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まさに“自転車天国”!ヨーロッパの取り組みから日本が学ぶべきこととは?

まさに“自転車天国”!ヨーロッパの取り組みから日本が学ぶべきこととは?
「レンタサイクル大人気(パリ)」:筆者撮影

自転車の交通違反に対する反則金が、2026年(令和8年)4月から始まる。悪質な違反の取り締まりや事故防止が目的だが、新ルールの発表の直後に筆者が訪れたヨーロッパでは、ますます“自転車天国”が進んでいた。

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自転車にご用心!

「自転車専用レーン(ウィーン)」:筆者撮影

「自転車にはくれぐれも気をつけて」。オーストリアのウィーン・シュヴェヒャート国際空港から市の中心部に向かうタクシー運転手の言葉に驚いた。「クルマに気をつけて」ではない「自転車に気をつけて」なのだ。ほぼ30年ぶりに訪れたウィーンには、街に自転車があふれていた。いたるところに自転車が駐輪され、自転車専用レーンが以前よりもさらに整備されていた。そのレーンを次々と猛スピードで走り抜ける自転車。ベルを鳴らされ、思わずよける経験もした。ドライバーからの注意は“正解”だった。

ウィーン自転車教習所

「古都ウィーン中心部」:筆者撮影

オーストリアには古くから「自転車教習所」がある。かつて現地で取材した。教習所は国の法律に基づいて、自治体と警察が運営している。12歳までの子どもが自転車に乗るためには、この教習所に通って、教習を受けることが義務づけられている。教習は、交通ルールなどの講義と、実際にコースを使った実習に分かれていて、両方の試験を通ると「路上で自転車に乗っていい」という証明書が発行される。それによって、いよいよ“自転車デビュー”となるのだ。ヨーロッパの人々が自転車と歩んできた歴史はとても長い。

自転車利用を2倍に増やす

「いたるところに自転車(ウィーン)」:筆者撮影

オーストリアだけではない。スイスのジュネーブでも、フランスのパリでも、街ではとにかく自転車が多かった。ヨーロッパはもともと気候変動問題や環境問題に取り組んできて、エコロジー推進のため自転車が重宝されてきた。さらに2021年(令和3年)に、サイクリングを推進する「マスタープラン」が策定されて、EUに加盟するすべての国に加え、それ以外のヨーロッパ各国も参加している。2030年に向けて、自転車の利用を2倍にすることをめざす。パリでは、スマホ決済で自由に借りることができるレンタサイクル施設が、街のあちらこちらに設けられていた。とても便利だ。

日本の新たな自転車ルール

ひるがえって日本である。警察庁がまとめた改正道路交通法案によると、最も重い罰則は、スマートフォンや携帯電話を手に持ちながら自転車に乗る「ながら運転」で、反則金は1万2,000円となる。信号無視や歩道通行などは6,000円、2人乗りは3,000円など、反則切符の内容が定められた。飲酒しての自転車運転など刑事罰の対象もある。

自転車とニッポンの向き合い

こうした反則金のスタートまで、およそ1年かけて「運用指針を定め」そして「周知を図りたい」と言うのだが、スマホを持ちながらの運転が危険なことは、しごく当然のことである。「1年」という準備期間が、正直まどろっこしい。ヨーロッパのように、自転車利用を推進するために、目標となるマスタープランを作ったり、安全のために教習所まで設けてルールを徹底したりするわけでもない。都心部の駐輪場施設も十分ではない。一体、日本という国は、自転車の利用拡大を促進したいのか、そうではないのか、サイクリングとどう向き合うのか、根本となる立脚点が実は曖昧なのではないかと思う。

総合的な対策こそ

警察庁によると、自転車による交通違反数は、この10年間で4倍以上に増えた。もちろん事故自体も減っていない。罰則を厳しくすることだけではなく、自転車専用レーンの整備などのハード面、さらに安全教育の徹底などのソフト面、こうした総合的な対策があってこそ「自転車」というツールを、人間が有効に使いこなせるのではないだろうか。

自転車は19世紀にヨーロッパで生まれた。日本には、江戸時代の末期に持ち込まれ、明治時代になって“移動手段”として広がっていった。その歴史に立ち返れば、新たな「マスタープラン」を進めているヨーロッパから、あらためて自転車とのつき合い方を学んでもいいのかもしれない。         

【東西南北論説風(592)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

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