岐阜県岐阜市に、創業115年の歴史を持つ定食屋さんがあります。土日のランチは常に満席になる人気店ですが、最大の特徴はメニューの多さ！1世紀以上愛され続ける理由は、どんな状況でもメニューを減らさないという店主の思いと、創業から変わらぬこだわりの味。老舗定食屋さんが愛される理由を探りました。

3人合わせて224歳で作る昔懐かしい味のオムライス

岐阜城がそびえる金華山の麓にある、創業115年の定食屋「志のだや」。接客や会計、厨房まで全てこなすのが、3代目店主の篠田康明さん（75歳）です。

妻の祥子さん（70歳）と、康明さんの姉・とし子さん（79歳）、3人合わせて224歳でお店を切り盛りしています。

お客さんのほとんどが一度は頼むという人気メニューはオムライス！

（男性客）
「しばらく経つと、食べたくなる」

（女性客）
「昔、私たちが味を親しんだ頃のオムライスの上等なのに似ています」

シンプルでどこか懐かしい見た目です。人気の理由は、先代から伝わるこだわりのレシピでした。ラードで炒めることで植物油にはない香ばしさを出し、ザラメの甘さが効いたチキンライスは、一度食べたらやみつきになる味わいです。

店主も総数を把握できない？約700種類のメニュー

土日は午前11時半の開店から満席が続く「志のだや」。お客さんが絶えない理由の一つがメニューの多さ。店のメニューは、ざるそばやうどん、親子丼など定番メニュー以外に定食屋とは到底思えないとんでもない数。

麺類だけで80種類、丼ものと洋食がそれぞれ16種類、ほかにも定食やセットなど諸々合わせて、全部で140種類！さらに7種類の丼ものと麺類のセットメニューが全部で21種類。ここで終わるかと思いきや、メニュー表の下には“その他の麺類との組み合わせもできます”と書いていました。

取材スタッフが数えると560通りあり、全て合わせると単純計算で700種類も存在することになります。あまりの多さにお客さんも迷うほど。

多すぎるメニューの中には、常連客のリクエストから生まれたものもありました。中華そばの上に大きな海老天が乗った「天ぷら中華」や、冷やしたぬきに味噌を合わせた「冷やし味噌たぬきうどん」などは他では見かけない変わり種です。

レシピは体が覚えている　調味料を目分量で入れても同じ味に

シンプルなうどん、蕎麦、きしめんに加え、稲庭うどんのような細麺や、みそ煮込み用の塩を使わないうどんなど全部で5種類は自家製麺です。

康明さんは、麺の種類があるからこそメニューの種類が増やせると言います。他にも、京都の老舗から仕入れた薫り高い風味の削り節などが「志のだや」の味を支えていました。

お店が開店すると、康明さんたちは止まることなく大忙し。あれよあれよという間に注文を捌いていきます。調理する際、目分量で入れる調味料でも毎日同じ味なるのは、長年の経験が成せる技。ただ、レシピは完全に覚えていても時にはアクシデントも起こります。

（志のだや・篠田康明店主）
「ちょっとお勘定、お釣りを間違えました。こういうこともあります」

さすがに700種類の値段までは覚えきれず、レジの横に貼っているメニュー表で確認しながら会計をしていました。

配達も店主の仕事！注文されたのはオムライスと人気を二分する焼きそば

常連客への配達も、康明さんの仕事です。取材した日は、40年以上の付き合いがあるというお客さんから焼きそばの注文が入りました。

「志のだや」でオムライスと並ぶ人気メニューが、焼きそば。オムライスと同じくラードとザラメが決め手になっています。

ソースとも塩とも違う、他では味わえない一度食べたらクセになる甘じょっぱい味付けは、比較的安価だったザラメを料理に使っていた先代から引き継ぎ、今では「志のだやの味」として多くのお客さんに親しまれるようになりました。

（女性客）
「50年は来ています。ここでしか食べられない味。昔から味が変わらない」

（志のだや・篠田康明店主）
「食べたことがないメニューがあるとお客さんが『食べてみたいな』と思う。そういう気持ちをこちらも期待しているし、お客さんも宝探しのような感じで来る人もいる。メニューを減らすということは今のところ考えておりません」

お客さんへの思いが伝わってくる一言に、老舗定食屋が愛される理由が詰まっていました。

CBCテレビ「チャント！」9月6日放送より