「震えるほどの達成感が」 予約1か月待ちの出張シェフは海苔店との二刀流
牛フィレ肉のロースト黒ニンニクのヴァンルージュなど、非日常のメニューが並んだ食卓。しかし場所は、家族5人が暮らす一般の家庭です。家庭の食卓を高級レストランに早変わりさせたのは出張シェフ。実は海苔店を継いだ二代目の顔も持っていました。海苔店との二刀流の出張シェフの素顔に迫りました。
家庭の食卓が高級レストランに早変わり
愛知県西尾市で出張シェフのサービスを手掛ける「ユアシェフ」のオーナー石原成也さん(31歳)。閑静な住宅街で車を止め、荷物を降ろしました。向かった先は一軒のお宅。声をかけて家の中に入ると、キッチンに荷物を置きました。
今回サービスを提供するお宅は、西尾市内に暮らす5人家族の伊藤家。出張シェフを依頼した伊藤恵さんは、家でフレンチのコース料理が食べられると噂を聞き、「ユアシェフ」に依頼。そのおいしさのあまり、すでに6回ほどリピートしていました。
料理に使う食器類はすべて成也さんが用意し、調理器具や道具は出張先のお宅にあるものを借りています。
(ユアシェフ・石原成也オーナー)
「(お宅によって)キッチンも違いますし、調理道具も違うので、毎回ヒヤヒヤしながら準備をしている」
肉や野菜が次々と手際よく調理されていき、自宅でプロの技が見られると評判です。調理時間は約1時間。この日、成也さんが提供した料理は、大人には旬のものを取り入れ酸味と甘みを意識した創作フレンチのフルコース、子どもたちにはハンバーグとトマトパスタ。
1か月先まで予約がすべて埋まっている「ユアシェフ」は、年間400件以上の家族が成也さんの料理を楽しみしています。
海苔店を継ぐも料理の道が諦められず出張シェフに
家族団らんに一役買う「ユアシェフ」の活動拠点は、西尾市の「山廣海苔」。成也さんは、この海苔店の2代目で、出張シェフと二刀流で活動しています。
海苔の卸問屋として飲食店や食品会社などに海苔を納めていて、現在成也さんはオンラインショップの商品管理や販路の開拓、新商品の開発などを担当。半年ほど前から小売りも開始しました。
山廣海苔は1986年、海藻関係の仕事をしていた父親の廣光さんが独立して始めました。成也さんは3男として誕生。小さい頃から料理をするのがとても好きな子どもでした。
高校卒業後は料理人の道へ進み、東京の調理師専門学校へ。その後、スペイン料理やイタリアンのお店で修行します。
(ユアシェフ・石原成也オーナー)
「父も母もけっこう高齢で、(僕が)東京にいたりして外に出ていたときが長かったので、ふと会ったときに(両親が)すごい年を取ったなと思ったんです。そのときに何か僕が手伝えないかなと思い(山廣海苔に)入ろうと思った」
2016年に家業の海苔店を継ぎましたが、料理人の道をどうしても諦められずにいたときに知人から「料理を(知人の)家で作ってほしい」と頼まれます。
皿と食事を準備し、料理を提供したときに感じた震えるほどの達成感が、出張シェフを始めるきっかけになりました。
自分の料理で家族をとびっきりの笑顔にしたい
海苔店の2代目と出張シェフの二刀流をスタートさせた成也さんは、2019年に出張シェフの「ユアシェフ」を立ち上げ、仕込み用の厨房を新設します。新たに和食専門のシェフも加わりました。
口コミで評判が広まり、予約が後を絶たないほど人気になった「ユアシェフ」。海苔店の仕事と仕込みがあり休みもほぼない状態ですが、海苔を使ったメニューの開発にも勤しみます。
自分の目の前で料理を食べて直接「おいしい」と言ってもらったり、食後に「久しぶりに家族が集まれてよかったです」と言ってもらえたりするのは、出張シェフの醍醐味だと考えています。
(ユアシェフ・石原成也オーナー)
「幸せそうな家族団らんを僕たちが作れているという実感は、すごく良いものだと思います」
海苔店2代目と出張シェフの二刀流で忙しい毎日ですが、出張シェフでお会いした家族が自分の料理でとびっきりの笑顔を見せてくれる瞬間を励みに、今日も腕を振るいます。
CBCテレビ「チャント!」8月5日放送より