この問題を解決するため、内陸部の川を通って阪本まで行き、陸路で天辻峠を越える方法が取られるように。これにより、安全に物資を運ぶことが可能になりました。

(道マニア・松村真人さん)
「林業の衰退、交通ルートの変化によって、船から鉄道や道路に変わり、道路が高規格化。輸送の方法が変われば、必要とされる要衝も移り変わっていく。道路を紐解くときに、道路だけ見ても分からないことがここには詰まっている」

CBCテレビ「道との遭遇」2025年2月18日(火)午後11時56分放送より

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