「もっと守備力をつけたいです」ドラゴンズ好調投手陣を好リードする木下拓の“正捕手としての矜持”
【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日12時54分から東海エリアで生放送)
今年の交流戦はまさに昇竜戦!
全国のドラゴンズファンの皆さん、やっとかめだぁなも!3週間ぶりのコラムとなる今回。これほどウキウキしながら、キーボードをカタカタ叩けるのもいつ以来ぶりかなと。レギュラーシーズンの成績が今一つ芳しくなかったわれらのドラゴンズ。交流戦に突入した途端、走攻守にわたって、まさに水を得た魚のように生き生きとプレー!6月6日終了時点、DeNAと並びなんと12球団トップを走る首位であります!(なんという素敵な響きでしょう)
好調の要因はひとえに投手陣の頑張りにあり、失点35、そして防御率2.94は12球団ベストの数字。そしてホームランの威力は抜群!DeNAの21本には見劣りする11本ではあるものの、一発不足に泣いていた交流戦前とは雲泥の差!(数字はすべて6月6日終了時点)
今週のゲストコメンテーターの山田久志氏もドラゴンズの絶好調ぶりに“強い!”の一言。投打のバランスが取れ、ゲームの進め方が素晴らしいと、何も注文するものはないご様子。
残る2カードを勝ち越せば、初の交流戦優勝も見え、またレギュラーシーズン再開前に成績を5割に戻す大チャンスとなるだけに、ドラゴンズにとって今年の交流戦は、まさに昇竜戦ともいえる戦況!ロードゲームとなる来週の6連戦、気を引き締め直し、戦ってもらいたいものです!
さて今週のサンドラは、開幕から好調を持続し、交流戦においても投手陣を牽引し続けている木下拓哉捕手にスポットを当て、レジェンド解説陣5人からの鋭くエグい質問をぶつけた。
投手陣からの信頼度、日々上昇中!
先頭バッターに選んだのは捕手の大先輩でもある谷繁元信さん。
<質問>
谷繁『投手からの信頼度をMAX100とすると、自分ではどのくらいだと思いますか?』
<アンサー>
“むずいな~エグイな~”とブツブツ独り言をつぶやきながら考える木下。そして出た答えは!
木下『80!今年は開幕からほとんどの試合に出させてもらって、(投手が)サインに首を振る回数は徐々に減っているかな。まあ、減ることが良いことだとは思わないですけど、意思疎通はできていると思います』
そして最も聞きたい、好調を持続する先発投手陣の接し方について木下は述べた。
木下『慎之介にしても柳にしてもあまり今年は崩れていないので、悪くなった時に自分の一言でどう変えられるかというので、まだまだ100ではないなと』
なかなか自分自身に厳しい評価を下す木下。
“木下のリードのおかげ”という投手陣の言葉をよく聞くだけに80はあまりにも辛口採点!90はあげても良いのではないでしょうか。
“ストライクで勝負”こそ好調投手陣の証
二番目に選んだのはミスタードラゴンズ立浪和義さん。どんな質問が飛び出すのか!?
<質問>
立浪『今年の投手陣をどう見ていますか?』
<アンサー>
木下『頑張っているなって言うと、ちょっと上からなのでおかしいですけど、打たれるのを嫌がり過ぎてフォアボールを出して一発を喰らってツーラン、スリーランになるという大ケガがないのが、防御率の良さに繋がっていると思います』
これは与田監督が口酸っぱく投手陣に説いた“ストライクゾーンでの勝負”ができている証。ファンである私たちにとってもムダなフォアボールは一番精神衛生上よろしくありません。このままの状態をなんとかシーズン終了までキープして欲しいですね!
以心伝心の大野、神経を使うのは柳
質問も半ば、三人目に選んだのは昨年まで同僚で社会人時代の先輩でもある吉見一起さん。
<質問>
吉見『リードしやすい投手、神経を使う投手はそれぞれ誰ですか?』
さすがドラゴンズ投手陣のエースの看板を背負い続けてきた吉見さん、右打者の内角を鋭くエグる絶品シュート級の質問です!
