ドラゴンズ与田剛監督が語る、投手王国復活とリーグ最高打率の活かし方
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
今週のサンドラでは、各地で自主トレを行う選手の声や与田監督の構想を余すところなく特集。与田監督の中にある具体的なチームの輪郭が浮き上がる言葉もあり、キャンプまで1ヶ月を切って間も無くファンもそわそわする時期を迎えることになるんだなと感じる。新しい希望に胸を膨らませたり、辛い敗北に悔しい思いを募らせたり、ドラゴンズの傍らで一喜一憂できる夢のような時間がはじまっていく。そんな情緒を深めるためにも重要となる盛り沢山な情報を振り返っていく。
ベテランピッチャー山井大介投手の覚悟
今年もトレーニングに積極的に取り込む山井大介投手。生中継で与田監督とのやり取りの中でベテランとして、戦力として期待していると投げかけられると表情を引き締めて来季に向けての思いを述べた。
「自分の思っていた数字とかけ離れていた数字しか残っていなかったので、今年は倍以上やりたいという気持ちもあるし、闘争心出してしっかりと勝負していきたいと思っています。」
42歳の今シーズンにかける意気込みについてこう答えた。
「そんなに先のことを考えずに自分のできることをやって優勝したい。」
チームの為に全力で戦えるベテランがいることは心強い。ワールドウイング(鳥取)でのトレーニングもフォームや球種など新たな挑戦をしているそうで、衰え知らずなその気持ちを全力で発揮できるような舞台を若手も一丸となって作り上げて欲しい。
来季に向けテーマを掲げた自主トレ
大島洋平選手
昨年まではパワーアップ、今年はそれに加え、体の重心や軸の位置も意識し、バランスも改善。ベテランはしっかり自己分析をして更なる高みを目指す。
「自分の体が今どうなってるかを感じ取れるようになってきた。200安打、首位打者は目標にしている。盗塁王も可能性はあると思うので目標にしてやっていきたい。」
高橋周平選手
4年連続で大島選手とともにトレーニングに参加し、一年間戦える体をつくることをテーマに調整をする。
「毎年きついんですけど、調子悪い時にどうしても僕は左右にぶれてしまうので、野球の動きだけでは直らない部分がある。この自主トレではその(改善するための)引き出しが増えた。(NPBの)表彰式に呼ばれるような成績を残したい。」
加藤匠馬捕手
「(一緒に自主トレしている)大島さんは質問しても全部答えてくれるし、ついていって良かったと思っています。」
遠藤一星選手
「ずっと試合に出ているのはあの人(大島選手)だけなんで、全ての面で追っていきたい。」
梅津晃大投手
より力強いストレートと1年間投げられる体を鍛えるべく、パワーアップをテーマにトレーニング。
「体を太くするとかいう固定観念ではなく、重い負荷だけをあげるのではなくて、小さい動きからしっかりやっている。」
平田良介選手
股関節周りや下半身の強化。高い能力が発揮できるような強い体づくりに取り組む。
「大前提として全試合出場しないといけない。」
根尾昂選手
下半身から末端まで全体的に身体が弱いため、安定感に欠ける部分があった。
「もちろん全部欲しいがバッティングは特に。お尻周りや体幹、まだまだ末端も細いので、そこは負荷をかけて重りをあげるようにトレーニングしている。」
京田陽太選手
守備の向上のため股関節周りの強化に取り組み、安定した守備力を見せた昨年以上に積み重ねをはかる。そのための新たな取り組みについてこう意気込む。
「今までは技術ばかり追い求めてきたが、体の方から変えていかないとプレーも変わらない。」
阿部寿樹選手
昨年セカンドでスタメン定着し、キャリアハイの成績をおさめた。強く振ることをテーマに掲げその課題についてはこう語る。
「調子が悪くなると当てにいってしまうので、それをなくしたい。どんな場面でも、自分の良さというか、強く振るということを意識してやっていきたい。」
笠原祥太郎投手
昨シーズンは開幕投手を務めるも、不整脈の治療があり実力を考えると、不本意な3勝にとどまった笠原投手。来季の返り咲きに向けて強化のポイントを語る。
「ウエイトは全体的に強化。体幹もあるが。それをこなして、どんどんストレートの質を上げていきたい。」
福田永将選手
下半身を使った体重移動がうまくできず、昨シーズンは夏場に二軍落ちを経験した。痛感した弱点克服のために、自主トレでその対策に励む。
「一年間安定してしっかり自分のパフォーマンスが出せるように。今年は原点にかえって、しっかり走り込んで、まずは下半身から鍛えてキャンプに入りたい。」
石川昂弥選手
「与田監督初日から見にきてくれたので、しっかりとアピールしたい。春季キャンプは一軍でやれたらいいなと思っています。」
動きを見ながら、17日のスタッフ会議で決めて行く予定。自主トレでの様子と来期の抱負を語る選手の映像を見て、与田監督は「僕にとって子どもみたいなものですから、一緒に笑顔で喜べるようなシーズンに。」と顔を綻ばす。
根尾、石川昂の起用法は?ホームランテラスの構想も?
