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ビートルズ日本公演から60年…主催したCBCが知る舞台裏(5)

ビートルズ日本公演から60年…主催したCBCが知る舞台裏(5)

世界的バンド「ザ・ビートルズ」が唯一の日本公演を行ってから、今年で60周年。「伝説の日本公演」を主催した中部日本放送(CBC)が知る舞台裏や秘話を、CBC内で屈指のビートルズファン、後藤克幸・特別解説委員が社の歴史とともに振り返る連載の第5回。

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連載第1回から4回は「CBCが主催するまでの舞台裏」…公演開催までの秘話を振り返っています

「武道の殿堂」が「音楽の殿堂」に

1966年6月29日に来日したビートルズは、6月30日・7月1日・2日の3日間で、昼の部・夜の部あわせて計5回、ステージに立った。会場は、東京の日本武道館。1万人以上の観客が入場できる当時としては国内最大規模の屋内施設だった。ビートルズの日本招へいと来日公演の主催者だったCBC(中部日本放送)が、武道館を管理する読売新聞社に協力を求め、読売新聞社が共同主催者となり武道館の使用を許可して実現したのがビートルズの武道館公演だった。

それまで「武道の殿堂」だった日本武道館は、ビートルズがライブを行った聖地として国内外のミュージシャンたちが憧れる「音楽の殿堂」として、新たな歴史が開かれた。

幻となった名古屋公演 ネットワークの壁も…

名古屋の放送局であるCBCとしては、当然、地元の名古屋での公演開催を希望した。しかし、ビートルズの滞在日程はわずか5日間。この滞在スケジュールの中で、東京での公演をこなし、かつ、東京~名古屋間の移動を行うのは不可能だった。警備上の問題もあって断念し、東京公演のみとなった。さらにCBCにとってもう一つの苦境となったのが、公演のテレビ放映に関するものだった。

ビートルズ来日公演の模様は、テレビでも放送する契約だったが、武道館でのステージの撮影・収録・放映は、武道館を管理する読売新聞社系列の日本テレビが担当することになった。
日本テレビがキー局となるNNN(日本ニュースネットワーク)で全国放送されるのが基本だ。CBCは、TBSをキー局とするJNN(ジャパン・ニュース・ネットワーク)に加盟していたため、ネットワークの基本に従えば、日本テレビが武道館で撮影・収録するビートルズのステージの映像を、CBCは放送することができない。しかし…。

1966年7月3日のCBCテレビ番組表より

「特別措置」が認められた

CBCの社史資料室に、1966年7月3日(日曜日)のテレビ番組表が保存されている。この日の昼前から午後にかけての番組をたどってみる。

CBC社内にある「フィルム室」。歴代のラジオ・テレビ番組表や放送実績など、開局以来、デジタル化される前の膨大な記録がマイクロフィルムで保管されている。手書き資料も多い

・午前11:00「兼高かおる世界の旅」
・正午「CBC ニュース」
・午後0:15「スチャラカ社員」出演:中田ダイマル・ラケット、ミヤコ蝶々 ほか
・午後0:45「ロッテ歌のアルバム」司会:玉置宏
・午後1:45「家族そろって歌合戦」司会:獅子てんや・瀬戸わんや
・午後2:30「歌うプレゼントショー」出演:井沢八郎、奥村チヨ ほか
・午後3:30「キング歌の五番街」出演:三橋美智也、大月みやこ ほか
・午後4:00「エイトマン」声の出演:高山栄 ほか
当時のテレビ番組を知る人にとっては、懐かしい番組と出演者の名前が並んでいる。そして…

★午後4:30「ザ・ビートルズ日本公演~東京日本武道館から」出演:ザ・ビートルズ

1966年7月3日の放送進行表。中央に「ザ・ビートルズ日本公演」の文字が見える

ビートルズの日本招へいと来日公演実現に奔走した主催者のCBCには、特別措置として、名古屋地区でのビートルズ武道館公演のテレビ放送が認められたのだ。
CBCの社史資料室には、この日のビートルズ日本公演特別番組について、事前にメディア各社にリリースした番組解説文も保存されている。

