相続人が21人も?不十分な財産分与に苦労した話

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。5月7日の放送では、相続対策が不十分のため苦労したケースについてを北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ株式会社 名古屋営業部 財務コンサルタント山﨑 徹治さんに伺いました。
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今回山崎さんが紹介したのは、相続の対策が不十分だったために苦労した事例。
山崎「親御様やお子様がいらっしゃらないご夫婦のご主人に相続が発生した場合、相続人は誰になるでしょうか?」
なお、この夫婦の両親は他界されています。
北野「こどもも親もいない場合は…奥さまと、ご主人の兄弟姉妹が相続人になるのかな」
山崎「ではご主人が亡くなってすぐ、遺産分割がまとまらない間に奥さまもお亡くなりになった場合は、それぞれ誰が相続人になるでしょうか?」
北野「誰ですか?僕は寄付してもらってもいいんですけど」
ややこしくなってきたと困惑する北野に対し、「非常にややこしいんです」と続ける山崎さん。
21人の相続人が生まれた理由
今回の事例を整理すると、まず後に亡くなった妻の相続人は、夫が既にいないために妻の兄弟姉妹で確定します。
山崎「問題は、先に亡くなったご主人様の場合」
夫の兄弟姉妹と妻の兄弟姉妹が相続人、正しくは相続する権利がある人です。
夫が亡くなった時点では妻は健在なので「夫の財産を相続する権利」があります。この権利を妻の兄弟姉妹が相続していくことになります。
山崎「したがってご主人様の遺産分割協議書には、ご主人のきょうだいと、奥さまのきょうだい全員の署名と捺印が必要になります」
今回のケースでは、兄弟姉妹にも後に亡くなった方がいたそうです。
その場合、その家族も相続する権利があるので、夫婦それぞれの兄弟姉妹・甥姪の合計21人から署名と印鑑をもらう必要があったとのこと。
誰が欠けても不成立に
山崎「今回のケースは21人全員が協力的で、財産は金融資産が中心でしたので、奇跡的にトラブルもなく円滑に進めることができました」
不動産については、近くにいて最期まで面倒を見ていた姪が相続することでまとまりました。そして預貯金は21人が法定相続の割合で配分する方針で分割協議が整ったそう。
書類のやりとりは大変だったそうですが、無事に手続きを完了したとのことでひと安心、と振り返る山崎さん。
山崎「ただ、もし財産が不動産に偏っていたり、相続人の中に不満がある人がいたらと思うと、今でもぞっとします」
北野「しかし21人もの相続人と、よく居場所と連絡先がわかりましたね」
山崎「相続が発生した場合は、相続人同士は利害関係があるので、役所で戸籍をたどって、他の相続人の住所まではあたりをつけることができます」
実は、遺産分割協議は相続人が1人でも欠けると成立しません。
住所が判明しても、その場所から行方不明になっている場合もあるそうです。
今回のケースは相続人同士の連携もあったそうで「本当に幸運でした」と山崎さん。
遺言書は家族への最高のプレゼント
もし見つからない相続人がいたらどうするのでしょうか?
山崎「まずは相続人が住所を確認して、郵便や現地確認などで調査を尽くす必要があります」
それでも見つからない場合は、家庭裁判所で調査してもらうことになるとのことですが、大変な手続きと時間を費やすことになるそうです。
北野は、このコーナーで何度も取り上げた「遺言書」があれば、苦労せずに済んだのでは?と指摘。
山崎「そのとおりです。有効な遺言書があれば遺産分割協議書が要りませんので、21人の署名捺印や、印鑑証明書の提出をいただく必要はありませんでした」
今回は21人という極端な例でしたが、こどもがいる家族にとっては決して例外ではありません。
山崎「遺言書は揉めないために書くと思いがちですが、仲のいいご家族でも『遺産分割協議をしなくて済む』という愛する家族への最後のプレゼントになるんです」
家族への思いやりとしての遺言書。いま一度、相続を見直してみましょう。
(野村)
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