二遊間そろそろ決めて!立浪ドラゴンズ春季キャンプで残された“未解決”たち
立浪和義監督は、いつものように「大丈夫です。何とかします」と答えるだろうか。中日ドラゴンズは沖縄での春季キャンプを打ち上げて、オープン戦に突入した。しかし、2年連続の最下位からの逆襲へ、解決しなければならないテーマは今なお残されている。
二遊間は決まらなかった
沖縄キャンプでの最大の注目は、過去2年間、立浪監督が求め続けた「二遊間の確立」、セカンドとショートを誰に守らせるかというテーマだった。
オープン戦が始まる頃には、青写真を作り実戦で磨いてほしいと当コラムでも切望した。なぜなら、日本一になった阪神タイガースなど、強いチームの二遊間に負けないためには、とにかく早めの整備が必要な“最下位チーム”だからである。
しかし、結果的には、二遊間のレギュラーは決まっていない。2月23日から北谷で行われたオープン戦でも、スタメンの二遊間コンビは3試合とも違う顔ぶれだった。
期待のルーキー津田の離脱
ドラフト2位ルーキー、津田啓史選手が肩を痛めたことはショックだった。二遊間レギュラー候補として、ドラフト会議では“12球団真っ先の2位”という好指名順で、即戦力投手を見送って獲得した大型内野手だった。
1位の指名入札で、度会隆輝選手の抽選を外して横浜DeNAベイスターズに奪われていた。津田選手は、度会選手と横浜高校時代の同期生であることから、ドラゴンズファンとしては、津田選手が度会選手を上回る活躍を、と淡い期待もしていただけに残念である。
ドラフト1位と2位の“不在”
キャンプを前にドラフト1位入団の草加勝投手が右ひじ手術によって、入団早々に別メニューに入っている。結果的に、ドラゴンズは、ドラフト1位と2位の両選手、それも高卒ルーキーでない即戦力期待の2人が、1軍キャンプを“完走”できなかった。
「12球団で一番いい指名順」と言われたドラフト会議だったはずだ。「けがは仕方ない」で終わらせることなく、スカウティング、トレーニング、そしてコーチングなど、球団内での組織的検証は必要だろう。3位の辻本倫太郎選手が、キャンプでも溌剌とした攻守を見せて、二遊間レギュラー争いで踏ん張っていることだけが、唯一の救いである。
石川は最後まで2軍だった
内野の問題は二遊間だけではない。サードも不透明である。石川昂弥選手が当然そこに入って、新たに加わった中田翔選手と共に、力強いクリーンアップを構築するものと思っていたが、石川選手の春季キャンプは、最初から最後まで読谷の2軍だった。
日本代表チームの井端弘和監督が「侍ジャパン」3月の欧州代表との試合メンバーに石川選手を選んだ。「侍ジャパンに選ばれた選手がなぜ2軍?」。井端監督と立浪監督、短期決戦と長いペナントレース、指揮官の見方は違って当然なのだが、どこか腑に落ちない素朴な疑問である。
井上一樹2軍監督から「自信を持って1軍に送り込める」とお墨付きを得た石川選手。オープン戦の早い段階で1軍のスタメンに名を連ねてくれることに期待したい。
投手陣は順調なキャンプ
多くのレギュラーポジションが決まっていない野手陣に比べて、投手陣は順調なキャンプだった。柳裕也、小笠原慎之介、そして、高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)という、2023年シーズンに規定投球回数に達した3投手はしっかり投げ込んだ。
手術からの復活をめざすエース大野雄大投手、竜での2年目となる涌井秀章投手、この両ベテランも順調である。さらに、根尾昂投手や梅津晃大投手も先発ローテーションに名乗りを挙げている。キャンプの最後に、2年間リハビリを続けていた岩嵜翔投手が150キロを超す投球を見せるという、嬉しいニュースもあった。
空きポジションを決めろ
投手陣は12球団でもトップクラス、しかし、忘れてならないのは、それでも勝てなかった2年間である。「もう1点あれば」と何度くり返したことだろう。点を与えなければ負けないが、点を取らなければ勝てない。
オープン戦、3試合目こそ4点を挙げて勝利したが、1、2試合目は無得点だった。零封負けはこれまで散々見せられたので、もうご勘弁いただきたい。立浪監督も「オープン戦から勝ちに行く」と語っている。くり返すが、最下位からの“下剋上”を狙うチームだからこそ、攻撃陣の顔ぶれを早めに決めて臨戦態勢へ。3試合目の相手だったタイガースは、シーズンまずこれで戦うというスタメンを組んできていた。
立浪ドラゴンズ3年目のペナントレース開幕まで1か月しかない。とにかく1日も早く、“竜の2024年オーダー”が見たい。例年よりも早い、弥生3月の微風を感じる中で、今一番の願いはそれに尽きる。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。