カットボールを生み出したのは憲伸、幅を広げたのはオレ!他球団から恐れられた谷繁の“持ち球を新球に変える術”
CBCテレビ野球中継「燃えよドラゴンズ」燃えドラch
吉見一起の“ヨシトーーク”川上憲伸編
元ドラゴンズの絶対的エース・吉見一起さんの初々しいトークが評判の燃えドラch『ヨシトーーク!』。現役時代さながらの絶妙なコントロールで球界裏話や同僚、ライバル話をビシバシ投げ込む!
今回も谷繁元信ドラゴンズ元監督をゲストに迎え、吉見さんにとっては竜のエースとして先輩でもある“川上憲伸さん”をテーマに爆笑トークを展開!代名詞”カットボール”の誕生秘話とは!?吉見さんが驚愕した川上さんの独特な変化球伝授法とは!!普段燃えドラchでディスりまくる憲伸さんを大先輩谷繁さんがディスりまくる進行はかなり新鮮な感じ!
敬意を表しなさい!
今回のお題は“伝説のカットボール 川上憲伸”。
話のネタが決まった途端、それまで溜まっていた思いがあったのか、谷繁さんが堰を切ったかのように話し出す!
谷繁『結構、好き勝手言っているよね』
おっと、いきなり現役時打者に対し、ささやいては心を潰したトラッシュトークがさく裂だ!
谷繁『このチャンネルかな、なんかオレの話になって…あんまり褒めないんだよね、アイツ(笑)。全然敬意を表していないというか。そんなのアイツぐらいだよ』
いきなりのディスりトークに、ニコニコ笑うことしかできない吉見さん(笑)。
吉見『そんなことないと思うんですけどね』
谷繁『いや、あるんだよ、アレは!』
アイツからアレ呼ばわり(笑)
谷繁『憲伸はねぇ、まあ例えで言うとさ、オレがストレートのサイン出すじゃない?勝手にカットボールとか投げてきたからね』
吉見『同じ軌道だから捕れるだろうという…』
谷繁『そう!らしいのよ!それ聞いたの』
相変わらずニコニコしながらも谷繁さんの癇に障らない様、現役当時同様、絶妙なコントロールで言葉を選ぶ吉見さん。
吉見『信頼ですよね!』
谷繁『まあまあ、シゲさんだったら捕れるだろうみたいなね。でもそれだったらオレのサインじゃないじゃない。だったら首振ればいいのになって思う。まあ、バッターからすれば打ちづらいボールだね』
“憲伸の気持ちは重々理解をしているつもりだけど、そこはしっかり先輩を立てろ”と言いたげな谷繁さん。
昭和世代の縦社会で育った憲伸さんだから、分かっているだろうけど、そこは谷繁さんに甘えていたのかなぁ。
肩を外せ!曲がれと念じろ!
吉見『ボクらは川上さんの後輩だし、入団した頃はチームのエースだったじゃないですか。みんながカーブだったり、カットボールをどうやって投げるんですかって川上さんに聞くんですけど…』
谷繁『教えてくれないの?』
吉見『いや、教えてくれますよ。ただ表現が難しすぎて…』
なんだか想像できる!とでも思ったのか、笑いだす谷繁さん。
カーブを投げる多くの人は親指を出しながら抜くという表現を用いることが多い中、どうも憲伸さんはユニークというか、絶対憲伸さんしかできない投げ方を吉見さんに指導したようで。
吉見『川上さんの場合、右肩の関節を外して投げるって言うんです!外したら投げられないじゃないですか!(笑)』
谷繁さん大爆笑!
カーブが肩を外して投げるのであれば、憲伸さんの伝家の宝刀カットボールはどのように投げるのか?今度は手首を外すのか!?しっかり聞かねば!
吉見『カットボールはもっと適当で、“曲がれって思え!”と』
谷繁さん、仰け反っての大爆笑!
もはやマジックの領域だ!
