落合政権が築いた黄金時代、まさかの長期低迷~ドラゴンズ90周年の熱き記憶③~
中日ドラゴンズは、2026年(令和8年)に、球団創設90周年を迎えた。このコラムを書く筆者が物心つき、竜のファンとして歩み始めて60年余りの歳月が経つ。時代を20年ずつ大胆に区切って、愛しきドラゴンズの歴史を訪ねてみた。
最終回の第3回は、2006年(平成18年)から2025年(令和7年)、落合博満監督が8年間の黄金時代を築くも、その後に球団史上最悪となる長き低迷が待っているという激動の20年間である。(敬称略)
オレ流と呼ばれた監督

2006年、落合博満は監督就任3年目を迎えていた。フリーエージェント(FA)によって讀賣ジャイアンツへ去った落合だったが、2004年(平成16年)から再びドラゴンズのユニホームを着た。それも監督として。この監督就任にドラゴンズファンとして、心から驚いた。
しかし、この監督招聘が、ドラゴンズの球団トップによる英断だったことは、結果が証明した。監督1年目、「トレードなど補強は一切しない。今の戦力が10%ずつ力をアップすれば勝てる」と宣言し采配を振るった。そして有言実行、見事にドラゴンズにとって6度目のリーグ優勝を果たした。
投打のタイトルは竜ばかり
2年目の2005年(平成17年)は2位だったが、3年目となった2006年シーズン、ドラゴンズは恐るべきチームに育っていた。投手では、川上憲伸が最多勝、最優秀防御率、それに最多奪三振と投手タイトルを総なめし、岩瀬仁紀は40セーブで2年連続の最優秀救援投手となった。
打つ方では、4番のタイロン・ウッズがホームラン王に打点王の2冠、福留孝介が首位打者と最高出塁率のタイトルを取った。ベストナインとゴールデングラブ賞には、荒木雅博と井端弘和の“アライバ・コンビ”も加わり、それぞれドラゴンズから5選手が選ばれた。誰が取ってもおかしくないと思われたMVPには、福留が選ばれた。
最強のチームだった2006年
日本のプロ野球で数々の最年長記録を塗り替えた山本昌が、41歳で最年長ノーヒットノーランを達成したのもこの2006年の9月だった。ドラゴンズ90年の歴史の中でも無類の強さを誇ったチームが完成していた。リーグ優勝を決めたのは、東京ドームでのジャイアンツ戦だった。竜の球団史には、常に巨人というチームとの因縁があるようだ。
優勝監督インタビューに立った落合が「涙もろいので」と号泣した姿は、今も忘れられない。そんな無敵のチームでも、日本シリーズは勝てなかった。現役引退を表明していた新庄剛志(当時の登録名「SHINJO」)の華々しい活躍の前に完敗だった。
黄金時代は8年で終わった
落合政権は、2011年(平成23年)まで8年間続いた。その間、2007年(平成19年)に2度目の日本一に輝いた他、リーグ優勝は4度、球団史上初の連覇も達成した。8年間はすべてAクラスという、まさに球団史に輝く“黄金時代”を築いた。
しかし、連続優勝を果たしたシーズンをもって、落合は監督としての契約を終える。球団は2連覇した監督に、3連覇をめざすステージに立たせなかった。語られる諸事情はあるものの、勝負事には「勝つ」という大命題がある。今思っても摩訶不思議な決断であり、実にもったいないことをしたものだ。
進まなかった世代交代
落合の後を受けて、高木守道(※「高」は「はしごだか」)が再び監督に就任した。落合色を変えることを期待された登板だったが、高木は落合時代の“遺産”とも言える円熟した選手たちを起用して、勝ちにこだわる野球をした。もし、自らがドラフトで1位指名のクジを引き当てた高橋周平を、18歳の高卒選手ながら1年間ショートで起用し続けるなど、大胆な世代交代を進めていれば、その後のチームも大きく変わったかもしれない。
高木の後は、谷繫元信、森繁和、そして与田剛が監督を務めたが、優勝どころかクライマックスシリーズにさえ出場できないシーズンが続いた。
“切り札”立浪監督の誤算
球団史上でも類を見ない低迷、そこにピリオドを打つべく登場したのが、立浪和義だった。まさに“切り札”の登場だった。しかし、世代交代も進まず、長く勝っていないチームの立て直しは容易ではなかった。立浪監督が率いた2022年(令和4年)から2024年(令和6年)、ドラゴンズは何と3年連続の最下位に沈んだ。
球団史の中で、2年続けての最下位すらなかったのに、3年連続とは驚くしかなかった。そして、その指揮官が、高木に次いで「3代目ミスター・ドラゴンズ」と呼ばれていたスター選手、立浪だったことは、球団にもファンにも「まさか」の思いと共に、大きな衝撃をもたらした。
90周年の記念すべきシーズン、現在ドラゴンズを率いる井上一樹が2年目を迎える。戦力は整いつつある。本拠地バンテリンドームも大改修されて「ホームランウイング」が新設されるなど環境も大きく変わる。100周年へのカウントダウンが始まる中、まもなく新たな球春が幕を開ける。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。










