米中の関税バトルの行方は?トランプ大統領の視線の先にあるもの

米中の関税バトルの行方は?トランプ大統領の視線の先にあるもの

ここまで熱い闘いになることを予想した人は少なかったと言う。米国と中国の輸入関税をめぐる貿易摩擦である。

関税合戦もいよいよ・・・

アメリカ政府は5月13日に中国への追加関税を発表した。いわゆる「第4弾」になる。
トランプ政権が2018年7月に最初の関税を発動してから10か月。中国の貿易黒字が増え米国経済の伸びに迫ってきた中、特に軍事技術につながるハイテク産業については見逃すわけにはいかないという見方もある。この間にも打開策を探って、両国の通商協議は続いてきたが、ステージはいよいよ究極の場に近づいたと言える。

スマートフォンも対象に

今回の「第4弾」追加関税の品目は、5月10日発表「第3弾」の対象になった衣類や家具などの日用品や農産物などに加えて、スマートフォン、テレビ、パソコンなどこれまで除外されてきた3805品目が対象となり、“残りほぼすべて”が関税対象となった。
一方の中国もこれを前に、600億ドル相当の米国製品にかけている関税を、現在の5~10%から一気に最大25%まで引き上げる報復関税を発表した。まさに「関税合戦」の様相だ。
特に重いのは携帯電話のスマートフォンであろう。米アップル社のiPhoneは中国での製造にシフトしており、もし関税が発動されれば米国民も大きな影響を受ける。

実は米中の「覇権争い」か?

この米中バトルは貿易をめぐる経済問題に思えるが、実はそうではない側面がある。
米国と中国、ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席、世界のリーダーの座をめぐる争いでもある。以前に話を聞いた外務省出身のアナリストも「単なる貿易戦争ではない。大国間の覇権争い」であると断言した。となると根は深い。
米国による「第3弾」の追加関税は本格化が6月1日から、「第4弾」の発動も早くても6月末と見られる。一方の中国による報復関税も6月1日からであり、5月いっぱい交渉時間の猶予はあると見られる。しかしトランプ大統領が6月28・29日に大阪で開催されるG20首脳会談に場において習国家主席と会談したいと表明したように、“トップ会談”でしか解決の糸口はつかめない見通しである。「覇権争い」ならばなおさらである。

景気悪化で消費税10%どうなる?

世界経済はもちろん、日本経済も大きな影響を受けている。かつて「平成」改元の際には上昇した株価も、「令和」改元の大型連休後は下がり続けた。
5月13日に内閣府が発表した景気動向指数は「悪化」、この「悪化」というレベルは6年2か月ぶりのことである。景気動向指数で基調判断を示すようになった最初の「悪化」は、2018年6月からで、リーマンショックの時期である。
そこで気になるのが、10月に迫る「消費税率10%への引き上げ」だ。これまでも度々「延期論」が出たが、政府与党は「リーマンショック級の出来事がなければ延期なし」と語ってきた。しかし、この景気動向指数「悪化」ということにおいてはその条件に達してしまったのである。国家財政はすでに「消費税10%」を組み入れて動いているため、増税延期も簡単にはいかないが目の離せない状況が続く。

*視線の先の大統領選挙
トランプ大統領は2020年秋の大統領選挙を強く意識して、自分自身での強力なアピールがしやすい「外交」に、より一層力を入れていくと見られる。
6月のG20首脳会談を前に、そのトランプ大統領は5月25日から4日間、「令和」最初の国賓として来日する。新しい天皇皇后両陛下との会談と共に、安倍首相との日米首脳会談もセットされる。そこでどんな会話がなされるのか。日本は米中両国の間でどう舵取りをするのか。

この夏は参議院選挙があり、消費増税の延期論と呼応して衆議院を解散しての同日選も取り沙汰され始めている。外交と国内政治が色濃くリンクしながら、2019年の日本に熱い夏が近づいている。

【東西南北論説風(101)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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