谷繁『まあ、そんな感じじゃないの?(笑)』
あら谷繁さん、意外に冷静なる反応。
吉見さんも納得した様子で語りだす。
吉見『変化球は伝えにくいところはあるんですよ。人によって感覚が違いますから』
吉見さんの“感覚の違い”から谷繁さんがひとつの例を挙げ、話し始めた。
谷繁『佐々木主浩(元横浜ベイスターズ)さんなんてさ、フォークボールを投げ分けるわけよ。左バッターのインサイドに落ちないようにするためには、人差し指側に少し力をかけるとか、逆に右バッターの外側へ落とす時には中指に力をかけていた。フォークボールの投げ分けなんてできる?』
吉見『そんな話聞いたことがあります。真ん中にボールが集まらないようにするわけですよね。右バッターのインコース側にはできるんですけど、外に逃げていく球は無理ですね。実際に佐々木さんのフォークボールを受けていて、左右に落ちていくんですか?』
谷繁『うん、なる!しかし憲伸は野球教室では教えられないよね。憲伸のカーブの投げ方とかカットボールの投げ方とか』
吉見『肩を外せ!ボールよ、曲がれ!って(笑)』
谷繁『アイツが理論的に言っていたら、“お前、それ嘘だろ!”って言えるよね(笑)』
ハイ!本日二度目の憲伸ディスり!でもなんだか新鮮!(笑)
外カットは“オレのおかげ!”
カットボールを日本プロ野球界で広めた憲伸さん。
投げ始めた時、それは魔球の如く効果絶大だったようだ。
吉見『カットボールというのは、日本で投げだしたのは川上さんが最初ですか?』
谷繁『たぶん、そうじゃないかな』
吉見『ヤンキースのマリアーノ・リベラを真似して使い始めたのですよね?』
谷繁『だと思うんだよね。ドラゴンズに来た時は、憲伸はカットボール投げてないのよ。キャッチボールの時に色々と試していて、パッと出てきたらしい。当時はストレートとカーブとフォークだったの。スライダーはホントにショボかった。バッターに一番合う、危ない球だったの。彼自身、手詰まりになってきていたわけ。そこでカットボールを生み出した。左バッターに使ったらもう、面白いように詰まるわけよ。それからというもの、困ったらカットボールだったね』
左バッターのバットを一体何本へし折ったのだろうか!
そんな記憶が今でも鮮明に蘇る憲伸さんの魔球カットボール!
ただそこは猛者が揃うプロ野球界。
カットボールのキレも少し落ち始め、1~2年で対戦バッターも対応し始めてきたと、谷繁さんは当時を振り返る。
谷繁『その辺りから外から入れるカットボールを使い始めたの。幅を広げるためにね。最初は左バッターの外のカットボールはほとんど使っていなかった』
吉見『何年前か忘れたのですが、ヤクルトの宮本慎也さんに言われたことがあって、“外カットを日本に持ってきたのは憲伸だ”って言われたんです』
谷繁『(きっぱり)オレだよ!』
持ち球を別球に見せるテクニック
圧倒的に抑えている時は勝負球を決め、そこから遡って配球を決めていたであろう谷繁さん。ただピッチャーの持ち球に手詰まりを感じた時、どうすれば抑えられるだろうと思案した結果が、持ち球をコントロールして“別球”に見せる、対戦打者にとっては錯覚させるボールを投げさせることだった。
吉見『“外カット”は川上さん。ボクも谷繁さんからストライクを投げるフォークを教えてもらいました。(宮本さんから)それは谷繁さんの教えか?と言われて。他チームからは色々新しいことを考えてくる谷繁さんが厄介だと思われていたようです。外カットもそうだったんですね』
谷繁『そうです。憲伸をリードするには、自分の中でも手詰まりになり始めていた。幅を広げるために、同じ球種なんだけどコースを変えていく。岩瀬の外スラもそう』
相手チームから“死神の鎌”と恐れられた岩瀬仁紀さんの必殺スライターも谷繁アレンジが加わっていたのか!
吉見『外スラというのは20年前にはあったのですか?』
谷繁『あんまりなかった。自分の頭の中に使うっていうのがなかったね』
吉見『ボクはフォークでストライクを取るということと、外スラというのを、この世界で覚えたというか、使うようになりました』
谷繁『右ピッチャーだったら、右バッターの外に曲がっていくわけじゃん。左バッターのインサイドに食い込んでくるボール。たぶんそういう考えしかなかったよね。それが左バッターの外スラというのは、投げた瞬間、左バッターはボールと思うんだよね。そこから入ってくるからカウントが取れるし、空振りも取れるボール』
吉見『あの外スラって、投げた瞬間ボールに見えるって今言われたじゃないですか。投げているボクたちからすれば、すごく甘いボールに見えるんですよ!』
捕手の見立てと投手の見立てのこの違い!
