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「決死のヘッドスライディング」にドラゴンズ木下拓哉の娘さんが涙したわけ

「決死のヘッドスライディング」にドラゴンズ木下拓哉の娘さんが涙したわけ
「サンデードラゴンズ」より木下拓哉捕手(C)CBCテレビ

CBCラジオ「ドラ魂キング」に出演したドラゴンズの木下拓哉捕手(以降キノタク捕手)に、今シーズンを振り返ってもらった。

「ピッチャー陣の頑張りで、チームの防御率も被ホームラン数も、昨年より良くなりました。2年続けて最優秀バッテリー賞もいただきましたが、今年のあの“消化試合”の悔しさは忘れません」

2021年9月23日、バンテリンドームナゴヤでのタイガース戦。サヨナラ勝ちのチャンスで、マウンドにはタイガースの守護神スアレス投手。併殺打を阻もうと、一塁ヘッドスライディングを試みたもののゲームセット。優勝争いをするタイガースを相手に、自分たちは消化試合同様の現実。しかもホームでの試合すらものにできず。今季、最も落ち込んで帰路に向かったそうだ。

失意の中帰宅すると、なんと4歳の娘さんが大泣きしていたという。パパが野球で負けた悔しさは理解できる年頃だ。
ただ、そうではなく、一塁ベース直前でパパがこけちゃって「転んじゃって大丈夫なの?」と、泣き続けていたそうだ。
自分が滅多にしない必死のヘッドスライディングを、娘はそんな風に見て心配してくれたのかと、なぜだか心が救われたのだという。

「思わず僕も、『そこに石が落ちてたんだ。だからコケちゃったの。拾っとくね』」

と、優しく話しかけたそうだ。

家族の全力サポート

「ドラ魂キング」に出演する木下拓哉捕手(C)CBCラジオ

これまでにも、試合前に家を出る時、娘さんからどんぐりや手作り工作のプレゼントがあった。アンパンマンのキャラクター人形「あかちゃんまん」を受け取って、それを活力に試合で活躍するパパ。なんとチャーミングなサポート体制のキノタクファミリーか。

つい数日前にあったというこんなエピソードも教えてくれた。

「妻が『キャッチャーってどうやって構えるの』?と聞いてきて。僕が『そこはもっとこういうふうに!』と教え込むと、妻は実際に構えながら『そのポーズはきついね。足にぷるぷるくる』と言ったんですよ。一般のご家庭ではおススメできない会話ですね」

かたわらで、4歳の娘さんがおもちゃのグローブを手にはめると、その時のポーズはすでに捕手のスタイルになっていたという。実に微笑ましい家族ではないか。そんな家族の全力サポートで、冒頭の悔しさも今季の活躍へと繋げられたのであろう。

チームを支え続けた攻守の活躍

「サンデードラゴンズ」(C)CBCテレビ

攻守に渡りチームを支え続けた活躍についても振り返る。
試合序盤、ピッチャーの不安定な立ち上がり。思い返せばキノタク捕手は、敵の盗塁を何度刺して、救ったことか。最も警戒すべきタイガースの近本選手の盗塁を食い止め、ピンチを摘み取り、スリーアウトで、ベンチへさっと戻ってくる姿。
先発投手にとって、これほど頼もしいことがあるだろうか。
そんなプレーにもキノタク捕手は、謙遜して語る。

「野球はピッチャーあっての事ですから。あの場面はピッチャーのけん制から始まっていて、それが効いただけです」

ピッチャーとの共同作業といえば、昨年のシーズンオフに、こんなことを言っていたのを思い出す。

「いくら四球を減らせても、被本塁打が増えては、まったく意味がない。それを許す配球ではいけない」

その言葉を裏付けるように、昨シーズン120試合で被本塁打116本から、今シーズンは143試合で98本と、大きく減少。チーム防御率の向上と併せ、共同作業の証がしっかりと表れている。

もうひとつ、今季チームが最も好調だったと思われるセ・パ交流戦の前半。開幕カードは、4年連続日本一のホークス戦。ホーム開幕で2勝1分けと、最高のスタートをキノタク捕手は、「懐かしい」と振り返る。

「初戦は、柳が凄かっただけです。でもあれで、交流戦にチームが乗っていけました」

とは言うものの、ホークス戦の3戦目、キノタク捕手は自らのバットで同点スリーランホームラン。

「あれは、実は前の打席で、笠谷投手のボールに空振りの三振。次こそはとバットを短く持って打席へ向かおうとした時、中村武志コーチに言われたんです。『そんな小っさい事はするな。短く持っても当たらないものは当たらない。お前のフルスイングでいけ』と。あの時、あえて長く握り直して振り抜けたのはタケシさんのおかげです」

キノタク捕手の魅力

「サンデードラゴンズ」(C)CBCテレビ

そう!バッターキノタクの最大の魅力は、迷いのないフルスイング。ドンピシャのタイミングで振りいた打球の軌道は、実に美しい。
しかも痛快なのは、敵のエースの決め球、勝負球を狙って振り抜く姿。観ていてこれほど気持ちの良いものは無い。

2021年5月11日の甲子園もそうだ。相手はタイガースのエース西勇輝投手。四球直後の初球、シュートを見透かしたように左中間スタンドへ放り込んだ。

「確かに西勇輝投手のシュートは凄いです。ならばシュートを狙って、他が来たら仕方ないというくらいに絞っていきました。リードするキャッチャーならではの打者心理、ポジションならではの読み、とよく言われますが、僕は配球と打者としての読みは、別物だと思います。そんなにうまくはいきませんから。むしろ、その立場や場面ごとに、使い分けて考えることができたほうが、狙いやすくなりますね」

と、捕手目線で語った。
気持ちはすでに来シーズンへ。ドラゴンズ新時代への準備はもう始まっている。

「立浪監督の新体制になっても、勝ちたい気持ちは、これまでと変わりはありません。ただ秋キャンプ、強化選手に指名いただき、毎朝早出の組に入れていただいたこと、感謝しています。自分に期待をしてくださっている証として、それを受け止めて、頑張っていきたいです」

家族からの愛情を一身に受けつつ、捕手としての決断力が滲み出る守りと打撃。キノタク捕手が、大野雄、柳、あるいは新たなコンビで3年連続最優秀バッテリー賞を成し遂げた暁には、立浪竜の順位はファンが期待する場所へ「昇る」ことを信じて。燃えよ!ドラゴンズ!

【CBCアナウンサー 宮部和裕 CBCラジオ「ドラ魂キング」水曜、テレビ・ラジオのスポーツ実況担当。生粋の元少年ドラゴンズ会員。早大アナ研仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。「月刊ドラゴンズ」コラムも連載中】

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