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中田翔に“キャンプの華”を譲るな!ドラゴンズ生え抜き野手たちへの檄(げき)

中田翔に“キャンプの華”を譲るな!ドラゴンズ生え抜き野手たちへの檄(げき)
「サンデードラゴンズ」より中田翔選手(C)CBCテレビ

米国ロサンゼルスだけではなく、沖縄の北谷でも「翔タイム」という言葉が飛び交っている。2年連続最下位からの逆襲をめざす立浪ドラゴンズ、春季キャンプ序盤の話題は、今シーズンから加わった中田翔選手に集まっている。

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中田“翔タイム”に歓声

「サンデードラゴンズ」より中田翔選手(C)CBCテレビ

アグレスタジアム北谷での中田選手の打撃練習は、力強い打球が外野フェンスを越えるとスタンドのファンから大きな拍手が起きるなど、キャンプの見せ場ともなっている。ドラゴンズの新しい背番号「6」のユニホームに注目が集まる春季キャンプは、あの落合博満さん以来だろうか。1987年(昭和62年)の沖縄キャンプは、トレードで移籍してきた落合選手の背番号「6」を追う、大勢の報道陣とファンでかつてない大フィーバーだった。

生え抜き野手は2軍に

「サンデードラゴンズ」より大島洋平選手(C)CBCテレビ

そんな懐かしい時代を彷彿させる一方で、同じグラウンドに、ドラゴンズ一筋でプレーしてきた野手たちの姿が見られない。背番号「8」と「3」、15年目の大島洋平選手、そして13年目の高橋周平選手である。2人とも、2軍の読谷キャンプで調整を続けている。

大島選手の場合は、読谷スタートはほぼ毎年恒例のことであり、2000安打も達成しているのだから、その練習スタイルが合うのだろう。開幕にきっちり照準を合わせてくるのだから、さすがなのだが、移籍してきた中田選手ばかりに注目が集まる中、「大島は?」「高橋は?」と、ふと寂しくなる。これまで竜の看板を背負ってきた存在感を、中田選手の近くで見せてほしい。

谷沢健一さんの思い

「ベテランこそ、1軍のキャンプにいるべきだ」こう語ったのは、ドラゴンズのスター選手だった谷沢健一さんである。17年間の現役で、首位打者のタイトルを2回獲得した左のスラッガーであり。1974年(昭和49年)と1982年(昭和57年)の2度のリーグ優勝の主軸だった。

それは、2023年11月に名古屋市内で開催されたトークライブ「ドラゴンズ球手箱(たまてばこ)」で、ご一緒した時の発言だった。このイベントは、ドラゴンズのOB選手をゲストに迎えて、竜の歴史を語り継いでいこうという趣旨で始まり、同時に、現在のチームへの熱き思いも語ってもらう。3年目の立浪ドラゴンズの戦いに話題が移った時に、谷沢さんは自らの経験をもとに、キャンプについて語ってくれた。

高木守道さんの進言

持病のアキレス腱痛から、2年ぶりの復活をめざす1980年(昭和55年)シーズン、谷沢さんは、2軍キャンプからのスタートを覚悟していたという。32歳の時だった。しかし、当時の中利夫監督に対し「谷沢は1軍キャンプに置かなくてはだめだ」と主張したベテラン選手がいた。のちに2代目「ミスター・ドラゴンズ」と呼ばれる高木守道さん(※「高」は「はしごだか」)である。

調整で2軍に置いたら、そのままその空気に染まってしまうという心配を、チームリーダーの高木さんが感じて、監督に提言したのだ。それによって、谷沢選手は1軍キャンプに参加して、シーズンに臨み、その年すぐに、自身2度目となる首位打者のタイトルに輝く、見事な復活劇を見せたのだった。

ベテランこそ1軍キャンプ

谷沢さんは、高木さんの進言にあらためて感謝しながら、シーズンに1軍で活躍するべき選手は、キャンプの時点から、その空気感の中にいなくてはいけないのだと語った。大島選手の名前も挙げて「特にベテランこそ」と念押しした。大島選手や高橋選手は、自らの調整と共に、「若手に背中を見せる」という“竜の先輩”としての大切な役割をも担っているのである。今やそういう立場なのである。

一方の投手陣では、手術からの復活をめざす35歳のエース大野雄大投手が、自ら志願して1軍キャンプに合流して、ブルペンで熱投を見せている。「ドラゴンズを背負ってきたのはオレたちだ」と大島選手や高橋選手にも、早い時点での1軍合流、そして、中田選手に負けない“竜のオーラ”を放ってほしいと願う。

石川昂の合流が待ち遠しい

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手(C)CBCテレビ

もうひとり、ベテランではないが、石川昂弥選手を忘れてはいけない。2年前に手術した左膝の状態も慎重に対応しながら、立浪和義監督の指示で“無期限の2軍調整”が続いている。しかし、谷沢さんの弁を借りるならば「1軍キャンプにいるべき」であろう。

無理は絶対に禁物だが、あの打撃練習での見事な放物線は、1軍の舞台で披露してこそのものである。2024年シーズン、石川選手が逆襲へのキーマンのひとりであることは間違いないのだから。

立浪監督の口からは「競争」という言葉が、これまで以上に飛び出している。既存のメンバーに新しいメンバー、ベテラン選手に若手選手、チーム全員が同じグラウンドで競争してこそ、戦う集団が完成する。まずは竜の野手陣よ、“翔タイム”に話題を独占させるな。その意地こそが、長年の低迷を一気にぶち破るパワーの源となるはずである。
                          
  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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