いやあ、実に興味深い!
吉見『そして(ボールは)中に入っていくので、打たれる気がするんですよ。でも打たれない。(バッターは)見逃すし、空振りしてくれる。カットボールこそ、投げた瞬間ボールと感じます。それがボールからストライクになるのですけどね』
谷繁『ちょっとね。曲がる幅が狭いだけで。バッターって、ピッチャーが投げた時、見極めるところがある。見極めた時、ボールだと思うと動かない。投げた瞬間にボールだと思うと見逃しだよね。ボールからストライクに入ってくるボールだから』
吉見『反応できない?』
谷繁『できない。できても遅くなったりしてね。最初の頃、山をかけられない限りはそんなに捉えられることはなかったよね』
吉見『左バッターが外カットを待つことはそんなにないってことですか?』
谷繁『だって内側があるから。待てないわけでしょ?』
内角もあるぞ!あるぞ!というリードの中で外からボール気味に入ってくるカット。
そりゃあ、バッターは“騙された!”と、バッターボックスで唸るしかありません!
カットを生み出したのは憲伸、幅を広げたのはオレ!
谷繁『自分でいうのもなんだけど、オレが憲伸の幅を広げた!ガハハハハ!なんか自分のカットボールみたいな感じでさあ、色々と語っているけど。憲伸が生み出したのは確かだけど、幅を広げたのはオレなんだけど、アイツはそれを言わない!ガハハハハ!』
吉見『やっぱり強烈でしたか?カットボール』
谷繁『強烈だったよ』
吉見『岩瀬さんのストレートは曲がるじゃないですか。あれとはまた違うんですか?カットボールとは』
谷繁『ちょっとだけ動くのよ。そして岩瀬はボールの回転がめちゃくちゃ汚い。あんなに回転が汚いのに、あんな良いピッチャーってなかなかいないよ。ただ2010年前後はちょっと動くボールが主流になってきたじゃない。ちょっとだけ芯を外していくという』
カットボールはキャッチャーが受ける手前でちょっと動く。
そして岩瀬さんのストレートも同じくちょっと動く。
それって同じではと思いながらも、谷繁さんは違うボールと説く。
その違いは縫い目の握り?それとも何?
この辺りは機会があれば、もう少し深掘りしてみたい。
天才肌は天邪鬼
見様見真似でカットボールを会得し、ピッチングの幅を広げたり、またバッティングもフィールディングも現役時代、抜群の上手さを見せた憲伸さん。いわば天才肌。気になるのは、人とは違ったユニークな練習とかをこなしていたのだろうか。
谷繁『憲伸は飽きっぽいよね?練習とか。この間この練習を集中してやっていたのにもう違う練習しているぞって感じじゃない?』
吉見『トレーニングコーチから聞いた話なんですけど、チームで決められたメニューがあるじゃないですか。たとえばキャンプ中とか。そういう時に文句言うらしいんですよ。“今日フリーでいいよ!”って言ったら、めちゃくちゃ練習するらしいんですって。“アイツ、逆なんだよなぁー”っていつも言ってましたよ』
結論、天才肌は天邪鬼(笑)
吉見『川上さんがアメリカに行く前、ロッカーが隣だったんですよ。岩瀬さん、川上さん、ボクっていう並びで。登板日以外はそこら辺にいるお兄ちゃんって感じ。登板日は話しかけるなオーラ全開でしたね。横に居られなかったです。先発投手あるあるなんですけどね。一番雰囲気を感じる人でしたね』
かつて燃えドラchで公開されたイバケントークでもこのロッカー話
は面白おかしく紹介されていましたね!
登板日以外、先発ピッチャーは他の選手にとってやりたい放題、じゃまし放題の鬱陶しい存在なのでしょうね、きっと!(笑)
(竹内茂喜)