実は問題あり?オーバーツーリズム対策のための宿泊税導入

政府が観光立国を目標に掲げ、2030年には6千万人のインバウンド、訪日外国人客を招くことを目指していると日本経済新聞が報じています。一方で、すでに外国人観光客による混雑渋滞や地価高騰、騒音や治安の悪化といったオーバーツーリズム、観光公害の問題が各地で発生。その対策のひとつとして、地方自治体が宿泊税の導入をすることがブームとなっていますが、この宿泊税導入、どうやらデメリットもあるようです。5月10日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では宿泊税導入の問題点について、神奈川大学経営学部国際経営学科教授、青木宗明先生が解説しました。聞き手はパーソナリティの北野誠と加藤由香アナウンサーです。
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宿泊税は基本的にホテルや旅館、民泊で泊まった場合にかかる税金で、2002年に東京都が制定したのが最初。ここ5年ほどで10数団体で導入されています。
青木先生によれば、今後さらに12~13団体ほどで予定されていて、さらに希望している団体はかなりの数にのぼるそうです。
当初は財政難への対策としてさまざまな手法で財政を確保したいという思いから宿泊税に目をつけたよう。
それが最近は「インバウンドで宿泊する人が増えているなら、東京都をまねてウチもやろう!観光客から税金を取るなら、住民からも批判はされにくい」という考えでブームのようになっていった、ブームに乗り遅れると損をするという考えが広まったと青木先生は推測します。
宿泊税の問題点
そのようにして集められた宿泊税は何に使われているのでしょうか?
宿泊税は観光の目的税であるため、実は観光振興や観光整備事業にしか使えません。
利用例で多いのは無料Wi-Fiの実施や案内板の設置ですが、これはオーバーツーリズムの解消にはつながりません。
また、よくわからないPRやイベントなどに使われたり、逆に無理やり観光と結びつけて予算をつけることで、無駄遣いにつながるケースもあります。
青木先生が宿泊税の一番の問題点として挙げたのは、税金を取られる宿泊者が、必ずしも観光客ではない点。
特に東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市ではビジネスの出張による宿泊も多く、観光と関係のない人にとっては、納得がいかない課税となります。
他にも、北海道のような広い自治体では、例えば釧路に住んでいる人が札幌に大きな病院で通院するために宿泊するケースでも、観光目的の税金を取られてしまいます。
観光客から徴収すること自体は妥当
よく宿泊税が記事になる場合は「インバウンド対策に宿泊税導入」という見出しがつきますが、青木先生は「インバウンドを口実に、というのが実態ではないか」と指摘します。
では、本当にインバウンド対策のために財源を確保するにはどうすれば良いのでしょうか?
青木先生は「外国人観光客から税金を取ること自体は正当」であり、そのためには「原因者課税を導入すべき」と語ります。
この考えは長期間バカンスで休みを取る習慣のあるヨーロッパでは古くから取り入れられています。
導入を急ぐ自治体が多い中、青木先生はあらためて「少しここは冷静になって、バスに乗り遅れるとか言わないで、正しい課税根拠で税金を広めていただきたい」とまとめました。
(岡本)
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