町民のみぞ知る!最短“5分で終わる祭り” 「御櫃割(おひつわり)」ご利益のある赤飯に大勢の人が群がる奇祭に
愛知県西尾市には、奇祭「御櫃割(おひつわり)」があります。地元の人しか知らない、最短5分程度で終わってしまうという祭りは、一体どのようなものなのでしょうか。その歴史や、祭りにアツい思いをかける「OMATSURIちゃん」を探しました。
厄年の男たちが御櫃を叩き割る!?江戸時代から続く奇祭
愛知県西尾市にある「室神明社」(むろしんめいしゃ)。ここで行われる「御櫃割」について、来ていた方に尋ねました。
(お客さん)
「厄年の方が、御櫃を取ったらここで拳で割って。御櫃を割る時が一番クライマックス。よそにはない」
お客さんの口から次々に出てくるのは、「御櫃を割る」というワード。話を聞くだけでは全貌がわかりません。一体、何をする祭りなのか関係者に尋ねました。
(御櫃割副総代・左右田英明さん)
「(Qこれ何ですか?)これが御櫃です。中に赤飯が入ってます。これを割ってから皆さんが取って食べる。『御櫃割』は(中の)赤飯を食べると、大病をしないという意味がある」
室神明社で江戸時代から続く、由緒ある奇祭「御櫃割」。その名の通り、赤飯の詰まった御櫃を厄男たちが叩き割り、中身を町民たちにふるまうというものです。
元は戦に向かう領主の必勝祈願として始まったもので、今では中の赤飯を食べると無病息災のご利益があると言われています。今年は4年ぶりの開催となりました。
クライマックスはたった“数分”?!他の祭りにはない異常な短さ
地元では長く親しまれてきた「御櫃割」が“奇祭”と呼ばれる由縁は、その“時間”にあります。
(御櫃割副総代・左右田英明さん)
「まあ最短で5分くらい。1、2分で割れることは多分ない」
御櫃の固さと力加減によっては、たった10分で終わってしまうかもしれないという時間の短さ。諸説ありますが、一説によれば割れるまでの時間が長ければ豊作、短ければ不作とその年の豊作を占っていたという言い伝えも残っています。その御櫃を割るべくして集まったのが、今年25歳と42歳を迎える厄男たちです。
食べれば無病息災と言われる、ありがたい赤飯を炊いているのは、神社の隣町にある創業107年の老舗和菓子店「みどりや」店主の新家賢さん。
(みどりや店主・の新家賢さん)
「あんまり早く割れてもいかんって言われてる」
新家さんの絶妙な匙加減が、御櫃の割れる早さを左右します。そうこうしているうちに、時刻は御櫃割が始まる午後3時に。厳粛な雰囲気の中で神事が終わると、いよいよ本番となります。
約2分で割れた御櫃…赤飯は20秒で空っぽに!
数分間のためだけに集まった町民たちの期待が募る中、神殿から25歳と42歳を迎える厄男たち7人と、OBの3人、計10人が出てきました。そして、御櫃が厄男に渡されると同時に、甘酒をかけて厄落とし。御櫃を持った厄男たちは、ぐるぐると回りながら御櫃を次々拳で叩いていきます。
(厄男たち)
「割れんぞー!」
観客たちが見守る中、上から拳で叩いていくと少しずつ蓋が沈み込み、今年は1分47秒で御櫃が割れました。
割れたことを知った観客は、老若男女問わず御櫃へ殺到。豪快に赤飯を手で掴み取り、口へ運びます。2升の赤飯が入った御櫃は、ものの20秒で空っぽに…。こうして、御櫃の赤飯を頬張ることで今年1年の無病息災を願うのが「御櫃割」の醍醐味なのです。
(ことしで8回目の参加・波切進太郎さん)
「(Qことしの御櫃が割れる早さはどうでした?)ちょっと早めだった。子どもが見に来て食べて、『俺もやる』ってなるのが良いと思う」
最後は参加者を代表して、波切さんからOMATSURIちゃんとして手形をいただきました。4年ぶりに開催された、西尾市に伝わる奇祭。赤飯を頬張る笑顔と共に、無事終了しました!
CBCテレビ「チャント!」11月8日放送より