洗剤成分が実は効く?“殺虫剤を使わない”新たな「蚊」対策 蚊が肌にとまれない画期的なクリームや新製品のスプレーも
夏は「蚊」が煩わしい季節。専門家によると、ここ数年の激しい気候変動で、蚊の発生時期が早まっているとのこと。病気の媒介を防ぐためにも刺されないようにすることが大事ですが、殺虫剤が効かない蚊がどんどん増えているそうです。蚊よけ対策には殺虫剤以外にも、いろいろな技術が開発され、中には「蚊が皮膚にとまれなくする」研究も。蚊の対策最前線を取材しました。
世界ではデング熱の感染者が2023年に過去最多 海外では緊急事態宣言も
蚊は、刺されるとかゆいだけでなく、さまざまな病気を媒介し、命を奪う事もある恐ろしい存在です。
日本では2014年、蚊が媒介して高熱や湿疹などを引き起こす「デング熱」の国内感染が69年ぶりに報告され、その後死者も出ています。世界では、デング熱の2023年の感染者が過去最多の760万人を超え、ブラジルでは緊急事態宣言も出されました。
蚊は、少しの水たまりがあれば爆発的に繁殖し、完全な駆除は難しいため、感染を防ぐには刺されないようにするしかありません。
蚊が皮膚にとまれなくなる!画期的な新開発クリーム
こうした中、“蚊が皮膚にとまらなくなる”という画期的な蚊よけの対策が登場しています。開発したのは、化粧品や洗剤で知られる大手日用品メーカー「花王」です。
(花王 研究開発部門・飯田稔明さん)
「既存の合成化学成分ではなく、蚊が肌にとまれなくなる新しい技術で、身を守ります」
今回、特別に開発現場にカメラが入りました。研究に使われていたのは「ヤブ蚊」とも呼ばれる白いラインが特徴のヒトスジシマカ。デング熱やジカ熱を媒介する厄介者です。卵から育てられたヒトスジシマカは、氷で冷やして動けなくした上で、血を吸う針の先端を切除。太さわずか0.1ミリにも満たない針の先端を顕微鏡で確認しながら、一つ一つ切り落とすそうです。
人間の皮膚のレプリカを用意し、二酸化炭素を放出させると、蚊が近寄ってきます。ハイスピードカメラを使って観察すると、足先の爪で体を固定し、羽ばたきを停止。そして後ろ足を高く上げます。この体勢をとることで血を吸います。
皮膚のレプリカに、新開発の蚊よけクリームを薄く塗って実験。すると、蚊はとまろうとしますが、すぐに飛び去ります。研究員がクリームを塗った腕を、蚊が200匹ほど入ったケースの中に入れても、刺されないどころか肌にとまりさえしません。
(花王 研究開発部門・飯田稔明さん)
「オイルが蚊の脚に塗り広がって、嫌がって飛びたつ」
この蚊よけクリーム「ビオレガード モスブロックセラム」は日本未発売。東南アジアや香港では発売中です。
新しい蚊対策!“飛べなくなって”落下するスプレー
花王が2023年6月に開発した新製品は、従来の殺虫技術とは異なる新しい蚊対策。このスプレーを吹きかけると、蚊はすぐに落下します。落ちる理由は、撥水性が奪われて羽が動かせなくなったからです。
(花王 研究開発部門・飯田稔明さん)
「蚊の体は撥水性があって水をはじくが、界面活性剤があることで、濡れるようになって飛べなくなる」
蚊の体は、水をはじくようにできていて雨の中でも飛ぶことができます。通常、水をスプレーで吹きかけても、蚊が落下することはありません。しかし、新製品のスプレーだと、バラバラと落ちていきます。さらに、呼吸を妨げる事で、駆除もできます。
このスプレー「ARS モスシューター」は、2024年8月にデング熱被害が広がるタイから先行発売される予定です。
岐阜大ベンチャー企業が開発!“蚊を寄せ付けない服”
岐阜大学発のベンチャー企業「ファイバークレーズ」は、“蚊を寄せ付けない服”を開発しました。寄せ付けない秘密は服の繊維。拡大すると、繊維に沿って黒い穴が無数にあります。一つ一つの穴には防虫剤が入っていて、雨や洗濯などで水にぬれても効果が長続きするようになっています。
(ファイバークレーズ・長曽我部竣也社長)
「世界ではびこっている感染症を、われわれの素材で、一人でも被害者数が下げられるような未来を目指しています」
今回紹介したクリームやスプレーは現在、国内での販売はありません。そこで、今日からできる蚊の対策も紹介。
外出時は、出かける前に足を除菌シートで拭くこと。蚊は、人間の足に多くある常在菌のにおいが好きなのだとか。拭き取ると臭いを抑えることができます。また、蚊が好きな服の色は、暗い色やボーダーなどです。
家の中での対策は、扇風機などで「風」をつくること。蚊は少しの風にも弱いのだとか。家の外では、水をためないこと。蚊はわずか2ミリの水があれば産卵できます。
CBCテレビ「チャント!」7月17日放送より