日本バレエ界の雄・熊川哲也、舞台製作で必要なのは「開き直り」?
8月18日、Kバレエ トーキョー芸術監督、熊川哲也さんが、CBCラジオ『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』に出演しました。9月8日に東京文化会館から上演される最新作『マーメイド』の話題の他、体幹の作り方も語る熊川さん。聞き手は小堀勝啓です。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くおかげさまで25年
小堀「いい男感がますます満載になってきました」
熊川「よく言われますね(笑)」
熊川さんは1998年、約10年間在籍した英国ロイヤル・バレエ団を退団。1999年、日本で唯一の株式会社が運営するバレエカンパニー、Kバレエ カンパニーを設立しました。
小堀「Kバレエ カンパニーから去年、KーBALLET TOKYO(Kバレエ トーキョー)になりました」
熊川「おかげさまで25年経ちました」
自身の活動と若い世代の指導の両輪で運営してきたそうです。
熊川「25年前に英国の組織から出て、自分の組織を作って、いい出会いもあって、素晴らしい25年だったと思います」
まるでハリウッド映画
熊川さんの舞台について「ハリウッド映画の大スペクタクルを舞台で見せられているよう」と表現する小堀。
小堀「これを舞台で生でやるのは大変だろうと毎回びっくりするんです。『クレオパトラ』の時も壮大な世界にびっくりしました」
『クレオパトラ』は2018年、2022年に上演されました。
9月から10月にかけて4都市で上演される最新作『マーメイド』は、誰もが知る人魚姫の話。
今回は一体どう表現するのでしょうか?
熊川「皆さんから期待のお声が程よいプレッシャーにもなり、程よい開き直りにもなり、試行錯誤して作品的には完成しました」
熊川マジックの秘密
毎回舞台を作る前に、一度壁にぶつかるという熊川さん。
今回の『マーメード』を例にすると「人魚の脚をどうする?」「舞台で浮遊できるの?」といった課題です。
熊川「そこからが僕の長所なんですけど、開き直るんです」
「人魚に脚があって踊っていいのか?」という命題に開き直った結果、「脚はあります!」と断言する熊川さん。
熊川「観る側が思考線上に何かを求めていくっていうのがクラシックなんです。そこは皆さんの教育っていうところも含めて、開き直ろうかなと思います」
小堀「そこが熊川マジック!舞台を観るって、半分頭の中で作ってる部分がありますもんね」
熊川「アートを観るっていうのは、本来そうあるべきですよね」
三島でありピカソである
アートとは「答えのあるものをただ観るのではなく、観る側も、作者の精神に近づくべく、自分の想像力や感性を最大限に伸ばしたところにあるもの」と定義する熊川さん。
熊川「そういうものが、この世の中にもっと満ち溢れてなきゃいけないって僕は思っています」
「スマホですぐ検索できるリアルではなく、アートのリアルは別のところに求めるべき」と続けます。
小堀「観終わった後に、俺の感性が呼び覚まされたぞっていう感じがあるんですよね」
熊川「なんでマジカルに見えるのか?ずる賢いからなんです」
「逆転の発想をした時に隙間に革命が起こる」と三島由紀夫的な表現で解説し、さらに「見えていない部分を表面化することでサプライズが起こる」と今度は絵画のキュビズム、ピカソで例えました。
小堀「アジの開きじゃないけど、開いてこっち側も見せちゃうとさらに美味しく見えるみたいな」
原作にないキャラが登場
最新作『マーメイド』について具体的に聞きます。
熊川「ここだけの話、告白させていただくと、オリジナルの本は読んでません」
アンデルセンの『人魚姫』は未読。当然ディズニーも見ていないそうです。
熊川さんが聞いた話から膨らませたストーリーが今回の『マーメイド』。言ってみれば『熊川哲也版人魚姫』。
そのため原作には登場しないキャラクターも多数出てくるそうです。
例えば王子が航海に出るきっかけとなるクジラ。海に嵐を巻き起こすサメなど。
熊川「いま円安気味でハワイ行けないんで、ハワイから素敵なクジラを連れてきます(笑)」
ゲストはクジラ?一体どんな舞台になるのでしょうか?
小堀「バレエを1回も見たことのない人に観てもらいたいですね」
熊川「観てもらって納得してもらうのが僕の力量ですからね。それを25年やり続けてるんで、いい作品にはなると思います」
『マーメイド』について「大人だけでなく、こどもたちも虜にしたい」と抱負を語る熊川さん、「将来バレリーナになりたいと思って欲しい」との願いを込めているそうです。
バレエを趣味にしませんか?
最後に小堀が尋ねたのは、きれいな体幹を維持する秘訣。
熊川「体幹はとにかく左右平等でなきゃいけないんです。鏡を見て、肩の位置をずらさずに、毎日10回スクワット。それだけでも体幹は変わりますよ」
小堀「今日からやるお父さんが出てくるかもしれない(笑)」
熊川さんはKバレエ・メンズ・クラスというメンズ・バレエ・クラスを始めたそうです。これが結構需要があり、お父さんやおじいちゃんが楽しんで参加しているとか。
熊川「『クラシックバレエが趣味なんです』って言ったらかっこいいですよ」
小堀「心が動きました!」
最後は大人の男性も虜にする話でインタビューはお開きとなりました。
(尾関)