米国の黄金時代か、国際協調の終焉か。トランプ政権の78兆円AI覇権計画
トランプ大統領は21日、ソフトバンクグループと米OpenAIなどが、5,000億ドル(約78兆円)を投資して、人工知能(AI)関連のインフラ整備に投資する計画を発表しました。AI規制をかけたバイデン前政権から政策を転換して、民間企業と一体となって技術覇権を目指していくということです。1月23日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、パーソナリティの永岡歩アナウンサーとCBC論説室の石塚元章特別解説委員が、このニュースについて解説しました。
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ソフトバンクグループの孫正義会長は当初、トランプ氏の大統領選勝利を祝福する形で1,000億ドル(約15兆6,000億円)の投資を約束していましたが、トランプ大統領は「2,000億ドルに増額してほしい」と要請していました。
孫氏は会見の場で「アメリカの黄金時代到来と聞きつけましたので、今日は5,000億ドルを持ってきました」と語りました。
この巨額投資を実現するため、ソフトバンクグループ、OpenAI、オラクルの3社は共同出資会社「スターゲイト」を設立。AIの演算処理に必要な大規模データセンターの建設を中心に、米国内のAIインフラ整備を進めていく方針です。
この事業により、数十万人規模の新規雇用創出も見込まれています。
加速するAI革新
AIの技術革新は既に様々な分野で成果を上げています。
2024年には、タンパク質の構造を予測するAIを開発したGoogleのAI開発部門の研究者が「ノーベル化学賞」を受賞。このような技術は、病気の原因解明や新たな治療法の発見にも道を開くと期待されています。
世界のAI関連投資は今後急速に拡大する見通しです。
アメリカの調査会社によると、2024年から2028年までの5年間で累計1兆ドル(約155兆円)に達し、2029年には1年で1兆ドルを超える規模になると予測されています。
データセンターの電力需要も膨大なものとなるため、発電会社のソフトバンクエナジーグローバルを通じたAIデータセンター向けの発電施設の拡充も見込まれています。
浮かび上がる環境への懸念
一方で、大規模な電力消費は地球温暖化対策との両立という新たな課題があります。
トランプ大統領は既にパリ協定からの離脱を表明しており、環境よりも開発を重視する姿勢が鮮明です。
AIの発展にはマイナスの側面も指摘されており、偽情報の拡散やサイバー攻撃への悪用など、様々なリスクも指摘されています。
そのため、バイデン政権やEUはAIに対して一定の規制を設けていましたが、トランプ氏はバイデン政権下で導入されたAI規制に関する大統領令の撤回を表明しています。
中国も生成AI規制を導入し、「国家安全を重視し、自国で当局の許可を得た国産AIのみ使用可能」といった制限を設けています。
アメリカ優先主義と国際リスク
トランプ大統領の「Made in USA」政策は、アメリカ国内の生産や雇用を重視し、輸入品に高い関税を課すことで国内産業を振興し、「最強の国」を目指すものです。
しかし、バイデン政権下で導入された規制を撤廃し、「産業振興」や「アメリカがすごい!」という主張だけで進める姿勢には疑問が残ります。
米シンクタンク「ユーラシア・グループ」のイアン・ブレマー氏は、2025年の世界的リスクのトップに「G0」を挙げました。これは、国際協調の枠組みが機能しなくなる状態を指します。
これまではG7やG20など、複数の国が集まって決めていた仕組みが、自国優先主義の広がりで崩れつつある。その筆頭がトランプ大統領というわけです。
「強力なリーダーシップは感じるけど、独裁者的なものも感じてしまう。地球は一応、みんなで住んでんだけどな…」と永岡は締めくくりました。
(minto)