医学博士に尋ねてみた。「運動やサウナで花粉症が治った」は本当?

この時期花粉症に悩まされている人はたくさんいます。タレントの北野誠は今年から花粉症の仲間入り。「これから毎年、花粉症に苦しむのか」と憂鬱になります。ところが周囲では「花粉症が改善した」とか「治った」という話もよく聞くそうです。そもそも花粉症は治るのでしょうか?3月7日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』では、この疑問に心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が答えます。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く運動とサウナでアレルギー改善?
リスナーから寄せられた相談です。
「物心ついた頃から花粉症で、喘息を発症した18歳のときにスギやヒノキの花粉をはじめ、ハウスダストや動物などすべてのアレルゲンについて、6段階中5以上という最悪の結果でした。
ところが、8年前の春からあまり症状が出なくなりました。それどころかアレルギーからくる慢性鼻炎でしたが、最近は鼻の通りがよいことに気づきました。
思い当たったのが、前の年の秋からスポーツジムに通いだしたことです。
週5、6日はジムに行き、有酸素運動で汗をかいたあと、ジムのサウナでまたしっかり汗をかくという生活を半年続けていたのですが、これがいい結果をもたらしたのではと思いました。
普段通う病院では『そんなことはない』と言われ、血液検査を受けると18歳のときと同じように、アレルギー体質はまったく改善していませんでした。今でもジムとサウナは同じペースで続けています。今シーズンも花粉症の症状はまったく出ていません。
運動やサウナの習慣はアレルギー症状の改善に効果はあるのでしょうか?」(56歳・男性)
サウナとアレルギーの関係
Aさんが言うように、サウナでアレルギーが改善できることはありえるのでしょうか?
吉生「アレルギーについてもいくつか研究論文が出ています。まずサウナでストレスが緩和されることでアレルギー症状がやわらぐ。鼻の空気の通り道がよくなって鼻詰まりを押さえる作用だったり。
あと、熱の刺激でヒートショックプロテインというたんぱく質が合成されて、それでアレルギーの症状が起きにくくなる可能性も指摘されています。
ただ、論文に出ているデータを見ると、花粉症に対する効果の大きさは、これが治療の手段だと言えるほどではないですが、改善の方向に働く可能性は十分あります。サウナが好きな人だったら積極的に利用したらいいです」
運動が症状を抑える?
運動の効果についてはどうでしょうか?
吉田「サウナ以上にたくさん研究論文が出ています。まず、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を続けると、体内でインターフェロンガンマという成分の分泌が増えます。
また運動の刺激で、インターロイキンテンという成分が増える。こういったいろいろな効果が重なってアレルギーの症状を抑えてくれます。
ただ、屋外で運動すると花粉を浴びますし、室内でも花粉が床に落ちているときに運動して、花粉を舞い上げて症状を悪化することはよくあることなので、環境に注意して運動していただきたいです」
あくまで症状は軽くなる可能性があるけれど、治るわけではないという程度に考えるのがよさそうです。
花粉症は勝手に治るか
この番組で火曜アシスタントを務める佐藤実絵子のお母さんが、歳をとるごとに花粉症の症状が治まってきたと話しているそうです。これはあり得ることでしょうか?
吉田「花粉症が勝手に治るのは珍しいことではないです。原因はいろいろありますが、多いのは『免疫寛容』という現象です。
免疫系が花粉を有害だとみなしてIGE抗体を作りだすことで炎症が起きますが、何年も何年も花粉に曝露されているうちに、だんだん免疫系がこれは無害だとみなすようになって、症状が出なくなる。
こういう現象を免疫系がアレルギー源に寛容になるということで『免疫寛容』と言います。
もうひとつ、中高年になるとIGE抗体を作る能力自体も老化するし、マスト細胞の数も老化で減ってくる結果、花粉症の症状が出なくなることもあって、これを医学では『免疫老化』と呼んでいます。
不思議なことに、はしかとか風疹のウイルスに感染すると、花粉症を起こす免疫の記憶がリセットされることがあってそれで治る。
最近だと新型コロナに感染して花粉症や喘息が改善する例も見つかっています。
ただ、これはごく一部の人なので、花粉症を治すためにコロナに感染しようなんて決して思わないでください」
決して治っているわけではない
相談者のAさんは、検査数値は変わってないとのことですが。
吉田「免疫寛容も免疫老化も検査数値自体が改善してくるので、ご相談者にはこの可能性はない。
またウイルス感染の場合は、しばらく検査数値がそのままで、花粉症だけ治るという時期がありますが、8年間も続くということはないので、この可能性も考えにくいです。
だから、ご紹介したサウナ、運動の効果で症状が出にくくなっている可能性は高いと思います。
この場合は一時的に症状が出にくくなっているので、運動やサウナをやめたら、また元に戻る可能性は高いです」
アレルギー対策になる食べ物
花粉症に対する食事療法についてアドバイスする吉田先生。
吉田「アレルギーを押さえる栄養素が次々解明されています。治療手段というほどではないですが、効果はあります。
ドイツの論文で『EPA(エイコサペンタエン酸)を取っていると花粉症にいい』というデータがあります。この成分をたくさん含むサバとか鰯などの青魚を多めにとってください」
またヨーグルトなどの発酵食品も効果が大きいとか。
吉田「どうしてかというと、腸内環境とアレルギーは連動していて、腸内環境をよくすれば自動的にアレルギー症状も収まってくる、ということが最近わかってきています。
おすすめは、食後にヨーグルトを食べるということで、そうすると腸まで届きます。あと野菜とかくだもののポリフェノール、あとはちみつも花粉症に効果があるという研究論文も出ています。
結局、健康によさそうなものは、アレルギーにも効果がある傾向があります」
(みず)
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