今年3月、滋賀県立琵琶湖博物館が、希少種ヤマトサンショウウオの繁殖に同館で初めて成功したと発表しました。現在同館ではその幼生が展示されています。4月17日放送の『CBCラジオ#プラス!』では、成功の裏側や生態の話題から、サンショウウオの匂いまで多岐にわたる内容を、琵琶湖博物館の金尾滋史さんに伺いました。聞き手は竹地祐治アナウンサーと天野なな実みです。ヤマトサンショウウオとはサンショウウオというと大型の個体を想像しがちですが、金尾さんによると、日本のサンショウウオは10センチ前後の小型種が多く、全国にさまざまな種類がいるといいます。ヤマトサンショウウオは近畿地方東部から中部地方南部にかけて分布し、普段は森林で生活しています。ただし、1月から5月ごろの産卵期になると水辺に移動し、卵を産みます。孵化した幼生は外えらを持ち、「ウーパールーパーのような姿になる」と説明されました。また、ウーパールーパーも同じサンショウウオの仲間であり、「幼生の姿のまま成長する特殊な例」であることも解説され、両生類の進化の多様性がうかがえます。繁殖成功の裏側今回の繁殖成功の鍵となったのは、自然環境の再現でした。館内展示だけでなく屋外に専用水槽を設置し、陸地と浅い水辺を組み合わせた環境を整備。さらに冬の寒さをしっかり経験させることで、自然に近い生活リズムを再現しました。特に重要だったのが、繁殖のきっかけづくりです。ヤマトサンショウウオは真冬の1~2月に活動を始めるため、その時期の雨による環境変化を人工的に再現。水量を増やすことで「冬に雨が降った状況」を作り出し、繁殖行動を引き出しました。こうした取り組みについて金尾さんは、単なる飼育ではなく「野外での生態調査の成果を飼育に反映している」と説明し、全国の研究機関との連携の重要性も強調しました。繁殖技術が必要な必要な理由琵琶湖博物館ではこれまで絶滅危惧種の淡水魚の保全に取り組んできましたが、2019年からヤマトサンショウウオの飼育展示も開始。今回の繁殖は、その延長線上にあります。背景には、「いなくなってからでは遅い」という強い危機感があります。技術の確立を早める理由について、将来の個体数減少に備えることが挙げられました。金尾さん「言い方はちょっと変ですけど、まだたくさんいるうちにその繁殖の技術というのを作っておいて、その万が一の時が起こった場合はそういう技術がすぐに適用できるように」さらに、保全には繁殖技術だけでなく、生息環境そのものを守ることも不可欠です。ヤマトサンショウウオは里山や田んぼといった人の暮らしと密接に関わる環境に生きており、人間の営みの中で育まれてきた生態系の象徴ともいえる存在です。金尾さん「生息域内と生息域外でそれぞれやるべきことをちゃんと意識して、いろんな専門家や、動物園、水族館が共同してやっていくっていう必要があると思ってます」山椒の匂いってするの?竹地はサンショウウオの名前の由来が気になったようです。竹地「山椒の匂いするんですか?」金尾さんによると、オオサンショウウオが敵に襲われた際に皮膚から出した白い粘液が酸っぱい刺激臭のため、山椒に例えられ、水の中で生息するため「サンショウウオ」と呼ばれるようになった一説があるとのこと。実際に金尾さんも調査や飼育で携わった際に、サンショウウオからつんと鼻につくような臭いの粘液が出てくるそうです。竹地「ただ、ヤマトサンショウウオはそういう匂いはしないという」金尾「小型サンショウウオでそういう匂いが出るっていうことはちょっと私もないですし。ヤマトサンショウウオ匂ったことあるんですけど、普通になんか両生類の匂いだなっていう匂い(笑)」竹地「両生類の匂い(笑)」琵琶湖博物館ではヤマトサンショウウオの成体に加え、幼生が成長して上陸するまでの過程も6月28日まで公開されています。生き物は人間の暮らしに初の成功となったヤマトサンショウウオの繁殖。金尾さんは「生き物は人々の暮らしの周りにいることが多い」と話します。金尾さん「里山や、その里山のもとにある田んぼを利用していて、私たちの、人間の暮らしの営みの中で育まれてきた生態系で生きている生き物です。そういうところを保全していくことを、博物館で伝えていけたらと思っています」今回の繁殖成功は一つの成果であると同時に、これからの保全活動の出発点でもあります。博物館でただ生き物を観察するだけでなく、研究員らの解説などを読むことで、将来の生態系を守る一助になるのかもしれません。(ランチョンマット先輩)