竜党として斬る2026“ドラフト異聞”~締めはジャイアンツ松井新監督誕生だった!

ドラフト会議には毎年“ドラマ”がある。2026年(令和8年)10月22日、やはりプロ野球の歴史に刻まれる驚きがあった。12球団がどこも事前に1位指名選手を公表しなかったことも、会議当日への緊張を高めた。(敬称略)
残念!大学屈指の捕手を外す
ドラゴンズにとっては、工藤公康新監督が就任して迎える初めてのドラフト会議となった。しかし、工藤監督が以前からの予定のため「欠席」だったこともあってか、どこか淋しい気持ちもした。ドラゴンズは1位で、青山学院大学の渡部海捕手を指名した。指名が予想された阪神タイガースとは競合せず、抽選は東北楽天ゴールデンイーグルスとの一騎打ちだった。それだけにクジには勝ちたかった。高校、大学とバッテリーを組んできたドラゴンズの中西聖輝投手との“プロでのバッテリー”を見てみたかった。それも竜のユニホーム姿で。
抽選に臨んだのは荒木雅博・球団本部長補佐。初の大役の初戦は“敗退”だった。ファンとしては、抽選であれ、単独指名であれ、ドラゴンズが真っ先に1位で欲しい選手を獲得してほしかったので、その瞬間はため息をついた。
1位は即戦力の本格右腕

あらためての1位指名はまたしても競合となった。近畿大学のエース、宮原廉投手。侍ジャパン大学代表でも名を馳せた本格右腕である。今度は千葉ロッテマリーンズとの抽選になった。頭をよぎるのは、2023年(令和5年)ドラフト、草加勝投手をめぐって同じ展開となった。この時はドラゴンズが草加投手を引き当てた。
同時に思い出したのは、クジを引く当の荒木補佐自身の高校時代のドラフトである。1995年(平成7年)ドラフトで、1位に福留孝介選手を指名したドラゴンズは、2度にわたって抽選で敗れ、“外れ外れの1位”で荒木選手を指名したのだった。そんな嫌な予感もした荒木補佐だったが、宮原投手の交渉権を引き当てた。自身の歴史に“終止符”を打った形かもしれない。
竜は堅実な補強ドラフト

ドラゴンズの2位指名は、社会人チーム王子の柴﨑聖人外野手。荒木補佐が臨時コーチとして指導したこともある左打ちの強打者である。3位は亜細亜大学の前嶋藍捕手。宮原投手と同じ大学日本代表でもある強肩強打のキャッチャーだ。今回のドラフトのポイントは、この2位の柴﨑、3位の前嶋、両選手なのかもしれない。左打ちの外野手と捕手の即戦力を補強した。
最終的にドラゴンズは、支配下6人、育成2人の計8人をドラフト指名した。2018年(平成30年)の根尾昂、2024年(令和6年)の金丸夢斗、それぞれ1位指名のクジを引き当てた時のような興奮はなかったけれど、球団スカウトが主導しての堅実なドラフトだったのではないだろうか。ただ、今季、中継ぎ陣が不調で、40回もの逆転負けを喫したことから考えると、即戦力の投手をもう少し指名してもよかったかと思った。
驚き!織田投手を強行指名
今回のドラフトで最大のサプライズは、高校を卒業して米メジャーへの挑戦を表明していた横浜高等学校の織田翔希投手を讀賣ジャイアンツが強行指名したことだった。会場はどよめいた。ドラフトを前に織田投手は記者会見をして「米国行き」を宣言していたが、そうでなければドラゴンズはじめ多くの球団も1位指名したかもしれない好投手である。
「ジャイアンツ」「ドラフト」「強行指名」となると、PL学園高等学校のエースだった桑田真澄投手の1985年(昭和60年)ドラフトなどを思い出し、胸がワサワサした。「強行指名」ではなかったが、さらに前には江川卓投手をめぐる“入団騒動”もあった。何をしてくるか分からない、それが讀賣ジャイアンツの印象であることは否定できない。しかし、今回の指名直後に織田投手が「アメリカに挑戦する気持ちは全くブレません」ときっぱりと語ったことで、どこかホッとした。メジャーへ直行するという夢を貫いてほしいと、あらためて願った。
ゴジラ松井が上陸した!

しかし、ドラフト会議の翌日(10月23日)、さらに驚くニュースがあった。ジャイアンツが来季からの新監督として松井秀喜氏の就任を発表したのだ。次の監督が決まらないままの異例のドラフトだったが、そういうスケジュールだったのだろう。そして、織田投手を1位指名した球団フロントは、当然ながら松井氏の新監督就任を知っていたはずである。
ニューヨーク・ヤンキースでも活躍した松井新監督を迎えるジャイアンツ、そのチームからドラフト1位で指名された織田投手。2026年ドラフト会議は、実はその翌日まで“続いていた”のかもしれない。今はただ、メジャー入りをめざす18歳の“夢の行方”を見守りたいと思い、そして、松井新監督共々に、この2人がイメージダウンするような事態にはなってほしくないと、ひとりのプロ野球ファンとして、切に願っている。
過去から度々言われていることだが、ドラフトの成否はすぐには分からず、数年後に明らかになる。工藤新監督が率いる新生ドラゴンズに加わる“若竜”たちの明日に、心からのエールを送りたい。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。















