尿トラブル
サマリーSummary
ドクター:神奈川歯科大学教授 よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長 医学博士 奥井伸雄
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
今回のテーマは「~頻尿・尿漏れ…侮るなかれ~解決!あなたの尿トラブル」
頻尿や尿漏れなどの尿トラブルに悩んでいる人は中高年の約7割にも及ぶといわれています。そこで今回は、尿トラブルについて徹底リサーチ!原因や改善法を専門医に教えてもらいました。
「1日に何度もトイレに行ってしまう」頻尿の原因と対策
<頻尿の原因>
・冷え性
膀胱は、自律神経の働きによって収縮しています。冷え性で身体が冷えて交感神経が優位になると膀胱が収縮するため、少ない尿量でも尿意を感じやすくなってしまうのだとか。また、仕事などで緊張する場面でも交感神経が優位になるため、尿意を催しやすいそうです。
・不安&ストレス
頻尿は、精神的なものにも左右されます。これを「心因性頻尿」といいます。例えば、尿意のせいで人に迷惑をかけたり、トイレに行けない状況に陥ってしまったり、排尿に関する
苦い経験がある場合、不安やストレスにより膀胱が収縮し尿意を感じやすくなってしまうそうです。
・過活動膀胱
通常、膀胱に6割ほど尿が溜まると尿センサーから神経を通じて脳に伝達され、尿意を催すといわれています。ところが、尿センサーから脳への伝達に不具合が生じていると、尿があまり溜まっていなくても膀胱が勘違いして伝達し、脳が排尿サインを出してしまうのだとか。このような状態を「過活動膀胱」といいます。主な原因は、老化や生活習慣病などによる血管の衰え。それに伴い膀胱の機能も低下し、結果的に過活動膀胱につながると考えられているのだとか。通常1回あたりの排尿量は250cc程度といわれており、それよりも少ない場合は過活動膀胱の可能性があるそうです。
<ドクターおすすめ改善法!「膀胱訓練」>
先生がおすすめする頻尿の改善法は「トイレを我慢する」こと。これは「膀胱訓練」という治療法で、過活動膀胱だけでなく冷え性や心因性の頻尿にも効果的なのだとか。先生曰く、人は一般的に250cc程度の尿を膀胱に溜められるので、約3時間はトイレに行かなくても問題ないそうです。行う際は、趣味などで気を紛らわしながら1日に1回行いましょう。勘違いの尿意を我慢する事で、膀胱に溜められる尿量が増え、頻尿の改善効果が期待できるそうです。(※すぐにトイレに行ける環境で無理のない範囲で行なってください。)
~我慢のしすぎには注意!~
先生によると、最近の研究で我慢の限界まで尿を溜めてしまうと集中力や認知力が低下する事が分かったのだとか。そのため、膀胱訓練などの計画的な時以外は、我慢しすぎないように注意しましょう。
男女の頻尿の原因と対策
頻尿には、上記で紹介した原因の他に男女それぞれの原因もあるそうです。
・男性に多い頻尿の原因「前立腺の肥大」
前立腺は、膀胱の下に位置し尿道が通っています。加齢などで前立腺が肥大し尿道を圧迫すると、排尿に時間がかかって出しきれなくなり頻尿につながってしまうそうです。
・女性に多い頻尿の原因「骨盤底筋の衰え」
女性の原因は、加齢や出産などにより骨盤底筋が衰える事。骨盤底筋は、膀胱や尿道を支える筋肉で、衰えると頻尿などにつながるそうです。
<ドクターおすすめ対策法!「スクワット」>
筋肉を刺激すると、男性ホルモンのテストステロンが分泌されます。テストステロンは、男性だと前立腺の肥大を抑制、女性の場合は骨盤底筋の機能が向上し、頻尿の改善につながるのだとか。下半身の大きな筋肉を鍛える方が、テストステロンがより分泌されるのでスクワットを行うのがおすすめだそうです。
放っておくと命の危険も!?「夜中の頻尿」原因と対策
夜は、本来体力を回復させるための大切な時間です。しかし、夜トイレに行く事により睡眠を妨げられると、高血圧や糖尿病が悪化したり、誤って転倒して寝たきりにつながったり、間接的に死亡率に影響を及ぼす恐れがあるのだとか。事実、夜間の排尿回数が2回以上の人は、1回以下の人と比べて死亡率が約2倍というデータもあるそうです。
<夜中のトイレの原因の1つは「ふくらはぎ」!?>
通常、体内の水分量を一定に保つため、摂取した水分は血管を通して尿となり排出されます。しかし、加齢によって血管が衰えると日中に摂った水分が重力に逆らえず、ふくらはぎの筋肉組織に溜まりやすくなるのだとか。すると、夜横になった時にふくらはぎに溜まった水分が血管に戻り、尿が作られて夜中のトイレにつながってしまうそうです。
<ドクターおすすめ対策法!「弾性ストッキング」>
先生がおすすめする方法は、日中の数時間「弾性ストッキング」を履く事。ふくらはぎに圧力がかかる事で、水分が溜まるスペースが少なくなります。すると、夜横になった時に血管に戻る水分が減少し、尿が作られにくくなるのだとか。この方法は、夜間頻尿の診療ガイドラインでも第一選択の治療法として推奨されているそうです。弾性ストッキング以外にふくらはぎ用のサポーターでもOK!弾性ストッキングと同等の効果が期待できるそうです。
ふとした時に襲ってくる「尿漏れ」の最新治療
尿漏れの代表的なものには、急にトイレに行きたくなり尿が漏れてしまう「切迫性尿失禁」や、骨盤底筋が緩んでいるせいで咳やくしゃみなどで腹圧がかかると尿が漏れてしまう「腹圧性尿失禁」などがあります。ひどくなると手術での治療が必要になる事もあるそうです。
<たった20分で尿道が蘇る!?女性専用の最新尿漏れ治療法>
近年注目されているのが女性専用の「レーザー尿失禁治療」。特殊なレーザーを衰えた尿道周りの筋肉に照射し65度まで温める事で、筋肉の血流が良くなり、腹圧性尿失禁の改善効果が期待できるのだとか。ヨーロッパやアメリカではすでに普及しており、治療して1年後には尿漏れの量が90%以上減少したという報告もあるそうです。
(2021年11月21日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)