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建築業のM&Aは他業種よりハードルが高い?「経営管理責任者」の問題

建築業のM&Aは他業種よりハードルが高い?「経営管理責任者」の問題

昨今、少子高齢化により中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題の一つとなっています。「人生100年時代」と言われているこの時代だからこそ、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性が高まっているのです。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。7月9日の放送では、建築業の事業継承について北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ株式会社 経営承継支援 植田駿一郎さんに伺いました。

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高齢化でM&Aを検討

今回は、北陸地方で建設業をされていた会社の事例について。

北野「どんな会社さんだったんですか?」

植田「年間売上は2億円ほどで、従業員さんは10名弱。公共工事を中心に受注しており、経営も安定していました。」

経営も安定しているのに、M&Aに至った理由は何だったのでしょうか?

植田「創業社長さんが70歳を迎え、後継者不在を理由にM&Aを検討されました。社長さんが高齢になるにつれて、同時に従業員も高齢化。平均年齢は55歳オーバーになっていました」

建設業はどこも人手不足と高齢化で厳しい状況です。
買い手として、地元の同業者で規模も同じくらい、過去に取引をされたこともある会社が浮上。買い手候補の社長さんはまだ若く、一緒にやっていけるパートナーを探していました。これですんなり決まるかと思いきや、そう簡単には進まなかったのです。

「経営管理責任者」がネックに

M&Aにとってネックがふたつありました。まず売り手社長さんが最初に提示した希望のハードルが高いことです。

植田「地元の同業・知っている会社・取引がある会社はNGだったんです」

北野「えー!ということは、すぐ買い手は見つからなかった?」

1年活動しても、売り手側の社長さんの希望3つを叶える買い手企業は現れませんでした。建設業は特に地元独特のネットワークも強いため、他エリアからの参入はハードルが高く、地域ならではのルールやお付き合い、関係性もあるようです。

もうひとつのネックが「経営管理責任者」の問題でした。

北野「植田さん、経営管理責任者というのは?」

植田「経営管理責任者とは、建設業を営む上で必要な要件で、常勤する役員が務める必要があります」

経営管理責任者は他の会社との兼務ができません。
そのため引退予定の売り手社長が経営管理責任者の場合、買い手企業から経営管理責任者を派遣するか、新たに雇う必要があります。

また、他の都道府県の買い手企業だった場合、経営管理責任者の派遣はとてもハードルが高いのです。

生き残りのために大切なこと

北野「建設業のM&Aにおいて、経営管理責任者は重要ですね」

植田「今回の売り手社長さんに会社を残すためには、地元の同業や取引先にも声をかけていく必要性を説明し、なんとか理解をしてもらい、今回の買い手企業さんが見つかりました」

買い手企業は売り手企業と過去に取引があり、安心して取引を進めることができました。
M&A後は従業員の退職もなく、現在は2社で協力してこれまで受注できなかったような仕事もできているようです。

今回のポイントは、経営管理責任者の問題。
建設業界は非常に厳しい経営環境にあり、人材不足や従業員の高齢化、建設資材の高騰が続いています。生き残っていくためには、今回のように地元企業同士で協力体制を組んでいくことが大切です。

植田「勿論、近い関係性なのでいろんな噂が耳に入る事もあると思いますが、業界のことや地域経済のことを考えると、地元の企業同士で協力していくことは非常に意義のあることだと思います。建設業の皆さんの中に事業承継をお考えであれば、経営管理責任者の問題は必ず着手しておいてください」

建設業をしていて、「将来のことで悩んでいる」「M&Aを検討したい」という方は、一度相談をと呼びかけた北野でした。
(葉月智世)
 

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