岩瀬・藤嶋対談、抑えの神髄を伝授!「抑えは…とにかく難しい!」
「【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム」
キャンプMVPは京田
カレンダーも早いもので弥生三月。一か月に及んだ春季キャンプも無事終了!多くのケガ人も出ず、「100点近い数字をあげてもいい」と総括した与田監督。8年ぶりのAクラス、9年ぶりの優勝への手ごたえを口にした。番組ゲスト解説者の谷繁元信さんは今キャンプMVPに京田を指名した!
「彼は今年、選手会長になりましたし、責任感というのがグラウンドでも表れていたと思うんです。あとバッティング練習時に感じたのですが、“打球音”が変わりましたね。誰よりも良い打球音がしていた。今年はバッティングにも期待です!」
ここで予期せぬ展開が!キャンプの成果を披露しようと意気揚々名古屋へ帰ったナインを待ち受けていたのは新型コロナウィルスの猛威。まさに野球どころではない状況。感染拡大を受け、オープンの残り全試合が無観客試合となる異例な展開となったわけだが、3月20日開幕を目指し、調整を整えていかなければならないのは何ら変わりない。優勝を目指すためにはこの時期に一年間を戦い抜ける戦力を整えなければならないのだ。
抑えは一体だれが務める?
2月12日、与田監督はキャンプの中盤に差し掛かった時点で早々と開幕投手に大野雄大投手を指名。大野にとって早期指名は今季期待の表れ。万全の準備を整え、敵地広島に乗り込むはずだ。そこで気になるのは未だ決まらぬ抑えの切り札。開幕投手同様、今年一年チームを支える重要な役割だけに与田監督も慎重になるのは理解できる。番組では常勝ドラゴンズを長年支えたバッテリー、谷繁さん、そして岩瀬仁紀さんが登場!今年、抑えの座を虎視眈々と狙う藤嶋健人投手とクローザー対談が実現!通算407セーブを誇る竜のレジェンドが“抑えの神髄”について語った。
抑えは点取られても勝てばいい!
昨年オフからクローザーを目指し、体力強化、そして新たなる球種マスターに努めた藤嶋。岩瀬もまた入団時に任された中継ぎから抑えに転向した経歴を持つだけに貴重なる経験談は藤嶋の心を打つ。
「セットアッパーをやっていた頃、ボクの場合は後ろのピッチャーにつなぐ意識で投げていた。ただ抑えというのはチームに勝たせて終わらせないと絶対いけないわけ。自分が点を取られも勝てば良いわけで。そう割り切ってずっと投げていた」
“ゼロに抑える”ことしか頭になかった藤嶋には岩瀬さんの話はまさに目からウロコだった。さらに岩瀬さんは藤嶋の投球を分析した。
レジェンドたちの武器をモノにする!
「藤嶋の良さというのはまさにテンポの良さ。そして打者が自分のタイミングで打てないリズムで投げられるところが他の投手にはない特徴だと思っている。投げ方が上原(元巨人)に似ているよね」
上原は藤嶋にとって憧れであり、まさに目指すべき存在。
「上原も人と違うテンポで投げられる。決してバッターの“間”で投げさせない。その良さは継続してやってもらいたいし、その中で決め球という点において真っすぐ以外でもうひとつ、自信が持てるボールがあれば抑えとしてやっていけるはず」
この岩瀬の助言はまさに藤嶋が今季抑えの座を獲得するために取り組んできた最大なるテーマ。なんとか勝負球にしたいと今、習得に励んでいるのがフォーク。キャンプ序盤、日本人メジヤーリーガーのパイオニア、野茂英雄さんからフォークの指導を受け、手応えをつかんだと藤嶋は言う。
「今までボクは人差し指を縫い目に引っ掛けて投げていました。野茂さんは中指を投げなさいと教えてくれました。野茂さんのイメージは左バッターから見ると、外へ逃げていくような感じで使えるよと。ただボクが投げてみるとスライダー気味に落ちていくんです」
だからこそと藤嶋は続けて秘策を語り続けた。
「実は今まで投げていたフォークが野茂さんの教えてくれた軌道でボールが落ちるんですよ。だから右バッターには今までのフォークの握りを、左バッターには野茂さんに教えて頂いた握りで投げてみようかと。そうすれば両方とも外に逃げていくフォークとなります。これが投げ分けられるようになれば武器になるはず」
この2種類のフォークの投げ分け、実はハマの大魔神・佐々木主浩さんも武器にしていたと谷繁さんはベイスターズ在籍時を振り返る。藤嶋が聞けば自信が確信に変わったに違いない。あの佐々木さんが成功した魔球であるならばと。
抑えの神髄とは
最後に守護神の座を目指す藤嶋へ岩瀬さんは“抑えの神髄”を語ってくれた。
「抑えというところは…チームの勝敗に直結する。その分、背負うモノは大きい。打たれた時は物凄く苦しい。でも見ていたら藤嶋クンはすごく前向きだよね!だから性格的に抑えは向いていると思う。ただ…ホジティブだけでは務まらない。抑えという場所を背負って投げているという気持ちは常に持っていてもらいたい。とにかく…(抑えは)難しいよ!」
客観的に見てタイプが全く異なるふたり。ただ勝利への貪欲さ、執念を持ち合わす気持ちにおいてはなんら変わらないはず。谷繁さんも、藤嶋が持つメンタルの強さは抑え向きと太鼓判を押す。昨年の実績で岡田を使うか、抑えの座を勝ち取るために真っ向勝負を挑む藤嶋を使うか、今しばらく与田監督の決断に注目したい!
がんはれドラゴンズ!常勝ドラゴンズ!
(竹内茂喜)