「泥棒やぞ!」漁師の怒り 横行するハマグリ密漁の実態「5年前からやっている」
今がまさに旬のハマグリ。特に有名な産地である三重県桑名市では、禁止区域で繰り返される密漁によって、大きなピンチを迎えています。実は、ブランドハマグリを狙う悪質な密漁が堂々と行われていたのです。「知らなかった」では済まされない密漁の実態を取材しました。
江戸時代から歴代将軍に献上されてきたブランドハマグリの危機
ふっくらした身に旨味が詰まった、今が旬のハマグリ。昔から「その手は桑名の焼きハマグリ」で知られる、三重県桑名市のご当地グルメです。
ところが、今年は稀にみる不漁。
そのため1877年創業の「歌行燈」では、桑名産以外に伊勢市や松阪市で獲れたハマグリもまとめて「三重県産」として提供しています。
(歌行燈・横井健祐社長)
「極端に味が変わることはないですが、やっぱり桑名産のハマグリの方がおいしい」
桑名のハマグリは木曾三川が伊勢湾に流れ込み、栄養分が豊かな干潟で育つため、味は抜群。江戸時代には歴代将軍に献上されていたと言います。
埋め立てなどの影響で1975年には漁獲量が大きく減少しましたが、地元の漁協がハマグリの稚貝の放流を続けたことで徐々に回復しました。
ところが、なぜか数年前から再び減っているのです。
地元の赤須賀漁協は密漁の影響が大きいと話します。
(赤須賀漁協・水谷隆行組合長)
「密漁が一番大きい。人の畑でキャベツ盗むか?泥棒だよ。それと一緒」
禁止エリアにハマグリ密漁者が20人以上 漁業権を持つ人たちは激怒
桑名市の一部の干潟には「漁業権」が定められており、組合員など許可された人以外がハマグリを獲ることは禁止されています。
漁業権を持つ人は「青い旗」を掲げて潮干狩りをするのですが、午前11時を過ぎると、青い旗を掲げずにスコップやクワを持つ人が20人以上集まってきました。
(密漁者)
「(Qハマグリですか?)うん」
「(Q獲れますか?)ちっこい」
「(Q漁業権持っていますか?)持ってない。こっち行かなあかんな、ごめんごめん」
(密漁者)
「(Qハマグリですか?)ちょこっとね」
「(Q漁業権は持っている?)みんな持っとらへん。向こう行くわ、すまんすまん」
「(Q大潮の時は毎回やっている?)やっとらへん。今日が初めてや」
ここにも、あそこにも、密漁者が。この状況に漁業権を持つ人たちは怒りをあらわにします。
(漁業権を持つ女性)
「(権利がないのに)獲られたら迷惑やね。せっかく漁業権を買っているのに」
(漁業権を持つ男性)
「商売で密漁する人もいる。なので余計に腹が立つ」
禁止エリア境界線で密漁する理由とは
干潟は、川を隔てて桑名市と川越町に分かれていて、川の中腹から桑名市側が漁業権の設定されているエリアとなります。
地元の漁師たちによると、密漁者は禁止されたエリアの境目で潮干狩りを行い、注意されそうになるとすぐに川越町に逃げてしまうと言います。
(漁業権を持つ男性)
「おれが来ると、よく知っているから(密漁者は)みんな逃げる」
別の日、再度干潟を取材してみると青い旗を掲げていない男性が。
(密漁者)
「なんだお前(漁業権は)持っとらへんけど関係ない」
「(Q獲ってはダメな場所では?)絶対いいって。間違いない」
「ここは禁止エリアではない」と主張しますが、4~5年前から境界線で潮干狩りを続け、これまでにも漁協に咎められた経験があると言います。
(密漁者)
「(そんなに毎日獲ってどうする?)人にあげるの。10人~20人ぐらいほしい人がおるでな」
「桑名ハマグリを絶やすわけにはいかない」漁師たちの思い
相次ぐ密漁によって資源が減少したことで、地 元の漁師たちは、15年ほど前まで1日に30キロ獲っていたハマグリを「10キロまで」と定め、資源を増やすため、これまでに3000万個以上のハマグリの稚貝を放流してきました。
(赤須賀漁協・水谷隆行組合長)
「漁だけで食ってほしいけどアルバイトしている漁師もいる。漁師にとっては死活問題。でもそうせざるを得ない。というのは漁師は資源守らなければならないから」
また、産卵前の3センチ以下の小ぶりのハマグリは獲らないように決めています。
稚貝の研究などを行う三重県水産研究所は、密漁者は小さな貝も根こそぎ獲ってしまうため、資源へのダメージが大きいのだと指摘します。
(鈴鹿水産研究室・舘洋主幹研究員)
「資源に対する知識のない人が小さいハマグリを獲ると、資源全体の減少に繋がる可能性がある」
地元の漁協は、海上保安庁と連携して定期的にパトロールを行い、特に悪質な事例は告訴しています。
(赤須賀漁協・水谷隆行組合長)
「江戸時代から桑名のハマグリは献上されていたので、絶やすわけにはいかない。これは漁師の使命。その思いだけ」
CBCテレビ「チャント!」7月21日放送より