躍動する若竜、開幕スタメンは!?立浪流コンバートも読み解く!
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
三沢淳さんご逝去
今月3日往年の名投手・三沢淳さんが中皮腫でご逝去されました。1970年にドラゴンズからドラフト3位で指名され、アンダースローからのシンカーを武器に2度のリーグ優勝(1974年、1982年)に貢献。プロ通算505試合登板、107勝。サンドラにも2013年12月に野武士軍団同窓会で出演し穏やかな笑顔で当時のエピソードを披露していました。心よりお悔やみ申しあげます。
今週のサンドラは、過去から現在にかけてのコンバートを特集。コンバートしてポジション争いをしている選手も多い今年のドラゴンズ。そんな選手たちの現状を今一度整理して谷繁さんが開幕スタメンを提言する。また、80・90年代、00年代のコンバートの歴史についても振り返る。
レギュラー奪取に向けた内野手の現状!
石川昂弥選手は開幕スタメンへ向け、スワローズ奥川恭伸投手のフォークを捉え「奥川は同級生でもありますし意識するところはある。初対戦で打てたのは良かったと思う」とコメント。オープン戦10試合出場 打率.229 1HR 4打点と昨年の秋から取り組んだことの成果が出始めている。今は打席に立って振ることを覚える時期と谷繁さんからのコメント。
セカンドにコンバートされた高橋周平選手。チーム事情的にポジションの変更によるミスは仕方ないが、ファインプレーはいらないので着実にダブルプレーをきちんととりミスを減らすことを谷繁さんが助言。
熾烈な争いを極める外野手の現状!
岡林勇希選手は、オープン戦10試合 打率.308 3盗塁、守備でもレーザービームのような返球で肩の強さを発揮し走攻守で魅せる。「昨シーズン経験を積んで今年はとにかくレギュラーを取るという気持ちが伝わってくる。1番で行くと思います。」と谷繁さんからのコメント。
根尾昂選手は登録が内野手から外野手になり、少ないチャンスながらも結果を出し、14打数4安打という成績を残している。
ルーキーで唯一スタメンが続く鵜飼航丞選手は、スワローズの奥川投手やバファローズの山岡泰輔投手などの一線級のピッチャーからヒットを放ち、6試合連続安打を記録する。また持ち前の長打力も存分にアピールしている。
平田良介選手は二軍の教育リーグで2ランHR含む2安打3打点で状態を上げて一軍合流しており、昨シーズン悔しい思いをしたベテランの奮起もまだまだ期待したい。
開幕ローテに向けての挑戦!投手陣の現状!
柳裕也投手が「変化球の精度をテーマにマウンドに上がった。納得のできるボールが多かった。」と語る投球は5回被安打 1奪三振 8無失点と盤石の強さを見せた。「責任感が増したような表情をしている」と谷繁さんからも太鼓判を押される。
小笠原慎之介投手は二軍で調整登板し3回被安打2 無四球 失点1と開幕に向けて順調に仕上げている。課題とされる長いイニングを球数がかさむことなく投げられるかが肝心となる。
大野雄大投手は「開幕してから長いイニング投げることが求められているのでバテることなく予定のイニングまで投げられたので良かった。」と語り、6回 被安打5 奪三振2 失点2とまとめた。
残りのローテ枠を巡って、先発候補に名乗りを上げる投手たちの成績は…
笠原祥太郎 4回 被安打4 無失点
鈴木博志 5回 被安打6 無四球 無失点
岡野祐一郎 5回 被安打4 無失点
福谷浩司 5回 被安打1 奪三振6 無失点
高橋宏斗 5回 被安打3 奪三振7 無失点
各投手無失点でそれぞれの個性を残した投球を披露しており、誰が入るかわからない開幕ローテ争いも過酷を極めてきた。
また中継ぎ陣は、岩嵜翔投手、R・マルティネス投手もともに無失点で抑えている。また、ロドリゲス投手は高い奪三振率を生かしリリーフ転向し、1回をパーフェクトに抑えた。又吉選手の抜けた穴は大きいが中継ぎ転向組の活躍にも期待したいところ。
鵜飼だけじゃない!続々と長打力を見せつけるルーキーの現状!
