投球スタイルを培った行動力 投手・土生翔太のプロ野球人生が開幕!
ルーキー投手で唯一の開幕1軍メンバーとなったドラフト5位土生翔太。彼を支えてきたルーティン、プロになって支えてくれている先輩。いずれも根っこには、彼の行動力が伴っていた。
開幕18試合目の4月19日にプロ初登板 土生翔太がデビュー
「早く投げたいですよね。この大歓声の中…」心躍らせながら語っていた彼は、ルーキーで唯一の開幕一軍登録メンバー入りした投手・土生翔太。
開幕して18試合目。1軍でのプロ初登板の機会が巡ってきた。4月19日、甲子園球場での阪神戦。1イニングを投げ、被安打2、与四球1の2失点、最速151キロの内容だった。
ほろ苦い結果をすぐにやり返したのは、翌日のこと。20日の阪神戦。3イニングを投げ、5奪三振無失点。
土生投手「やり返す気持ちでした。変化球を低めにまとめることができた。昨日の反省は生かせました」
ドラフト5位でドラゴンズに入団。横浜高在学時の3年間、夏の甲子園にチームは出場するも、自らはベンチ外。大学は桜美林大へ。プロ志望届を提出するも指名されなかった。
社会人チームからの誘いはあったが、1年でも早くプロ入りすることを志し、独立リーグへ。プロの世界に入り、春キャンプの2月中旬に1軍に合流。そこから1軍の舞台でプロの世界を肌で感じてきた。
オープン戦では7試合投げ、1勝0敗 防御率は2.57。オープン戦初登板こそ失点したものの、そこからは、6試合連続で無失点を記録した。
見て学び、試して学ぶ行動力
土生投手に話を聞いていて感じるのは、「成長するための行動力」があるということ。
『学ぶ』という行動力。
オープン戦で、彼は見て学び、試して学び、そして数字を残していった。
何を見たのか?それは、自分を取り囲む強力なリリーフ陣。
土生投手「試合後の映像や先輩の投球を間近で見て、ここに投げれば抑えられるんだ、というのを肌で感じました。リリーフ陣の皆さんはとても勉強になります」
何を試したのか?それは、藤嶋投手からの助言だった。
土生投手「藤嶋投手に変化球を投げる時の心構えを聞きました。その話を受けて、マウンド上で余裕を持てるようになったんです。その話を聞くまでは『プロの世界は甘く入ったら打たれるんだ』と、強く自分にプレッシャーをかけていて、窮屈になっている部分があった。それを改善できました」
1軍の舞台の経験、周りの投手陣の刺激。マウンドで色んなモノを取り入れ、吸収しながら大きくなっていくのが、伺えた。
行動したからこそ生まれたルーティン
土生投手は、プロに入ってからもマウンド上で変えずに続けていることがある。投球第1球を投げる前のルーティンだ。
ロージンを触りながらマウンド真下を見て、視界に他の誰も入らない世界をつくる。そして、深呼吸して、打者に1球目を投げ込む。
土生投手「これをやると、すごく気持ちが落ち着くんです。調子が良かろうが悪かろうが大学時代からやっていることです。仮に、ブルペンで納得いかない投球があっても、このルーティンでそんな悪いイメージもサッと払われる感覚なんです」
「大学時代から…」というのは、そもそも土生投手は「マウンドに上がると緊張するタイプ」だったようで、そこの向き合い方を模索していた。
そんな中、大学の授業でメンタルトレーナーの方の授業を受ける機会があった。授業を聞いていて「面白い」と思った土生投手は、授業後すぐに話を個別に聞きに行った。そして、トレーナーと連絡を取るようになった。
それ以降、メンタルトレーナーと1対1でビデオ通話をし、降板後の振り返りやマウンドでのメンタル作り。それらを試行錯誤しながら、登板前のルーティンはメンタルトレーナーとのやり取りの中で全部決めた。
アップからストレッチ、試合前の投球練習にもルーティンがある。そして、いくつかあるルーティンを締めるのが『独りだけの世界を作ること』。成長する為に行動したからこそ、今に繋がっている。
投げるときは、表情変えずに淡々と投げる。
土生投手「闘志むき出しで行くと、ダメになっちゃうんです。武器のスライダーと生命線のフォークで相手をねじ伏せたいです」
冷静に淡々と投げ込む。目標に掲げた登板数は30~40試合。彼の行動力で培ってきた投球スタイルが、より多くのドラゴンズファンに応援してもらえるように…。
土生翔太のプロ野球人生が、開幕した。
光山雄一朗(CBCテレビアナウンサー)