井上竜が4位浮上、オールスター明けの進撃に必要不可欠な“戦力”とは?

2025年(令和7年)ペナントレースも、試合数はすでに終盤に入っているが、オールスターゲームを節目とするならば、ここまでは前半戦。井上一樹新監督を迎えた中日ドラゴンズの前半戦を検証すると共に、後半戦を展望したい。大いなる期待を込めて。(敬称略)
井上竜「よくがんばっている」

ドラゴンズは現在88試合を戦って、40勝46敗2分の負け越し6である。1年前の立浪和義監督3年目シーズン、88試合を終えたところで38勝44敗6分と数字の上ではまったく同じ借金6なのだが、順位はひとつ上の4位となっている。おそらく多くのファンが感じていると思うのだが、全体として「よくがんばっている」という印象だろう。
「3番・セカンド」のレギュラーを期待して、背番号も「7」に変更した福永裕基の2度のケガによる離脱や、4番を期待した石川昂弥の不振など“誤算”を抱えながらも、ベンチのやり繰りが続いている。胸が熱くなるゲームも多い。(成績は7月21日現在)
連日のミス、まだまだ甘い野球
その一方で、まだまだ野球の甘さも垣間見られる。走塁ミス、守備のミス、そして何より、ここという場面で“もう1点”が取れない打線。喫緊で言えば、このコラムの見出しに「9連勝」という文字があってもおかしくなかった。7月19日からの横浜DeNAベイスターズとの3連戦、後半の2試合は、ドラゴンズファンにとって「切歯扼腕」という四字熟語がぴったりの悔しいゲームだった。勝っていた、いや、勝てていた。
監督インタビューで井上監督はミスをして涙した選手をかばったが、ベンチ裏ではきっちりと厳しく指導してほしい。本当に泣きたいのは、猛暑の3連休、本拠地ドームに汗をかきながら詰めかけた大勢の竜党であるからだ。
先発では松葉が安定の投球

前半戦、がんばった投打の選手を挙げるならば、まず先発投手では松葉貴大である。立浪前監督時代は「ドーム球場限定、5回まで」として先発起用されてきたが、今季は長いイニングをものともせず、ここまで7勝。開幕から先発ローテーションをきっちりと守ってきた。オールスターゲームにも監督選抜で選出されて、初めての“夢の球宴”を体験する。
抑え投手では、何と言っても松山晋也。右ひじのケガによって1軍を離れたが、ここまで28セーブを挙げた。松山離脱後に“勝ち切れない”試合が散見されることは、それだけ松山が背負ってきた勝利が重いということだ。慎重に、でも少しでも早い復帰を願いたい。
打って走って上林の活躍

打つ方では何と言っても上林誠知だろう。ほぼ全試合に近い86試合に出場し、打線を引っ張っている。ホームラン11本、さらに盗塁はリーグ2位の19個と、ドラゴンズにはあまりいなかった“パンチ力もあって走れる選手”である。この選手が自由契約になるほどに福岡ソフトバンクホークスの選手層の厚さを痛感せざるを得ないが、そんな上林をいち早く獲得したのは、立浪前政権の大きな成果だと言えよう。上林もオールスターゲームに出場する。ホームラン競争にも参加するというから楽しみだ。
まるで“多国籍軍”?
打線で気になることは、その顔ぶれである。7連勝によって、一時は11もあった借金を減らしてきたのは、ようやく得点を重ね始めた打線によるところも大きいのだが、次に紹介するのは、7月2日の横浜スタジアムでのスタメンである。
1番 ライト 上林誠知
2番 センター 岡林勇希
3番 サード 佐藤龍世
4番 レフト 細川成也
5番 ファースト ジェイソン・ボスラー
6番 ショート 山本泰寛
7番 セカンド 板山祐太郎
8番 キャッチャー 石伊雄太
この中で、ドラゴンズに入団してプロ野球選手として歩み出したのは、岡林と石伊の2人しかいない。石伊は1年目のルーキーであり、実質的な“生え抜き”は岡林のみとなる。
村松よ、石川よ、どうした?
井上監督は「どらポジ」をスローガンに掲げ、ポジティブなチーム作りを進めている。しかし、そのスローガンに続くもの、すなわち新監督がめざす野球、めざすチーム構成が、まだはっきりと見えてこない。7連勝したものの、後半戦を戦い抜く上で必要なのは、“生え抜き”の若手の台頭だろう。自前の選手をどれだけ作れるか。
上林だけではない。阪神タイガースを戦力外になって入団した31歳の山本は、ショートのスタメンから外せない活躍も見せている。村松開人、どうした?まもなく、新しい外国人選手マイケル・チェイビスが合流する。ファーストのジェイソン・ボスラーが好調なだけに、チェイビスはサードを守る可能性が高い。石川昂弥、どうする?“開幕4番”をまかされた24歳が出場するポジションも次第になくなりつつある。
前半戦終盤の快進撃は、日替わりオーダーから脱して、打線が落ち着き始めたことが大きい。岡林は先頭打者を続け、ルーキーの石伊も正捕手の座にひた走る。ここにあと1人でも2人でも、若い戦力が加わることこそ、夏以降のチームに勢いをつける。オールスターゲーム開催による小休止だが、そんな若竜たちに休んでいる時間はない。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。