★ビートルズ本邦初公演の模様を録画中継で紹介/7月3日(日)午後4:30~5:30/『ザ・ビートルズ日本公演』~日本武道館より録画中継
今日の中継は1・2部に分かれ、1部は日本側歌手の内田裕也、尾藤イサオらによるもの。
2部はビートルズの演奏と歌である。1部には、空港に降り立ったビートルズの表情、29日午後のヒルトンホテルでの一問一答(聞き手:E・H・エリック)、会場前に集まった観衆へのインタビューなども挿入され、この間、ビートルズのこれまでのエピソードが、スチールによって紹介される。
この録画は、6月30日夜の第1回公演と1日昼のマチネから収録したものを、一行のマネージャーであるブライアン・エプスタイン氏立ち合いのもとに1日午後、編集したものである。
<出演>ザ・ビートルズ
ザ・ドリフターズ ジャッキー吉川とブルーコメッツ ブルージンズ 尾藤イサオ 内田裕也 桜井五郎 望月浩
<司会>E・H・エリック

ロールフィルムから読み取った、番組解説文(テレビハイライト)の一部

母が夢中に…1966年の記憶

この日の記憶が私にはある。当時小学3年生だった。母親がこの日は朝から「今日はビートルズの公演をテレビで見るのよ」と言って楽しそうだった。名古屋市内に住んでいた家の居間には白黒テレビがあった。午後からは、母はテレビの前でずっと番組が始まる時間を待っていた。そして、画面に、武道館のステージが映し出され、ビートルズが歌い始めると、母はブラウン管を食い入るように見続けた。

1966年7月3日のCBCテレビ番組表より

イエスタデイをポールが歌い始めたときだった。母が「ビートルズの曲の中でも、『イエスタデイ』は、すごくいい曲なんだよ」と話しかけてきた。小学生の私は、テレビを見つめる母を傍らで見ながら、こんなに母親が夢中になるビートルズは、きっと素晴らしい人たちなんだろう…と思いながら、白黒テレビの中で躍動するビートルズを見ていた。

CBCに保存されている番組表を改めて確認すると、私が母と一緒に見たあの日のテレビは、1966年7月3日の日曜日にCBCが放送した番組だったに違いない。

7月3日のCBCテレビでのビートルズ放送に関する記録が残されたマイクロフィルム群

来日公演の曲目は貴重な選曲だった

1965年に公式にリリースされた「イエスタデイ」は弦楽四重奏が伴奏を奏でる美しい名曲。この曲を、武道館ではエレキギターによるバンド演奏でポールが歌い上げた。ビートルズのライブツアー活動の中では演奏された例が少ない貴重なパフォーマンスだった。
ビートルズは、この時期、従来のラブソング中心のポップグループから、新しい楽器や独自の演奏技術、哲学的な歌詞を駆使して、新たな境地を切り開こうとしていた。

1965年にリリースした「ラバーソウル」では、ジョージ・ハリスンがインドの民族楽器であるシタールを「ノルウェーの森」の録音で演奏し世界を驚かせた。1966年は「リボルバー」のレコーディングを来日公演の時期に同時進行で進めていた。テープの逆回転やクラシックの音楽家やブラスセッション・ミュージシャンとコラボしての斬新なアルバム創作に取り組んでいた。
この時期に行われた日本公演は、こうした変革期のビートルズを感じられる歴史的にも貴重なセットリストでのライブとなった。

(ビートルズ日本公演での演奏曲目)
1)Rock And Roll Music
2)She’s A Woman
3)If I needed Someone
4)Day Tripper
5)Baby’s In Black
6)I Feel Fine
7)Yesterday
8)I Wanna Be Your Man
9)Nowhere Man
10)Paperback Writer
11)I’m Down

( つづく。以降、随時掲載します )

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