残り28試合、目先の勝利か将来か?井上ドラゴンズが直面する戦いの難しさ
ドラゴンズにとっての2026年(令和8年)ペナントレースも、残り28試合となった。4連敗の後に3連勝と、相変わらず乱高下が激しい戦いが続いている。(敬称略)
“個”の力で燕に3連勝

やはり戦力は揃っていた。本拠地バンテリンドームに戻って東京ヤクルトスワローズを3タテした、それは“個”の力だった。広島での嫌な3連敗をいきなり吹き飛ばした細川成也の先制3ランホームラン、さらに細川は翌日の試合でも起死回生の同点弾を放った。ミゲル・サノーも特大の1発を見せた。
投げては、高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)、カイル・マラー、そして柳裕也が先発の役目を果たし、抑えの松山晋也が力強く咆えた。今季のペナントレース開幕前に、多くの野球評論家が評価したように、ドラゴンズに個々の戦力は揃っていた。
5番・石川への代打に悶々

その一方で、ベンチ采配には依然として「なぜ?」が多い。最も象徴的だったのは、8月22日のスワローズとの2戦目、同点で迎えた7回裏の攻撃だろう。無死1、2塁のチャンスに打席に入ろうとした5番の石川昂弥に、井上一樹監督は「代打・石伊雄太」を告げた。思わず「え~!」と叫んでしまったが、当の石川本人の表情も完全に強張っていた。気合い十分だっただけに「まさか」だっただろう。送りバントという選択肢で、石伊が選ばれたことは分かるが、石川はクリーンアップの「5番」であり、今季ようやく覚醒した。来季以降も中軸を打ってもらいたい打者なのである。そして、送りバントは失敗した。
「なぜ?」が続くベンチ采配

この回には、阿部寿樹と福元悠真の代打順をめぐっても、一部の解説陣から疑問を呈せられた。それに続く投手交代のタイミングも人選も危うかった。細川の活躍で勝ったものの、それは“薄氷の勝利”だった。広島での戦いでも、同点の9回裏に申告敬遠によって、わざわざ1塁ランナーを得点圏に進め、最後はサヨナラ負けを喫した。
さらに、前の試合でホームランを打ったルーキーの花田旭が次の試合ではスタメンを外されてしまった。なぜ若い勢いを活かさないのか。それぞれゲームの流れの中でベンチが判断することなのだが、ファンの立場から見ても、今季はこうした首を傾げる采配が目立つ。
CS進出への可能性は?
クライマックスシリーズ(CS)進出へ可能性がある限り、勝ちにこだわることは当然のことだ。「下剋上」によっては、日本シリーズで優勝して日本一になることもある。しかし、冷静に見れば、まだまだ道は険しい。3位の横浜DeNAベイスターズと3.5ゲーム差というもののドラゴンズは5位であり、その上には、ベイスターズに加え4位のスワローズがいる。単純な「3.5ゲーム差」ではない。自力でのCS進出は依然として消滅している。
目標は「優勝」そして「常勝チーム」
もうひとつ冷静に考えたいのは、球団創設90周年のドラゴンズにとって、今季の目標は「Aクラス」ではなく「優勝」だったはずだ。シーズン終盤になって、CS出場に一喜一憂してはいるが、ドラゴンズにとって今季のペナントレースは、厳しい言い方をするならば失敗と評価せざるを得ない。であるならば、来季以降、そしてさらに将来へのチーム作りへ大切な残り試合を迎えている。竜党が望むのは、シーズン終盤になってギリギリのCS出場に躍起になるチームではなく、シーズンを通して常に優勝争いをする“常勝球団”なのだ。
球団フロントの差配は?

現場であるベンチは、なりふり構わず目の前の1勝をめざすだろう。5番の石川昂弥に代打を送ってでも勝ちに行く。しかし、来季以降のドラゴンズにとって、あの打席を石川にまかせることは重要だった。こうした差配は、球団フロントにしかできないだろう。勝ちにこだわりながらも、来季以降への戦力を見極め整える。ドラゴンズにとって、残り28試合はとても大切な戦いであり、一歩間違えれば、この低迷が来季以降も続くことになってしまう。
連覇へ走る阪神タイガース、そしてAクラスを死守したいベイスターズ。ここからの名古屋と横浜での6連戦、中日ドラゴンズは“球団一丸”となってどんな戦いを見せてくれるのか。夏の終わりのバンテリンドームスタンド席で、しっかりと見つめ、そして応援したいと思う。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。











