命を脅かす「糖尿病」への落とし穴とは?...専門医に学ぶ!糖尿病の予防法や改善法
サマリーSummary
ドクター:順天堂大学医学部附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科 教授 医学博士 野見山崇
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは順天堂大学医学部附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科 教授 医学博士 野見山崇先生です。
今回のテーマは「〜経験者たちの声から学ぶ〜糖尿病との正しい向き合い方」
日本人の約5人に1人が「糖尿病」と診断、または今後その可能性があると言われているそうです。糖尿病を放置していると、血管が傷つきやすくなり脳梗塞や心筋梗塞といった命を脅かす合併症を招く可能性もあるのだとか。そこで今回は、糖尿病の予防法や改善法など、糖尿病との正しい向き合い方を専門医に教えてもらいました。
糖尿病の基礎知識
<糖尿病について>
糖尿病とは、インスリンの働きが悪くなり血液中の糖分が増えて、血糖値が慢性的に高い状態が続く病気。大きく分けて「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分けられるそうです。今回は、糖尿病を患っている人のほとんどが該当する「2型糖尿病」についてご紹介していきます。
・1型糖尿病
生活習慣に関係なく、免疫細胞がすい臓のインスリンを出す細胞を壊す事で発症。
・2型糖尿病
過食などの生活習慣が原因で、インスリンの効きが悪くなり血糖値が高くなる状態。
<糖尿病の診断基準>
糖尿病かどうかは、「空腹時血糖値」と1〜2か月の平均血糖値を示す「HbA1c」で診断します。空腹時血糖値が126mg/dL以上且つ「HbA1c」が6.5%以上だと糖尿病と診断されるそうです。
糖尿病への落とし穴(1)食の欧米化
通常、摂取した糖分は、インスリンの働きによって主に肝臓や筋肉に取り込まれます。しかし、脂質を多く摂取するとインスリンの効きが悪くなるため、血糖値が上がりやすいのだとか。甘いものや炭水化物の摂り過ぎも糖尿病の原因になりますが、近年国内での糖尿病を発症する主な原因は、食文化の欧米化(脂質の多い食事)といわれているそうです。
<食べる順番も大切!オススメの食事は「和食」>
先生がオススメするのは、栄養バランスがとても良い和食。また、食べる順番も大事なのだとか。野菜から食べて、次におかず、最後にご飯を食べるとインスリン分泌が促され、血糖値の上昇を抑える効果が期待できるそうです。
糖尿病への落とし穴(2)「早食い」
食べるスピードがはやいと、消化吸収がはやくなり血糖値の急上昇を招くそうです。食事には30分かけるようにするのが理想だそうですが、忙しく時間がない方は先生がオススメする下記の改善法を参考にしてみてください。
<忙しい人の早食い改善策>
(1)時間がある時にゆっくり食べる
忙しく時間がない時は、時間がある時にゆっくり食べるように心がけましょう。
(2)食後に約3分の足踏み
食後に約3分間足踏みをすると、血糖値の上昇を抑える効果が期待できるそうです。
糖尿病への落とし穴(3)「朝食を食べない」
朝食を食べないと昼食を摂る時にエネルギーを一気に吸収しようとして血糖値が上がりやすくなるそうです。また、夕食しか食べないという人はさらに血糖値が上昇。その上夜食べたものは消化されにくく、血糖値の高い状態が長く続くためとても危険だそうです。
<頻繁な間食も要注意!>
身体の中では、食べている時はエネルギーを蓄積するホルモンが出て、食べていない時はエネルギーを燃やすホルモンが出ているそうです。間食をすると常にエネルギーを蓄積する状態になるので、血糖値が高いままになってしまいがちなのだとか。そのため、間食にも注意が必要だそうです。
糖尿病への落とし穴(4)筋肉量の低下
