強竜復活への厳しき道~ドラゴンズキャンプ2020クリアすべき課題と注目選手

強竜復活への厳しき道~ドラゴンズキャンプ2020クリアすべき課題と注目選手

プロ野球12球団の春季キャンプがスタート、待ちに待った球春到来である。
2020年は東京五輪・パラリンピック開催のため、プロ野球も開幕が例年より10日ほど早く3月20日である。各球団はいつもより急ピッチで調整を進めることになる。

補強なきままシーズン突入へ

CBCテレビ:画像『チャント!』

中日ドラゴンズは2020年も、1軍は沖縄県北谷町、2軍は読谷村でそれぞれキャンプを行う。球団創設84年を迎えたシーズン、ここまで球団史ワーストの7年連続Bクラスと長き低迷が続くだけに、2年目を迎えた与田体制も並々ならぬ決意でキャンプに臨むことになる。
オフに目立った即戦力選手の補強がなかったドラゴンズ。現有戦力の底上げで戦うと言っても、かつて2004年の落合博満監督の初年度は、そもそも前年2位という基盤があっての優勝だった。5位という現状からの逆襲は、相当な覚悟が必要であろうと気が気でならない。

勝ち切れなかった2019年シーズン

CBCテレビ:画像『チャント!』

課題を挙げる前に昨季2019年シーズンを振り返ってみる。
「よく打ち、よく守った」と言える。チーム打率は2割6分3厘と堂々のリーグ1位。チーム守備率は.992とこちらもリーグ1位。この守備率については、落合政権1年目で優勝した年の.991を抜き、リーグ新記録を自ら更新したのだから立派なものだ。
その前のシーズンはリーグ最下位だったチーム防御率も3.72で3位浮上、投手陣も奮闘した。しかし、それでも結果的に5位だったのはなぜか?
象徴的なのは、1点差での負けが27試合あったことだろう。リーグ最多である。すなわち「あと一歩」という試合を落としている。かつての「強かった時代」という言葉でファンそれぞれが思い出すドラゴンズの姿は、逆転勝ちが多く、そして僅差のゲームを勝ち抜いてきたのではないだろうか。

重要課題を3つ挙げてみると・・・

CBCテレビ:画像『チャント!』

現状で考える2020年シーズンの課題を3つ挙げる。
1つ目は「絶対的な抑え投手」である。かつての近藤貞雄さんや権藤博さんら投手部門の指導者がいち早く「投手分業制」をチームに採り入れた。しかし、全盛期の岩瀬仁紀さん以降、ドラゴンズに“守護神”という顔はいない。1点差の試合をものにするためにも、この存在の確立は欠かせない。
2つ目は「正捕手」である。こちらも谷繁元信さん引退後、長きにわたって“空席”のままである。日本プロ野球界を代表する名捕手だった伊東勤ヘッドコーチにしても、2019年「正捕手」を作ることはできなかった。それだけ捕手の育成はむずかしいということなのだが、最低100試合は先発マスクをかぶることができる捕手の存在は、チームの戦いに安定をもたらす意味でも重要だ。
3つ目は当コラムでも毎年のように言っているのだが、「チームを浮上させる起爆剤」すなわち“新戦力”である。長きにわたるBクラス、前年5位のチームが上昇するには、それまでのチームの空気を一変させる選手が必要である。現有戦力で戦って2年連続5位なのである。“革命児”のような若竜の登場が、ドラゴンズを一気に天に昇らせることができるのだ。
この3つの課題は、同時にそのまま春季キャンプのテーマでもある。

小笠原、根尾そして石川昂

CBCテレビ:画像『チャント!』

春季キャンプで注目したい選手のキーワードとして「甲子園の優勝投手」を挙げたい。
まず2015年夏の大会、東海大相模高校の胴上げ投手、小笠原慎之介投手である。
早いもので5年目、同い年の大学進学組がプロに入団した。けがにも泣いたが、それも治り、勝負のシーズンである。2018年にように開幕投手をつとめるほどの気概を見せてほしい。
2017年と2018年それぞれ春、2年連続で大阪桐蔭高校の優勝投手だったのは根尾昂選手である。2018年は夏の甲子園でも大活躍した。高校球界のスーパースターだった。小笠原投手と同じように、1年目の2019年はけがなどで1軍での活躍はかなわなかったが、2軍でチームただひとり100試合を超える試合出場、444打席を経験したことは大きな財産になるだろう。
そして2019年春の東邦高校の胴上げ投手は、ドラフト1位ルーキー石川昂弥選手である。キャンプは2軍スタートとなるが、1軍の舞台に早く立つことを期待したい。
この他に2017年夏の大会、リリーフで花咲徳栄高校の胴上げ投手だった清水達也投手もいる。大舞台で自らの手によって「日本一」を勝ち取った経験のある若き選手たち、「勝ち方」を知っているそんな若竜に注目したい春である。

松坂は去ったが竜星は輝く

CBCテレビ:画像『チャント!』

ここ2年間、ドラゴンズの春季キャンプは、スーパースター松坂大輔投手の存在が注目を集めた。その松坂投手はチームを去った。しかし、ファンの立場として、この目で見たいと思う選手の数がここ数年で最も多い2020年キャンプである。
小笠原、根尾、石川昂らに加え、大野雄大、柳裕也、梅津晃大、藤嶋健人、京田陽太、高橋周平、阿部寿樹、大島洋平、平田良介、そしてダヤン・ビシエドといった選手の名前が次々と思い浮かぶ。
すべての選手に、グラウンドでも宿舎でも昼夜を問わない徹底的な練習に期待すると共に、先発ローテーションやスタメン野手に名を連ねてくる新戦力の“下克上”を待ちたい。
繰り返し言う。前年レギュラー選手のレベルアップだけで5位チームが一気に頂点に立てるほど、ペナントレースは甘くない。

沖縄本島では毎年、プロ野球キャンプの頃、寒緋桜(カンヒザクラ)が満開を迎え、北部の“やんばる”各地などでは桜まつりが開催される。北谷そして読谷、ドラゴンズのキャンプ地でも“竜桜”が元気にそして華やかに咲きますように。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】 

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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