肝臓の病気「太っていない人」「お酒を飲まない人」も油断禁物...肝臓の数値ALTに注目!脂肪肝・肝硬変の原因と対策
サマリーSummary
ドクター:奈良県立医科大学 消化器・代謝内科 教授 医学博士 ?治仁志
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは奈良県立医科大学 消化器・代謝内科 教授 医学博士 ?治 仁志先生です。
今回のテーマは「〜緊急宣言!今 肝臓が危ない〜脂肪肝・肝硬変の原因と対策」
沈黙の臓器とも呼ばれる肝臓の病気は、症状がほとんど出ない間に肝硬変や肝臓がんなどの病気に進行している事があるといいます。そんな事態に陥らないために、今年6月「奈良宣言2023」で打ち出された重要なキーワードが「ALT over 30」。「ALT」とは、以前はGPTと呼ばれていた肝臓の機能を表す検査値。肝臓学会はALTが30を超えた場合受診を勧めるよう提唱したそうです。そこで今回は、肝臓の数値ALTに注目!肝臓の病の原因と対策を専門医に教えてもらいました。
肝臓の基礎知識
<肝臓の働きについて>
先生によると、臓器は主に1つの働きをする事が多いそうです。例えば、心臓は身体中に血液を送り出すためのポンプの働き。肺は、酸素を取り込んで二酸化炭素を排出するガス交換の働きがあります。それに対して肝臓は、アルコールなどの有害な物質を解毒・分解したり、栄養素をエネルギーに変換して全身に送ったりなど約500もの働きがあるのだとか。そのため、肝臓は「人体の化学工場」とも言われているそうです。
<肝臓は2/3を切除しても元の大きさに戻る!?>
先生によると、肝臓は2/3を切除しても元に戻るほど再生能力が高いそうです。少しのダメージを受けても自分でフォローをできてしまうので、症状がなかなか出にくく“沈黙の臓器”と呼ばれるのだとか。しかし、お酒・脂肪・ウイルスなどさまざまな原因で、攻撃が防御を上回ってしまうとダメージをフォローしきれず肝臓がだんだん硬くなっていき、最後は肝硬変に進行してしまいます。肝硬変になると元の状態に戻るのが難しくなってしまうそうです。
肝臓の数値 ALTが分かれ目!超えると脂肪肝・肝硬変に!?
<肝機能の数値>
肝機能の数値には「ALT」「AST」「γ-GTP」の3つがあります。これらは全部肝臓の細胞の中に含まれている酵素で、肝臓が壊れると酵素が血液の中に出てくるのだとか。そのため、数値が高いと肝臓がダメージを受けていると考えられるそうです。
<肝臓の状態を判断できる「ALT」>
「ALT」「AST」「γ-GTP」の数値のうち、「AST」は心臓や筋肉が壊れる場合も増える事があるそうです。また、「γ-GTP」は胆管の病気やアルコールに反応して増える事があるのだとか。一方「ALT」は、肝臓が壊れた時に増えるのが特徴。そのため、肝臓そのものの状態を判断するには、「ALT」が最適だそうです。
<ALTが30を超えると要注意!>
ALTが30を超えている人に懸念される肝臓の病が「脂肪肝」。脂肪肝とは肝臓の細胞内に脂肪が溜まった状態の事。この状態が続くと肝臓に炎症を起こす事があるそうです。すると、細胞が壊れて線維質となり硬くなっていくのだとか。結果、肝硬変につながる恐れがあるそうです。
<肝臓の状態を詳しく調べられる検査>
肝臓にとって問題となるのは「脂肪」と「硬さ」。それらを詳しく調べられる検査には下記のようなものがあるそうです。
・腹部エコー検査 →脂肪肝になっているかどうかが分かる
・フィブロスキャン →溜まっている脂肪の量を測定できる
・MRエラストグラフィ→肝臓の線維化の進行具合が分かる
脂肪肝の落とし穴「太っていない人」「お酒を飲まない人」も油断禁物!
<お酒を飲まない人も油断は禁物!>
お酒を飲まない人でも肝臓障害を起こす「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」という病気があるそうです。なかでも、太っていないのに肝臓に炎症が起きている「痩せ型NASH」の人が最近増えているのだとか。そのため、お酒を飲まない人や太ってない人も油断は禁物だそうです。
<20代の頃から10キロ以上増えている方は注意!>
20代の頃と比べて10キロ以上増えている人や食べ過ぎやお酒を過度に飲む方は、肝臓に脂肪が溜まり硬くなっている可能性があるそうです。その発見につながるのがALT。数値が30を超えている方は、ぜひかかりつけ医に相談しましょう。
<女性は閉経後に要注意!>
先生によると、女性ホルモンには肝臓の働きを保護する作用あるそうです。そのため、女性は閉経後に脂肪肝やNASHになる人が多いのだとか。また、女性は男性の2/3のアルコール量で肝障害が起こってしまうそうです。
肝臓への効果が期待!先生お勧め「2つの飲み物」
肝臓を守るためには、良質なたんぱく質を中心としたバランスのとれた食事が良いとされています。さらに、ある2つの飲み物が近年注目されているそうです。そのうちの1つがコーヒー。コーヒーを毎日飲む人はほとんど飲まない人に比べて、肝臓がんのリスクが半減していたという報告があるのだとか。そして、もう1つが緑茶。緑茶などのカテキンが多いものを摂取すると肝機能や脂肪肝が改善したという報告があるそうです。ただし、コーヒーや緑茶に含まれるカフェインは、過剰摂取するとさまざまな悪影響が出る場合があるので飲み過ぎには注意しましょう。
ALTを改善!「なら肝体操」ポイントは第二の肝臓
奈良県立医科大学准教授の赤羽たけみ先生が中心となり1年前に開発された「なら肝体操」は、脂肪肝など肝疾患の予防・改善や、肝硬変の進行を抑える効果が期待できるといいます。「なら肝体操」を含めた運動療法を6か月行ったところ、ALTの数値が41から13まで改善した患者さんもいるそうです。
<ポイントは第二の肝臓>
なら肝体操のポイントは、運動によって体重が減り脂肪肝が改善される事と、筋肉が鍛えられる事。筋肉は、第二の肝臓とも呼ばれていて「たんぱく質の貯蔵」「糖質の取り込み」「アンモニアの分解」など肝臓と同じような働きをしているのだとか。そのため、筋肉量が増えると、肝臓の負担が減り肝機能の改善が期待できるそうです。
< 「なら肝体操」をやってみましょう!脚の体操>
なら肝体操は12の体操で構成されていますが、オススメの体操を1つご紹介します。
(※無理のない範囲で行ってください)
▼椅子の背に手を置く
▼左脚を前に上げる
▼左脚を後ろに上げる
▼左脚を外側に上げる
▼左脚を内側に上げる
以上で1セット。これを片脚4セットずつ行います。先生によると、肝臓病が進行している人は転倒するリスクも高いのだとか。ALTの改善だけでなく、転倒を防ぐためにも脚の大きな筋肉を鍛える事は重要だそうです。
(2023年9月24日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)