胃のトラブル「胃がん」など深刻な病気も…胃もたれ・胃痛の原因と対策
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身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは、東京医科大学病院 内視鏡センター 主任教授 部長 医学博士 河合隆先生です。
今回のテーマは「〜おしゃべりな臓器の声を聞け!〜胃もたれ・胃痛の原因と対策」
年齢を重ねるにつれて、胃もたれが気になる人が増えるというデータがあります。胃は“おしゃべりな臓器”と言われるほど不調が表に出やすい臓器。胃もたれ・胃痛・膨満感など、胃のトラブルは多いですが、なかには胃がんなど深刻な病気が潜んでいる場合もあるので注意が必要だそうです。そこで今回は、胃もたれ・胃痛の原因と対策などを専門医に教えてもらいました。
胃の基礎知識
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<胃の主な役割>
胃の主な作用は消化。胃に食べ物が入ってくると、強い酸性の胃酸が分泌されます。筋肉を収縮させながら食べ物と胃酸を混ぜ合わせ、3〜6時間かけて消化し腸へと送るのだとか。また、消化以外にも食べ物と一緒に入ってくる細菌を胃酸で殺したり、熱い物や冷たい物がそのまま腸に行かないように温度調節をしたりする役割もあるそうです。
慢性胃炎の原因と対策
<慢性胃炎の原因>
慢性胃炎とは、慢性的に胃に炎症がある状態のこと。主な原因は、食べ過ぎ・飲み過ぎやピロリ菌。ピロリ菌とは、胃の表層を覆う粘膜の中に棲みつく菌でウレアーゼという酵素を作り出し、周囲の胃酸を弱めてしまいます。すると、消化能力が低下し、胃の負担を大きくしてしまうそうです。
<慢性胃炎を放っておくとどうなる?>
先生によると、慢性胃炎を放置すると胃粘膜が萎縮して薄くなる「萎縮性胃炎」につながる恐れがあるとのこと。そして、萎縮性胃炎が進行すると「胃がん」のリスクが高くなるそうです。
<食べ過ぎ・飲み過ぎ以外のNG行動>
胃の不調の原因の多くは、生活習慣にあるそうです。食べ過ぎ・飲み過ぎ以外に「噛む回数が少ない」場合は要注意。先生が推奨する咀嚼回数は15回。食べ物を小さく砕けば砕くほど胃に優しく、よく噛むことで唾液も出るので、胃の中で消化液や胃液と混じり消化吸収にも良いのだとか。また、適切な咀嚼回数で食べることによって、脳にある満腹中枢を刺激し食べ過ぎによる胃の負担も防げるそうです。
<胃の状態がわかる「ひよこマーク」>
ひよこマークとは、ひよこの足跡のように見える胃の毛細血管のこと。胃カメラで見ることができ、このマークが多ければ胃酸が正常に分泌されている証拠なのだとか。一方、ひよこマークが少なくなると、胃酸の分泌が十分ではないため消化が遅くなり、胃もたれが起きてしまうそうです。先生によると、ひよこマークは、食生活などの改善によって復活するとのこと。軽度の慢性胃炎の場合、早ければ6か月ほどで改善が見られるそうなので、不調を感じたらすぐに病院へ行きましょう。
逆流性食道炎を防ぐ対策
<逆流性食道炎とは?>
逆流性食道炎とは、ゲップや咳などがきっかけで胃酸が逆流し、それによって食道が炎症を起こしてしまう病気。放置して慢性化させてしまうと、食道がんのリスクが上昇してしまうそうです。
<逆流性食道炎を防ぐ寝方>
逆流性食道炎予防に大事なのは、寝る姿勢。胃の構造は、左側が膨らんでいます。そのため、左側を下にして寝ると、膨らみに胃液を溜めることができるので逆流が起きにくいそうです。一方、右側を下にすると膨らんだ部分に空気が溜まってゲップが出やすくなるので、胃液が逆流しやすくなるのだとか。寝返りは気にしなくても大丈夫ですが、左向きで寝ることが逆流性食道炎予防にはおすすめ。また、仰向けに寝ても比較的左側に胃液が溜まってくれるそうです。
胃の不調の原因「胃下垂」
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<胃下垂とは?>
胃下垂とは、胃が正常な位置より常に下がっている状態。胃を支える筋肉や脂肪が少ない痩せ型の人に多く、日本人の1〜2割が胃下垂なのだとか。胃下垂の人は、胃酸が溜まりやすく、体調が悪いと胃にキリキリとした痛みを感じたり、朝食べ物が胃に残っているような違和感を覚えたりすることがあるそうです。
<食生活に注意が必要>
胃下垂の人が特に気をつけないといけない生活習慣は「食生活」。通常の胃よりも腸へ運ぶのに負担がかかるため、食べ過ぎは良くないそうです。一方、何も食べていなくても胃酸は出るので、食事を抜くと胃の中に胃酸だけの状態が続き、胃にかなりの負担がかかるのだとか。そのため、大切なのは1日3食しっかり食べること。適度な胃酸分泌や蠕動運動が行われ、胃の負担を和らげてくれるそうです。「3食は多い」という人は、1食の量を調節してでも朝昼晩と食べるようにしましょう。これは、胃下垂に関わらず心掛けたいポイントです。
<筋トレが効果的>
先生によると、胃下垂の対策で大切なのは「規則正しい食事」と「筋肉を鍛える」こと。特に腹筋を鍛えることで、胃を支える筋力がつき、これ以上垂れ下がるのを防ぐことができるそうです。
<猫背の人は要注意!>
猫背の人は、上半身の重みで胃が圧迫されて胃下垂が悪化することがあるそうです。これは、胃が通常の位置にある人も同じ。そのため、姿勢を意識してストレッチなどを取り入れることもおすすめだそうです。
10人に1人 胃の新・国民病「機能性ディスペプシア」
<機能性ディスペプシアとは?>
機能性ディスペプシアとは、胃痛などの症状が慢性的に続いているにも関わらず、内視鏡で確認しても炎症などの問題は見られず、ピロリ菌検査でも異常がないなど原因が見つからない病気のこと。主な症状としては、慢性的なみぞおちの痛みや胸焼け、胃もたれなど様々。新たな国民病とも言われるほど患者数は多く、国内では10人に1人にある病気と言われているそうです。
<機能性ディスペプシアの原因>
機能性ディスペプシアの主な原因が自律神経の乱れ。自律神経とは、食べ物を消化したり心臓を動かしたりと、生命維持のために欠かせない神経のこと。睡眠不足やストレスなどで自律神経が乱れ、機能性ディスペプシアの症状が起こることがあるそうです。
<誰もがなりうる機能性ディスペプシアの対処法>
先生によると、機能性ディスペプシアを完治することは難しいとのこと。ただし、症状を緩和することはできるそうです。原因はストレスなので、周囲の人々も理解をしていくことが大事なのだとか。機能性ディスペプシアの人は「刺激が多い食事」「脂肪の多い食事」「アルコール」「カフェイン」を避けることで、症状の軽減につながるそうです。お酒を飲む場合は、休肝日を必ず作り、1日の純アルコール量を男性40g(目安:缶ビール500mL×2本)女性20g(目安:缶ビール500mL×1本)以下にして胃を守りましょう。
(2025年3月2日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)
番組紹介
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