ドラフト6位ルーキー福元悠真選手は、プロ初HRも放ち教育リーグで打率.313と好成績で一軍合流、同い年の鵜飼、ブライトと切磋琢磨して更なる成長を期待したい。ドラフト4位味谷大誠選手は、代打で登場してプロ初HRを記録し打てる捕手としての期待が高まる。また、ドラフト1位のブライト健太選手は、沖縄での練習試合で打率.125だったのが、教育リーグでは脅威の打率.452をマークし、守備でも好プレーなどが見られ一軍合流。
谷繁さんの開幕予想オーダーは以下の通り
1(右)岡林
2(中)大島
3(二)高橋周
4(一)ビシエド
5(左)鵜飼
6(捕)木下拓
7(三)石川昂
8(遊)京田
9(投)ピッチャー
この中でも注目の選手を谷繁さんはこう語った。
「石川(昂弥)だと思います。スタートはここでいいと思うんですけど、4番に入ってくれると打線がすごく強くなっていくんじゃないかと。ビシエドは5番を打って、石川を助けることもできるし、鵜飼の状態にもよるんですけど下位にやったりですね。」
立浪流改革におけるコンバートを過去の事例から紐解く
2年連続サードでゴールデングラブ賞に輝いた高橋周平も、石川昂弥起用の流れでセカンドへとコンバート。去年までショートでのレギュラー奪取に燃えていた根尾昂も出場機会を求めてライトへ。また、アリエル・マルティネス、山下斐紹、郡司裕也も打撃を活かし外野に挑戦中だ。その中で、ドラゴンズの過去のコンバートを振り返る。
1980・90年代のコンバート
1983年にドラフト2位で投手として入団した仁村徹はルーキーイヤーにプロ初勝利した初登板が最初で最後のマウンドとなり、セカンドへ転向2年後には星野監督のもと、規定打席到達し打率も.287とバットでチームを支えた。
1988年ゴールデンルーキーの立浪和義がショートのレギュラーに抜擢され、宇野勝がショートからセカンドへコンバートされた。宇野はヘディング事件が取り上げられることが多いが、守備範囲の広さは抜群でセカンドもなんなくこなせたことから、スムーズに配置転換をすることができリーグ制覇を成し遂げた。
1992年立浪も入団2年目から痛めていた右肩への負担軽減を理由に自ら、セカンドへのコンバートを申し出た。その時ショートに抜擢されたのは、のちにガニ股打法でカムバック賞を獲得する種田仁だった。
1999年、福留孝介が開幕からレギュラーを掴み取りショートの李鍾範はセンターへ、この年星野監督が目指したパワーよりスピードを重視した野球を貫き優勝に輝いた。
この年代で印象的なのが、星野監督が行った1988年のコンバート。
新人の立浪をショートとして起用、ショートの宇野がセカンドへ、セカンドの仁村がサードへ、サードの落合がファーストへ、ファーストのゲーリーが外野へ、正捕手だった中尾が外野へ、外野だった大島、平野がオフに他球団へ移籍となった。
この混沌とも言えるコンバートの嵐に対し、谷繁さんはぐちゃぐちゃには感じない全てがスポッとハマっているように感じ違和感がないと評した。また、その真意には、中村捕手を正捕手とするなど世代交代を推し進めたい気持ちもあったのではないかと語った。
1987年宇野選手はショートで130試合に出場、30本塁打でベストナインと、現代で言えばジャイアンツの坂本勇人選手並みの成績を残していたところから、1988年立浪選手がショートで103試合に出場し新人王とゴールデングラブ賞(高卒新人として史上初)をとるに至り結果的には大成功のコンバートとなった。
しかし、星野監督からコンバートを打診された当時の宇野選手は…
「星野さんに『立浪はどう思う?』って聞かれて『いい選手ですね』って答えた。俺より上だとは思わなかったけどね。星野さんじゃなかったら…和義じゃなかったら…素直にウンとは言わなかったかもね。」
また星野監督は、捕手から外野手への二つのコンバートにも関わっている。
中尾孝義さんには「お前はケガばっかりしとるから、捕手はクビや!」と言って外野転向させたが、中尾本人は、言葉は厳しかったが腰の状態を気にかけてくれたのだと思う、と後に振り返っている。
カープ正田耕三選手がプロ野球タイ記録の1試合6盗塁を決めた試合でマスクをかぶっており、このうち5盗塁を許したのが山﨑武司さん。これで捕手失格の烙印を押される形になったが、今となれば打力を生かすための転向だったと理解もできる。同じく捕手から外野でも様々な理由によってコンバートがなされている。
2000年以降のコンバート
福留孝介は1999年リーグワーストの13失策と守備面では期待に応えることはできず、ショートからライトへ転向。持ち前の俊足と強肩を生かしライトのレギュラーに定着。バッティングでもジャイアンツ松井秀喜の三冠王を阻止し首位打者に輝いた。
森野将彦は内野手として1996年に入団後、2002年ごろから外野での起用で一軍出場が増える。2006年の沖縄春季キャンプで落合監督 地獄のノックに耐え抜き外野手からサードへコンバート。ミスター3ランと呼ばれサードのレギュラーに定着した。さらに2014年にはファーストでゴールデングラブ賞を受賞している。
荒木雅博、井端弘和の1・2番通称アライバコンビを2010年にショートとセカンドをそっくり入れ替えた。前年までともに6年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得しており『鉄壁の二遊間』と称されたところに衝撃の配置転換だった。その真意について落合監督は…
「荒木も井端も最大なる欠点を持っている。ポジションを変えることによってその欠点を消してやるのが一番いい。超一流のショート、セカンドには現状ではなれない。コンバートすることによって超一流のショート、セカンドになる可能性を秘めている。」
この年代の印象的なのは、山田監督が行った2002年のコンバート。
セカンド立浪選手を体の状態をみてサードへ、サードのゴメス選手がファーストへ、ファースト山﨑選手が控えへ、ショートの福留選手がライトへ、空いたセカンドに荒木選手、ショートに井端選手が入り、FAで谷繁選手がキャッチャーとなり、中村捕手がトレードでベイスターズに。
この大幅な配置転換も谷繁さんは同じように違和感がないとコメントした。
また、アライバのショート・セカンドのコンバートについて
荒木選手は2012年に…
「こっそり『おごり』という名の魔物が近づいてきていたのかもしれません。甘えている部分がありました。次こそ本当に二塁守備を極められるかもしれない。」
井端選手は引退後に…
「お互いに慣れが出過ぎてマンネリ気味になっていたのかもしれない。遊撃手に戻ってから長くプレーできたのもあのコンバートがあったからだと思う。」
伝説的な二遊間もコンバートされることで発見できることがあったり、マルチポジションで守れることが戦術を多様にでき様々なメリットをもたらす。現状のドラゴンズでも新たな発見を選手たちができることで能力や判断力の向上につながることや、将来的には新陳代謝に必要なしっくりくる配置転換となっていることに期待したい。
澤村桃