<アンサー>
木下『リードしやすいのは、やっぱり大野さんですかね』
エースの名前を挙げ、フフフと笑う木下。
ん?忖度してます!?(笑)
木下『2人の中で今はこのボールが投げたいというか、このバッターはこういう風に勝負にいこうとか、このバッターはフォアボールでもいいと思っているだろうなとか、通じ合えているからリードしやすいですね』
あうんの呼吸の域に達していることでしょうか。
かつて山本昌さんがリードする中村武志さん(現一軍コーチ)がサインを出す前にグラブの中で投げるボールの握りをしていたという話を聞いたことがある。まさに18.44メートルの間を以心伝心していた二人。大野雄、そして木下もそんな関係に近づいているのではないだろうか。
木下『神経を使うのは、やっぱり柳ですかね』
おっと!今季絶好調の柳をご指名!どのあたりが神経を擦り減らすのでしょうか?
木下『去年まではいいコースに投げようとし過ぎて、ボールが多くなってしまうピッチャーだったので、あまり厳しいコースを狙い過ぎない。狙えば投げられるピッチャーなんですけど、やっぱりそこだけだときつくなるので。(キャッチャーミットを)構える場所とかテンポもそうですけど、そういう一つ一つに気は使わないですけど、神経は使いますね』
ピンポイントを狙わさず、アバウトに要求するゾーンを伝える。柳にとっては、木下のリードはなんとも投げていて心地のよいものに感じているはずだ。
準備と意識の大切さ
そして4人目は赤星憲広さん。
試合前に行う“心の準備”について質問をぶつけた。
<質問>
赤星『試合に臨むにあたり、一番意識していることは?バッターとしてキャッチャーとして両方教えて下さい』
まずはバッターとしての意識の持ちように答える木下。
木下『(チャンスで)打てなかったときに守備に悪影響がでないようにということを強く意識しています』
続いてキャッチャーとして意識していることに話は進む。
木下『あまり(試合前の)ミーティングの内容にとらわれすぎず、まず投げるピッチャーがどうやって抑えたいか。どういうボールが使えるというのは一番分かっているつもりなので。また相手バッターももちろん対策はしてくると思うので、できるだけ1打席目の1球目で察知できるように意識しています』
先手を読む、そして戦法を整える。
扇の要を守る番人として最低限ともいえる“準備そして意識”なのかもしれませんね。
とにかく守備力をつけたい!
最後の5人目は川上憲伸さん。
お得意のチャートで木下の頭を悩ませます!
<質問>
川上『僕は木下選手を上の図のように評価していますが、ここに+3できるとしたら、どこにどれだけプラスしたいですか?』
<アンサー>
木下『思ったより、ミートもパワーも走力もつけて頂いたので、全て守備力にいきたいですね。守備を9にします!』
捕手といえばまず守れなければ始まらない。
正捕手の座を守り続けるためには、さらなる守備力向上こそが木下自身、課題と捉えているのだろう。
木下『自分の守備を一番信じられることが、勝ちにつながると思いますし、もっと言えば僕がサインを出さないとピッチャーも投げられないので』
キャッチャーのサインからゲームは始まる。
相手打者を抑えたら、ピッチャーのおかげ。しかし打たれたら、キャッチャーである自分の責任とでも言わんばかりの責任感ある重い言葉に、
“正捕手は誰にも渡さない!”
という、木下の矜持を感じることができた。
リーグ屈指の盗塁阻止率.394(*1)を誇る強肩とインサイドワークで12球団一の投手陣を牽引しながら、バットでも交流戦打率.344(*2)と勝負強さを見せる木下。勝利にこだわる、その姿勢が選手たちの士気を上げ、チームを頂へと押し上げる!(*1、2ともに6月6日時点)
がんばれドラゴンズ!燃えよドラゴンズ!
竹内 茂喜