先生によると、摂取した糖分は筋肉などに取り込まれるのだとか。そのため、運動不足などで筋肉量が減ると、取り込める量が少なくなり血糖値が上がりやすくなるそうです。
糖尿病の合併症
血液中に糖分が多い状態が続くと、全身の血管壁が傷つき様々な合併症が起こります。先生によると、糖尿病には三大合併症があり、“しめじ”の順番で発症すると言われているそうです。
<糖尿病の三大合併症>
・し(神経)
“し”は、「糖尿病神経障害」の事。血糖値の高い状態が長く続くと、末梢の神経が壊れて痛みを感じにくくなり、小さな傷だったのが腐っている壊疽(えそ)と呼ばれる状態に。知らないうちに壊疽が進み、切断を余儀なくされる事もあるそうです。
・め(目)
“め”は、「糖尿病網膜症」の事。眼球の奥にある網膜の細い血管が傷つき、失明に至る場合もあるそうです。
・じ(腎臓)
“じ”は、「糖尿病性腎症」の事。腎臓の細い血管が傷つき、透析治療が必要になる事もあるそうです。
<合併症を予防するための目標値>
糖尿病の期間が長く、食後の血糖値が高い場合は合併症に注意が必要です。先生によると、合併症を予防するための目標値は、「HbA1c7%未満」。生活習慣を見直し発症のリスクを減らしましょう。
糖尿病との正しい向き合い方
<インスリン以外の治療薬も!?>
通常の糖尿病治療ではインスリンの働きによって血糖値を下げていますが、2014年に市場に現れた「SGLT2阻害薬」は、腎臓に作用し尿と一緒に血中の糖分を出し血糖値を下げるそうです。
<薬を飲み続ける生活からの脱却!?>
今年、新潟大学医学部で約4万7000人の患者データを分析したところ、約100人に1人は、薬を飲まなくても糖尿病ではない人と同じ血糖値まで戻っていた事が明らかになったそうです。特に軽い状態で発見された、あるいはもともと太っていた人が体重を大きく減らせたなどの好条件が重なった場合、1割以上の人は糖尿病でない状態に戻せていたのだとか。糖尿病と診断されると一生薬を飲み続けなくてはならないイメージがありますが、今回の研究から早期に生活習慣を見直せば、決して治らない病気ではないという事を明らかにする事が出来たそうです。
<糖尿病と歯周病の関係>
近年糖尿病と歯周病の関係が重要視されているそうです。先生によると、歯周病の人は糖尿病になりやすく、糖尿病で歯周病の人は血糖値が上がりやすい事が分かっているのだとか。日本糖尿病協会が配布している糖尿病の検査項目を示した手帳にも「歯科」の項目があり、必要な人には歯医者での受診を勧めているそうです。
先生オススメ!糖尿病改善法
<改善法(1)「有酸素運動」>
有酸素運動をするとインスリンの効きに関係なく、糖分が筋肉に取り込まれるため血糖値の上昇を防ぐ効果が期待できるそうです。なかでも先生のオススメは「ウォーキング」。1日8000歩を目標に歩くと良いそうです。(※持病などをお持ちの方は医師と相談してください)
<改善法(2)ゆっくりよく噛んで食べる>
よく噛んで食事をすると、エネルギーの吸収が緩やかになり血糖値を抑える効果が期待できるそうです。先生によると、噛む回数の目安は30回。30回と聞くと多いですが、普段1口で食べているサイズを3分の1にして10回ずつ噛むようにすると良いそうです。
<改善法(3)筋肉量を増やす>
筋肉量が増えると糖分を取り込む容量が増えるので、筋トレはとても効果的だそうです。
〜先生オススメ筋トレ!「スロースクワット」〜
(※無理のない範囲で行いましょう)
▼椅子に浅く腰掛け 腕を胸の前で組む
▼手を使わずに中腰まで3秒かけて立ち上がり 3秒かけて座る
≪ポイント≫
座った時に太ももから力を抜かないように、お尻で椅子にタッチする感覚で行いましょう。1度に行う回数3回を1セットとし、1日に朝昼晩3セット行うと良いそうです。
(2023年10月8日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)