知っておきたい汗の健康常識
サマリーSummary
ゲンキリサーチャー:なすなかにし
ドクター:日本福祉大学大学院 スポーツ科学研究科 准教授 医学博士 西村直記 ほか
汗の健康常識①汗がクサいのは悪いサイン?
先生によると、汗は本来無臭。しかし、皮膚の表面には常在菌がいて、汗が出た後に放置していると皮脂などと混ざり合い、細菌がそれを分解する事でニオイが発生するのだとか。そのため、汗がクサくても健康的に大きな問題はないそうです。ただし、ツンとしたアンモニア臭の場合は要注意。肝機能などに問題がある可能性があるそうです。
<汗のニオイ対策>
ニオイが発生するのは、発汗してから1時間程度と考えられているので、ニオイを防ぐためにはその前に対処すると良いそうです。方法は、濡れたタオルやハンカチで皮膚の表面を拭く事。皮膚表面がうるおい、発汗とニオイの発生を抑える効果が期待できるそうです。ちなみに、汗は身体を冷やすために出ているので、乾いたタオルで拭くと表面の汗が失われて余計に汗が出てしまうそうです。
汗の健康常識②汗をよくかく人とかかない人の差は?
先生によると、汗をよくかく人とかかない人の差は、暑さに慣れているかどうか。汗腺の機能は、季節によって変化します。冬場は、汗をかく機会が減り、汗腺の機能も低下。暑くなり再び発汗する機会が増えると、機能も元に戻るのだとか。しかし、運動不足や早い時期からエアコンをつけるなどして汗をかく事に慣れていないと、本格的な夏を迎えても発汗機能がうまく働かない「汗が出にくい身体」になり、夏バテや熱中症にかかりやすくなってしまうそうです。
<熱中症を防ぐために大切なのは「見えない汗」>
汗は、皮膚から出て蒸発する事によって身体の熱を奪い体温を調節しています。そのため、熱中症を防ぐには、見えない汗こそが大切で、したたるほどの汗は必要ないのだとか。運動する場合も、汗の量はしっとりにじむ程度で十分。毎日少しずつでも汗をかくようにする事で、蒸発しやすい汗をかける身体になっていくとの事です。
<夏までに汗をかきやすい身体にするコツ>
・ウォーキングは夕方に行う
先生によると、体温は朝が一番低く、夕方にかけて上がっていくとの事。そのため、朝のウォーキングも健康には良いですが、夕方に運動をする方が効果的に汗をかけるそうです。
・積極的にたんぱく質を摂る
積極的にたんぱく質を摂って筋肉を増やす事により、体温が上がりやすくなり汗も出やすくなるそうです。
汗の健康常識③緊張して出る汗を抑える方法
先生によると、緊張などの精神的な影響でかく汗は、大なり小なり誰もが出るもの。健康に大きな影響はないのだとか。気になる場合は、物事に集中する事で汗の量を減らす効果が期待できるそうです。
<日常生活に支障をきたす場合は医師に相談を>
日常生活に支障をきたすほど汗が出る場合は、「掌蹠(しょうせき)多汗症」といって手の平と足の裏の多汗症である可能性があるそうです。塗り薬や、ボトックス注射などで発汗を抑えられるそうなので、気になる方は一度皮膚科などでご相談ください。
汗の健康常識④あせもと汗荒れの対策法
先生によるとあせもと汗荒れは別物で、あせもとは、肌の中の汗腺が詰まる症状。細かなブツブツが現れますが、かゆみはあまり生じないといいます。一方、汗荒れは皮膚表面に出た汗が刺激を与え、かゆみを生じる事が多いのだとか。そのため、対策法もそれぞれ異なるそうです。
<あせもの対策法>
あせも対策には、一度に大量の発汗をしない事が大切。通気性の良い綿など、吸湿発散性の良い素材の服を着ると良いそうです。
<汗荒れの対策法>
肌の表面が潤い、バリア機能が正常であれば汗をかいてもかゆくはならないそうです。そのため、汗荒れを防ぐには、肌の健康を保つ事が大切。先生によると、肌のバリア機能を壊す大きな原因は「洗い過ぎ」によるもの。汗荒れが気になる方は、石鹸やボディソープの使用を週2回程度にし、やわらかめのタオルでやさしく洗うと良いそうです。
汗の健康常識⑤「汗をかくと毒素が出る」って本当?
「汗をかいて毒素を出す」といった話をよく聞きますが、先生によると、汗の99%以上は水。若干塩分やアンモニアが混じっているものの、汗から毒素が出るというのは医学的には考えにくいとの事。体内で失われる水分は、汗が出なければ尿が増え、汗が出れば尿が減るというように体内でコントールされているので、たくさん汗をかいたからといって、汗以外の成分が余分に出るわけではないそうです。また、お酒を飲んだ後に「サウナでアルコールを出す」というのも、間違いなんだとか。アルコールは肝臓で分解されるため、汗腺から出る事はないそうです。汗をかきすぎると脱水症状になる恐れがあるので、サウナなどの際にはこまめな水分補給を忘れずに行いましょう。