「裁判員制度」開始から15年。候補者の辞退が認められるのはどんな時?
「裁判員制度」が今月21日で15年を迎えました。最高裁判所によると、今年2月末までに裁判員と補充裁判員を務めた人は、およそ12万4000人に達しました。一方で、これまで選ばれた候補者のうち、辞退した人の割合は64%ほどに上っています。5月23日放送の『CBCラジオ #プラス!』、「ニュースにプラス」のコーナーでは、この「裁判員制度」について、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に伺いました。
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「裁判員制度」とは、重大な事件の刑事裁判に国民から選ばれた方が裁判員として参加する制度のこと。
「国民の一般的な感覚を裁判に反映させよう。それによって納得が得られる裁判を実現しよう」ということで導入された制度です。
裁判員は刑事裁判に出席し、証拠を見て、証人や被告人の話を聞き、必要であれば質問をして、裁判官と対等に議論をして、その被告人が有罪なのか無罪なのか、有罪であればどんな刑がふさわしいのかを決めます。
例えば殺人事件であれば、遺体の写真を見ることもあり得るというわけです。
候補者選びは「くじ」で
裁判員の対象者は選挙権がある18歳以上の方。
裁判所は「裁判員の候補者の名簿」を毎年作り、「あなた来年選ばれるかもしれませんよ」という通知を送ります。
通知を送られた人は「辞退の希望があるか」「どうしても行けない月があるか」「司法関係者など裁判員になれない仕事についているか」を尋ねる調査票に回答する必要があります。
裁判員の対象事件が発生すると、この名簿の中から無作為にくじで候補者を選出。
「選任手続きが〇日に行われます」という通知と共に、「期日に行くことができるか」「辞退する理由があるか」の質問票が同封されています。
国民の関心が高い重大事件
辞退が認められない場合は指定の期日に裁判所に出向き、裁判員を選ぶ手続きを行います。
ここでもさらに辞退したい場合は、その理由が認められるかを裁判所が判断することになります。
辞退が認められた人以外の候補者の中から、さらにくじで無作為に裁判員6名と補充裁判員を選任する手続きが取られます。
裁判員は裁判ごとに選出されますが、その裁判は国民の関心が高く、法定刑が重い重大な事件に限られます。
例えば「殺人」「強盗致死」や「強盗致傷」「傷害致死」「危険運転致死」「現住建造等放火」「保護責任者遺棄致死」「営利目的の密輸入」など。
極悪殺人犯と目が合う?
永岡歩アナ「極悪殺人犯と目が合っちゃうわけですか?裁判所で」
正木弁護士「合います。裁判員は、被告人の正面にある高い台に座るので、その表情も含めて判断することになるので、基本的に姿、形、話しているところ全て見ます」
「逆恨みされそうで怖い」と感じて、裁判員に選ばれたくないと思ってしまう方も当然いるそうです。
裁判員裁判は、地方裁判所の刑事事件のみが対象です。
辞退率は64%
原則として「法律に定められた理由がない限り、辞退は認められない」とされていますが、実際は64%が辞退しています。
辞退の理由は法令でかなり厳しく限定されていて、「70歳以上」「学生」「過去に裁判員を経験した」「やむを得ない理由で行けない」という方しか認められません。
「やりたくない」「仕事が忙しい」という理由では、直ちに認められるものではありませんが、64%の辞退が認められているという現状は、ポジティブに考えれば国民にとって負担が大きすぎることがしっかりと配慮されているということになります。
一方、裁判員制度が始まってから「審理の日数」や「評議の時間」が長期化し、裁判員への負担が増えています。これがネガティブな辞退率の一因ともいわれているそうです。
裁判員は、いろいろな経験や感覚を持つさまざまな年代の方が参加することが制度上とても重要。辞退率を下げることが重要な課題であることが見えてきます。
辞退が認められる理由
辞退が認められた事例で多いのは、70歳以上の方、学生、病気の方。中には、仕事をどうしてもほかの方に変えられないという方も。
最高裁がまとめた事例集によると、「卒入学シーズンの美容師」「子どもが受験直前の主婦」「株主総会で忙しい時期の経営者」「かき入れ時期のコンビニの店員」「大会参加予定のアマチュアスポーツ選手」「オーディションがあるテレビ出演者」など幅広い事例があります。
自身の状況を詳しく説明することで、辞退が認められるケースは比較的多いようです。
裁判員経験者のポジティブな意見
裁判員へのアンケートでは「責任が重い」「人の人生を決めることへの不安や負担が大きい」など、選ばれる前は消極的だったという方が多いものの、「貴重な経験で関心もあった」という方も3割程度はいるそうです。
一方、終わった後の感想では「非常に良い経験と感じた」方が全体の96.5%で、ポジティブに捉える方が多いといえます。
「法律に詳しくないから不安」という方も多いそうですが、実際は知識がなくても困ることはなく、話し合いも普通に話せたという方が97%。
実際はそんなに不安に思わなくてもよいということのようです。
拒否感をなくすために必要なこと
課題は「辞退率」や「制度に対する拒否感」の軽減。
正木弁護士「『裁判員は知ってるけど、何をするのかわからない』という方が多いので、具体的なイメージができるように経験者の方の意見が広がるのが一番いいと思います」
一方で裁判員には守秘義務があるため、評議に関する情報は話すことができません。
正木弁護士「守秘義務の範囲をもうちょっと解除して、個人が特定できない範囲であればある程度広めて、国民の方に『こういうものだよ』とイメージできるようにすることがすごく大切だと思いますね」
メディアでは裁判直後の裁判員の方の「重い決断でした…」という声が流れることが多いため、どうしても不安が先行してしまうのが現状です。
正木弁護士「『実はそうでもない』と感じてる方もいるということを知ってほしいなと思います」
(minto)