「受験生見捨てないで!」翻弄の高3怒りの訴え…入試改革、コロナ、9月入学議論!白熱“リモート座談会”
【急浮上した「9月入学」に高3のホンネは?】
東海3県の高校3年生に本音を聞くリモート座談会。今回は「9月入学」について、お話を伺います。
今の高3はセンター試験にかわる『大学入学共通テスト』を初めて受ける学年。しかし、新型コロナの前から、その改革の2本柱「英語民間試験の導入」と「国語数学の記述式導入」が相次いで見送りに。
ただでさえ不安な中、募る不信感…。高校3年生は、またしても頭ごしで繰り広げられた9月入学議論について、どう考えているのでしょうか?
リモート座談会に集まってくれたのは、愛知県立津島高校の陸上部・こゆきさんと、ハンドボール部・しょうくん、岐阜県立岐阜商業高校・国際コミュニケーション科のさきさん、岐阜女子高校・バスケ部のゆずはさん、名古屋国際高校・茶道部のななかさん、そして三重県立四日市中央工業高校・サッカー部のゆうまくんの6人。
教育社会学者で名古屋大学大学院の内田良准教授とともに、伺っていきます。
【6人中2人が「9月入学」に賛成…その理由は?】
まず6人に9月入学への賛否を聞いてみると、賛成2人、反対4人。賛成だという、バスケットボール全国屈指の名門校・岐阜女子高校で活躍するゆずはさん。その理由は…?
岐阜女子・ゆずはさん:
「高校総体がなくなってしまって、大学の先生がプレーを見られず、大学を決めることもできないし…。自分の気持ち的には9月入学にしてくれたら嬉しいです」
内田准教授:
「学校で延期になったり中止になったりした行事や活動があれば教えて下さい」
岐阜女子・ゆずはさん:
「修学旅行も2年生の終わりに行くつもりだったのが行けなくなってしまって。すごく楽しみだったので行きたかったです」
そしてサッカーの名門校に通う四中工のゆうまくんも賛成。思いは同じです。
四中工・ゆうまくん:
「学校の行事でもスポーツの大会でもできてないことがたくさんあるので、9月入学になったら、それができる可能性もあると思うんです。ちゃんと高校3年生を送りたいです」
【反対した4人の理由は?】
一方、反対した4人は全員が受験で大学進学を目指しています。まずは津島高校ハンドボール部のしょうくん。反対の理由は…。
津島・しょうくん:
「(これまでも)検討してやめて、検討してやめて。ここで急に9月入学って出てきて。じゃあ9月までの今の休み期間はどうするんですかと思います」
今の高校3年生は、『大学入学共通テスト』を初めて受ける学年ですが、その試験内容を巡って、結論は二転三転。新型コロナの前から翻弄されていたのです。
同じ高校の陸上部、こゆきさんからは、こんな悲痛な叫びが…。
津島・こゆきさん:
「テストに向けて必死に勉強しているのに、また9月入学で勉強もイチからってなったら、せっかく休校期間に家でやってることが無駄になる気がします」
内田准教授:
「9月入学のメリットとしては、留学の行き来がしやすくなることがあります。また、真冬のインフルエンザが流行る時期、雪が降るかもしれない真冬の入試は非常に負担になります。それが、そうではない時期にできるのではないかということもあるわけです」
一方の懸案としては、入試など様々な行事を変更する必要性や、会計年度とのズレなどが挙げられます。
【「9月入学」は海外留学にも影響?】
日本から海外へ留学する学生の数は年々増加。9月入学でさらに増えることが期待されています。しかし、留学を目指している当の本人、県岐商のさきさんと、名古屋国際のななかさんは9月入学に反対。一体、なぜなんでしょうか?
県岐商・さきさん:
「(外国の)大学によっては、入学する前に現地の語学学校に通わなければいけない条件があって、これまで通りなら入学時期に差があるので受験勉強や準備期間に充てられます」
そして、名古屋国際高校のななかさんからは、同じ反対でも次のような意見が…。
名古屋国際・ななかさん:
「留学ができている人って日本でもほんの一握りで、できない人の原因は9月入学ではなくて、他にもっとあると思うので、9月入学によって留学する人が増えるという考えはちょっと違うんじゃないかなと思っています。あと、4月に入学するという日本の文化感が消えてしまうことも、重大な問題だと思います」
内田准教授:
「留学が今少ない原因は、恐らく英語教育をもっと進めなきゃいけないだとか、留学時の費用で政府の負担が必要だということもあると思います。留学のために9月入学を…というのは、あまり積極的な理由ではないなと僕自身も思っています」
さらに津島高校のこゆきさんからは、こんな意見も…。
津島・こゆきさん:
「9月入学にしたからといって、冬にコロナがまた流行るかもしれないと言われているのに、もしそうなったら9月入学の方が危ないんじゃないかと思います」
【刻一刻と変わる見通しに不安を隠せない…】
9月入学を巡っては、文部科学省が具体的な移行案を示すなど、導入に向けて議論が進みました。しかし5月26日になって、自民党のワーキングチームが直近の導入は見直すべきという骨子をまとめ、今は政府内にも慎重論が急速に広がっています。
進路選択が目の前にある高校3年生。刻一刻と変わっていく見通しに不安は隠せません。
県岐商・さきさん:
「自分の学校は推薦とかAO入試で大学に行く人が多いのですが、6月に行われる予定だった簿記の検定が中止になってしまい、11月にある次の検定だと出願に間に合わない人もいるんじゃないかと思います」
また、サッカーの名門校に通うゆうまくんの周りでは…。
四中工・ゆうまくん:
「サッカー部でも、インターハイでアピールしてスカウトの目にとまろうという人がいっぱいいるんですけど、大会が無くなってしまったらどこでアピールすればいいのかって…」
部活動の大会、そして資格や検定試験の相次ぐ中止や延期…。文部科学省は、AO入試や推薦入試に影響しないよう大学への配慮を求めました。
内田准教授:
「部活動などについて大会が無くなった場合に配慮をするように、あるいはAO入試などで志願者が不利にならないように、と国が大学側に言っています。これまでの実績や、これから何をしたいかをしっかり見ていこうと、国は考えている状況です」
【「受験生を見捨てないで!」当事者の訴え】
しかし、当事者抜きでの議論に尽きない不安。ここで、今の大人たちや政府に対して、1人の生徒が大きな声で訴えました。
名古屋国際・ななかさん:
「受験生を見捨てないで下さい!大学生に関しては給付金などの対応をしているのに、受験生だけ、なんか薄くないですか?」
内田准教授:
「今の高校生たちの、この思い切りのよい意見を、みんなで考えていかなければいけない。大人としての責務を強く感じました」
ただでさえ翻弄され続けた上に、新型コロナウイルスによって、さらに不遇な状況に置かれてしまっている今の高校3年生たち。「私たちはあのコロナの時を乗り切ったんだ」と、それぞれがのちに“プラスの経験”として話せるようになることを、願ってやみません。