建設残土の闇 狙われる空き地
建設工事などで出る土、「建設残土」。
大きな船などで首都圏から地方に運ばれて捨てられるケースが増えています。
取材を進めると東海地方のあちこちの空き地に建設残土の山ができ、トラブルになっていることが明らかに。
空き地が狙われる実態を取材しました。
愛知県弥富市の農地の中にできた、高さ10mの土の山。
土地所有者の大野さん(仮名):
「金魚池の跡地に道路より30センチ下まで土をいれて、水田にさせてもらってもいいですかって話だった。リニアの残土を入れますって」
大野さん(仮名)の土地は元々、地場産業の金魚を養殖する池の跡地でした。
おととし5月、不動産業者だという男性が訪ねてきて、「リニア新幹線の工事で出る残土を運び入れたい」と頼んできたといいます。
30センチ程度の高さまで土を運び入れる約束で残土の受け入れを決めた大野さん。
ところが、あっという間に10メートルもの山になったのです。
土地所有者の大野さん(仮名):
「早く出してって言っても、話を一切聞いてくれなかった。うそばっかりでとても、信じられない。人間不信になってしまっている」
業者には再三、工事の中止と土の撤去を求めましたが、2年以上たった今も、土の山は手つかずで放置されていて大野さんは土の撤去を求める裁判を起こしました。
そしてこのトラブルのさなか新たに市役所建設で出た残土も、運び込まれていたことが判明しました。
土地所有者大野さん(仮名):
「残土でさんざんもめているのに、ありえないでしょって、市役所に言ってもそれっきり」
公共工事で発生する建設残土について、国は各自治体に事前に処分先を決めるよう求めていますが、弥富市は処分地を指定しない「自由処分」で大手ゼネコンに工事を発注していて、処分は元受け業者のゼネコンの責任で行う契約だと言います。
一方、大手ゼネコンは取材に対し、残土を搬入した業者とは直接的な契約関係はなく、対応できる立場にはないと答えました。
残土の処分を請け負った三重県の残土ブローカーに話を聞くと。
残土ブローカー:
Qどうして10mの山に?
ーついつい、土が多くなってしまった。予定がオーバーしてしまった。
ー申し訳ないので、きちんと撤去します。
さらにこのブローカーは、弥富市だけでなく、三重県桑名市や岐阜県海津市など、少なくとも6カ所で同じような残土の山を作り、住民とトラブルを起こしていました。
今回と同じような、建設残土を巡るトラブルは以前にも起きていました。
愛知県瀬戸市の住宅街で、使われていない土地に大量の建設残土が運び込まれトラブルに。
この時もリニアの建設残土というウソの説明がされていました。
業者も行政も放置する中、結局地主が400万円の費用をかけて自己負担で残土を撤去することに。
一方、三重県南部では関東や関西から船で運ばれた大量の残土が、地元の山に積み上げられトラブルに。
京都や大阪では、土砂崩れなどの災害もおきています。
トラブルが相次ぐワケは、建設残土の量があまりに多いことと、それを管理する法律が存在しないため。
国内で年間に発生する建設残土は1億4000万立方メートルとナゴヤドーム80個分。その6割は行き場がなく住宅地や山に捨てられているという現状があります。
全国各地の自治体では残土の処分を規制する独自の条例を作って管理にのりだしていますが、愛知県にはまだその動きはありません。
愛知県 大村知事:
「三重県のように首都圏などから大量の土砂が搬入されている問題はない状況。条例をすぐに作るということではなく、引き続き状況の把握に努めて適切に対応していきたい」
弥富市などでトラブルを起こしている三重県の残土ブローカーに再び話を聞くと、残土処分の現状を明かしました。
残土ブローカー:
「はやく撤去したいが、残土を捨てるところが少ない。残土専門でやっている処分場は値段が高い。受け皿がないから困っている。工事をすれば土は出る。法律を決めないと業者も困る」
相次ぐ残土トラブルに国土交通省は。
国土交通省:
「Q残土が問題になっている認識は?
─もちろんそうですね
Q残土の法律があったほうがいいという考えは?
─ちょっとコメントは差し控えさせていただく」
開発に伴って必ず生まれる“負の産物”、建設残土。
国が管理に乗り出さない中、大量の土が行き場を求めてさまよう状況が続きます。