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長寿県・沖縄に異変が起きている?その“食文化”と平均寿命の歴史

長寿県・沖縄に異変が起きている?その“食文化”と平均寿命の歴史
CBCテレビ:画像『写真AC』より「沖縄」

沖縄の“食”を支える名物市場が、新たなスタートを切った。那覇市の中心部にある「第一牧志公設市場」である。老朽化による建て替えのため、2019年(令和元年)6月から近くの仮設市場で営業していたが、2023年3月にリニューアルオープンした。この間には、沖縄の観光産業を直撃した新型コロナ禍があり、工事完成の予定も1年ほど遅れた。そんな日々を乗り越えての船出となった。

新装オープンした那覇の公設市場

CBCテレビ:画像『写真AC』より「旧牧志公設市場」

牧志公設市場は、沖縄が本土に復帰した1972年(昭和47年)に始まった。以来、半世紀にわたって、地元沖縄の人たちの“食材どころ”として、また多くの観光客の“食堂”として愛されている市場である。建て替え前には、肉、魚、野菜、加工食品、そして飲食店など115の店が入居していたが、高齢化などもあって、今回84店舗に減った。建物はこれまでの2階建てから、新しく3階建てになり、調理の体験スペースも新設されるなど、ますます沖縄における「食べる」ことへの重要スポットとして歩んでいく。

「長寿県」沖縄が揺らぐ

そんな“沖縄の台所”が新たなスタートを切る一方で、気になる数字が発表された。厚生労働省が、2022年暮れに発表した「都道府県別の平均寿命」である。5年に1度の発表なのだが、沖縄県の平均寿命、男性が80.73歳で全国43位、ワースト5入り。女性が87.88歳で16位。16番目と言っても、5年前は7位だったから下落している。沖縄と言えば「長寿県」というイメージがあったのだが、昨今、そうではなくなっているようだ。

平均寿命が低下する理由

「那覇市の国際通り(2023年)」提供:CBCテレビ

沖縄県の平均寿命、男性は、本土復帰直後の1975年(昭和50年)10位だった。その10年後の1985年(昭和60年)には、堂々の1位。しかし、1995年に4位、2005年に25位と一気に落ちて、前回2015年は36位だった。そして今回、47都道府県中43位。一方の女性の場合、1975年から2005年まで、30年間、調査の度に1位。しかし、前回2015年に7位に落ちて、今回16位だった。沖縄県といえば「おじい」「おばあ」という呼び名で知られるように、とにかく元気で長生きである人が多い。それには、青い海と空、あふれる自然、ゆったりとした時間、健康的な食事、など沢山の理由が挙げられてきた。調査結果を詳しく見ると、実は「若い人ほど寿命が短い」ことが分かった。あと何年生きるかという平均余命は、75歳男性は全国2位、女性は1位。逆に、20歳と40歳では、男性は平均寿命と同じ43位、女性は15位。どうやら、沖縄県の場合、若い人が、全体の平均寿命を下げているようだ。

肥満の傾向が増えている

CBCテレビ:画像『写真AC』より「泡盛」

さらに2023年になって、もうひとつの調査結果が発表された。沖縄県が5年に一度実施する「県民の健康・栄養調査」である。20歳以上の肥満者の割合が、男性41.6%、女性24.8%と、それぞれ全国平均を上回っている。身長と体重から計算する体格指数(BMI)も、数値25以上の肥満者の割合が男性では特に高く、30代、40代、そして50代と、この三世代で5割を超えた。1日当たりの野菜の摂取量が、全国的に比べて悪いことも分かった。男女とも7割以上の人が、目標摂取量の350グラムに満たない。野菜を食べずに、肉が中心になっている。また、飲酒量も全国平均よりも多い。沖縄県の担当者は「アルコール疾患が全国に比べて高い」と分析している。どうやら、働き盛りの30代から50代の平均寿命が短いことと、こうした食生活は密接に関係しているようだ。

沖縄県がめざす「長寿県復活」

沖縄県では、21世紀のビジョン基本計画で、「2040年には男女とも平均寿命日本一に復帰する」という目標を掲げている。飲酒についても「節度ある適度な飲酒を」と呼びかけている。新型コロナ感染拡大によって、自宅で食事をすることが増えたと、沖縄県の知人から聞いた。沖縄はもともと「外食文化」、皆で集まって楽しく飲んで食べることが伝統だったが、3年にわたった新型コロナ禍は、そんな暮らしにも変化をもたらしたようだ。

「新装された牧志公設市場(2023年)」提供:CBCテレビ

公設市場は楽しい。そこには「食べる」という原点、そしてそのための食材があふれている。新装された「第一牧志公設市場」も、連日多くの客でにぎわっているが、沖縄を愛するひとりとしては、是非「長寿県・沖縄」という看板を取り戻してほしいと願っている。それが大きな魅力のひとつでもある。次の調査まで、5年の歳月を待たなければならないけれど、今回の公設市場の新たな一歩に、そんな思いを馳せている。                               

【東西南北論説風(418)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】 

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