待ちに待った日が梅雨明けと共に訪れた。中日ドラゴンズ2年目、根尾昂選手が1軍に合流。開幕直後から低迷し続けるペナントレースに悶々とした日々を送っている竜党の期待は、真夏の気温上昇を上回る勢いでヒートアップした。根尾昂という野球人の姿記憶を1年半前の2019年春に戻す。与田剛監督1年目シーズン直前のナゴヤドーム、ライトスタンド側3階にある「ドラゴンズワールド」では、新入団選手に関する展示が行われていた。ドラフト1位ルーキー根尾昂選手は、小学生時代に所属していた球団公式チーム「ドラゴンズジュニア」で使っていたグラブとユニホームを披露、合わせて自己紹介アンケートも掲示されていたのだが、その内容がとても印象に残った。「ドラフトで名前を呼ばれた時の心境は?」→「ほっとした」「目標とする選手は誰?」→「特になし」「初めての給料は何に使う?」→「貯金」「好きな芸能人・有名人は?」→「イチロー選手」「座右の銘・好きな言葉は?」→「継続は力なり」直筆のしっかりした文字からは“根尾昂”という野球人の真摯な姿がストレートに伝わってくる。そして「3年後の自分の姿は?」と問う質問に対しては、こう回答していた。「レギュラー」。1番ライトでの先発スタメンその「レギュラー」への一歩、根尾選手は1軍登録された8月4日、横浜スタジアムでの横浜DeNAベイスターズ戦で「1番ライト」で先発スタメンとして登場した。昨季はシーズン最後の2試合のみ、それも代打での出場だったので、本格的デビューである。そして今回のそれは、話題性ではなく、自らの実力で勝ち取ったものだった。今季はウエスタンリーグ22試合で打率.282、特に最近6試合は毎試合ヒットを打ち、打率が.435、1試合2ホームランという鮮やかな活躍もあった。リーグ最下位の打線に新風を入れるための堂々の昇格、先発出場も納得できることだった。甲子園での忘れえぬホームラン第1打席の空振り三振から始まった3打席はいずれも凡退、しかし9つのストライクの内8球に対し、思い切りバットを振った。そのフルスイングに、2018年夏の甲子園決勝で、金足農業高校のエース吉田輝星投手(現・北海道日本ハムファイターズ)からバックスクリーンに打ち込んだホームランの残像を重ね合わせたファンも多いだろう。根尾選手は横浜での3連戦にいずれも先発出場、未だプロ初安打こそ出ていないが、外野守備で自慢の強肩を披露するなど、確かな輝きを放っている。原ジャイアンツを驚かせてやろう!ドラフト会議では、讀賣ジャイアンツの原辰徳監督も「根尾昂」を1位指名した。北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督も1位指名した。そして東京ヤクルトスワローズも・・・。4球団競合の末にドラゴンズが獲得した甲子園のスター選手も、実は本拠地ナゴヤドームではお目見えしていない。真夏のジャイアンツ戦が、おそらく地元での1軍デビューとなる。長きにわたって“全国区のスーパースター”を擁していないドラゴンズファンにとっては、待ちに待った背番号「7」お披露目である。昨季まで7年連続Bクラスの上、期待が高かった今季もなかなか上昇できないドラゴンズ。フルスイングでプロ初安打を記録したゲームの後半、「ピッチャー根尾」という場内アナウンスがあり、外野ポジションからマウンドに走る根尾。巨人ベンチで目をより一層見開いて驚く原監督。一足先に阪神タイガース相手に「野手リリーフ」起用を見せた首位チームの指揮官に“竜の二刀流”を見せつけてやってほしい。そんな“真夏の夜の夢”まで見たいと思うほどに、今のドラゴンズファンは多かれ少なかれ、それぞれの“応援心”に傷を負っている。相変わらずチャンスに弱く低迷する打線。続出するけが人とベンチを被う嫌なムード。根尾のプロ初安打でそんな空気を吹き飛ばしてほしいと願う。ナゴヤドームに展示された自己紹介アンケートには、こんな一問一答もあった。「プロ野球選手になっての心境は?」根尾選手はこう答えていた。「誰にも負けない」ドラゴンズをがらりと変革してくれる選手がいるとするならば、それは根尾昂であると信じている。まずは記念すべきプロ初安打をナゴヤドームで。頼むぞ根尾昂!【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。