チーム打率を1位としながらも得点はリーグ5位だった昨シーズン。
正捕手固定に求める条件について、与田監督は語る。
「ゲームを諦めない姿勢ですよね。どうしても点差が離れてしまうと淡白になるんですが、最後までしっかり守り切るという(気持ちを持って)、翌日もゲームはありますので。そういう強い意思を持って欲しい。もちろん技術的に盗塁を刺す肩であったり、バッティングも当然ですが、立ち居振る舞いはみんなが見てますから、守っている野手で含めて。表に出す仕草が大事ですね。」
郡司裕也捕手に対しても、ドラフト後の活躍を評価。プレッシャーの中で闘えるメンタルの強さを期待されている。昨年大躍進を遂げた加藤捕手はじめ、大野奨太捕手、木下拓也捕手、桂依央利捕手もそれぞれの長所を生かして行けば、正捕手の座を奪えるポテンシャルはある。石橋康太捕手も経験値さえ積み上げれば、ここに一気に突き上げも図れるだろう。
アルモンテ、シエラ選手のレフト争いについて、与田監督は「昨年ドミニカで会って、非常に元気になっていましたので大きな問題はない」とのこと。シエラ選手についてはすぐに支配下にできるくらい能力は高いと太鼓判。使い所に悩ませるくらいの両選手の活躍が見たい。
根尾昂選手の起用方法についてはこう話す。
「打力次第ですね。根尾は打力が魅力の選手だと思っていますので、もちろん全ての面で長けた
選手ではありますけども。しっかり一軍で打席に立てるようなキャンプを過ごして欲しい。」
外野での起用についての明言は避けたが、おそらくその前提で守備要員としてあげることはないとのことだった。
石川昂選手のポジションについては、本人希望のサードをまず守らせることを明言した。
「周平がキャプテンで、去年も本当に頑張りましたけども、まだまだ高い所を目指さないといけない。周平を脅かす存在を作らなきゃダメなんですよね。そういう意味で石川の存在というのはチームに与える影響は大きい。」
この辺りは根尾選手と同じく初年度はコーチ指導の元、希望ポジションでどれだけ成長できるかと能力の見極めをしつつ、レギュラーのサードを狙う確実な脅威に育てていくといったところか。
打率はリーグ1位と野手陣も個々の能力は確実にアップしているが、得点力不足や接戦に弱い部分が、昨シーズンは見られた。それを繋げる一つの方法が、長打力でありホームランである。そこでまことしやかに囁かれているホームランテラスについて、与田監督は実現を匂わせる口ぶりでこう語る。
「今、そういう話が出ていますね。当然、ピッチャーは大反対だろうと思う。去年もフェンスに当たって、あと少しという打球が沢山あった。ホームラン数が増えれば、一振りで流れが変わりますからね。それは楽しみにしています。」
ファンの間でも是非について議論されているテーマだが、実現するなら長期的にチームの方針を見据えていくことは不可欠であろう。次世代のチームづくりまで考えれば、二軍本拠地のナゴヤ球場にも同様の施策がなされるべきだとも思う。ともあれ一つの理想を見据えて戦っていくことがカギとなりそうな今シーズン。新しい挑戦も起爆剤として、必要となるだろう。
投手王国復権へ向けて競争激化の投手陣
チーム防御率は2018年のセ・リーグ6位から3位に引き上げた。昨シーズン開幕前には、投手だけで別メニュー調整組は10人もいる状況から、この上昇は大きかった。そこも踏まえた今年の構想はどう描かれるのだろうか。
まずはストッパーについて。
「もし、開幕に間に合わなければ、そこを入れ替えはしたくない。マルティネスは最初から外しておこうかと思っている。いない選手を想定しても仕方がないので。充分岡田も去年頑張りましたから。」
五輪予選のため合流時期が定まらないことからマルティネスは外して、昨年の実績を評価し、岡田俊哉投手をストッパーとして置く可能性が高そうだ。
そして先発について。
大野雄大投手、柳裕也投手以外で3人は規定投球回以上を投げられる投手が出てきて欲しい。
具体的に名前が挙がったのは、小笠原投手、梅津投手、ベテラン山井投手、吉見投手。この他にも、昨シーズン開幕投手を任された笠原投手もおり、勝負は年間を通して戦えるかというところである。また、先発起用人数は17人とリーグ最多で、50イニング以上投げた先発4人とリーグ最少だった。イニングに関しては、故障上がりの選手が多かったので、与田監督の判断で早めに変えさせることが多かった。長いシーズンを通しての起用方法についてはこう語った。
「再度怪我をしては、シーズン全く投げられなくなる。下手をすれば選手生命を揺るがす致命傷に至ってしまう。」
運用についても合理的で、もちろん選手が力を十分に発揮できる土台としても、申し分ない環境だ。昨シーズン開幕前に怪我に悩まされた選手たちの雪辱を晴らす準備は整いつつある。
昨年の秋季キャンプには『体操』という言葉を掲げて、体をコントロールすることに意識を持つ練習を実践した。春季キャンプでは、これに心を加えた『心体操』という言葉を掲げて取り組んでいくという。与田監督らしい穏やかな言葉で、細やかに強いドラゴンズを春に見られるのが待ち遠しい。
(澤村桃)