【日めくりドラゴンズ】「出塁すれば点が入る」元中日の幸運を呼ぶ男?ディオニス・セサルの思い出
2010年2月7日。春季キャンプが始まって1週間。新外国人のディオニス・セサルは、ノックでセカンドの守備に就き軽快な動きを見せた。
前年は、メキシカンリーグで打率3割8分、40盗塁を記録し、内外野どこでも守れるユーティリティープレーヤーという触れ込みで入団した。
落合監督はこの年、前年まで6年連続でゴールデングラブ賞を獲得していた荒木雅博・井端弘和のアライバコンビの入れ替えを宣言。外野手登録のセサルではあったが、二遊間のバックアップ要員としても期待された。
ユーティリティープレーヤーとして
当初はセンターで起用される予定だったが、オープン戦終盤にショートの荒木が左足を故障。急遽、井端がショート、セサルがセカンドへ配置転換され、早くもそのユーティリティーさを発揮する格好となった。
開幕戦は二番・セカンドで出場。開幕二戦目に来日初ヒットを放つと、開幕三戦目は「セサル劇場」だった。
同点の5回。1死満塁のピンチで、広島・天谷宗一郎の打球はセカンド・セサルの元へ。ダブルプレーでピンチ脱出かと思いきや、痛恨のエラー。勝ち越しを許した。
1点ビハインドの9回にも、ベースカバーに入る際にショートの井端とお見合いして送球を逸らすというプレーが。
それでも、汚名返上のチャンスが回ってきた。
同点で迎えた延長10回、1死二塁で打席にセサル。永川勝浩の投じた初球を捉えると、打球はレフトの頭上を越えるサヨナラヒットに。あわや戦犯になるところが一転、ヒーローとして来日初のお立ち台に上がることになった。
しかし、その後もセカンドの守備ではまずいプレーを連発。開幕5試合で3つの失策を犯してセカンド失格の烙印を押され、以降は外野での出場となった。その外野守備も、左中間への飛球を落球しフェンスに激突したり、フライを捕球できず後逸したりと、見ているファンをハラハラさせた。
幸運を呼ぶ男?
「セサルが出塁すると、ホームに還ってくる」
というジンクスがあった。開幕当初、セサルが塁上にいると、とかく生還するケースが多かったのだ。
改めて調べてみると、セサルは開幕3カード(9試合)を終えた時点で、7得点を記録していた。この数字自体は飛び抜けて多いわけではなく、チームメイトの和田一浩は7、森野将彦にいたっては10の得点を記録していた。
特筆すべきは、”生還率”とも言えるだろうか、出塁した数における得点の割合である。前述の二人とは出塁している回数が大きく違うのだ。
開幕3カードで、和田は14安打、11四球。森野は16安打、6四球。
一方のセサルは、9安打で四球はなし。安打のうち1本はサヨナラ打である。
二人と比べて出塁が半分以下にもかかわらず、同じくらいの得点を記録。
セサルが出塁すれば得点が入る、あながち間違いではなかった。
一瞬の輝き
一瞬、輝いた。5月30日のソフトバンク戦で来日初の猛打賞を記録すると、6月1日のオリックス戦では1安打1四球、翌2日は4打数4安打。3試合で11打数8安打の固め打ちを見せた。
ナゴヤドームに戻った4日のロッテ戦でも第一打席で二塁打を放ち、1日の第3打席から8打席連続出塁を記録。いよいよ本領発揮かとファンを期待させた。
ところが、この試合の8回、打球を追ってライトフェンスに激突。右肩を痛めて負傷交代し、登録を抹消された。
その後、戦列に復帰するも思うような活躍はできず、10月3日、チームがリーグ優勝を果たした2日後に戦力外通告を受けた。
中日での成績は2割1分5厘、1本塁打、10打点。期待に応えることはできなかったが、陽気なキャラクターと好プレーに珍プレー。様々な意味で、ファンの記憶には残っている。
【CBCアナウンサー 榊原悠介
中日ドラゴンズ検定1級。日付からドラゴンズの過去の試合を割り出せる特技を持つ】