完全復活したドラゴンズ大野雄大、ノーヒットノーランの裏側にあったキャッチャー2人の思惑
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
皆さんは、大野雄大を検索したことがあるだろうか?検索結果には外見もキャラクターも異なる2人の大野雄大さんが出てくる。そう、今週のサンドラのゲストはそのお二人なのである。
Dai-ceで活躍する大野雄大さんは、ダンスもルックスもかっこいいアーティストだ。検索結果でしか共演することがなかった二人が共演するスタジオで和気あいあいとスタート。そして驚くべき事実としてこの二人もまたエゴサーチ(ネット上で自分の評判をチェックすること)でお互いを知っていたのだ。
そんな大野雄大さん(Dai-ce)は大野雄大投手(ドラゴンズ)がノーヒットノーラン達成した時にたくさんのおめでとうメールが来て、しっかりありがとうと返していたエピソードも。そんなつながりをも生み出す偉業をお祝いするパーティーとW大野雄大の生出演を振り返る。
ノーヒットノーランの裏側にあったキャッチャー交代 バッテリーそれぞれの想い
9月14日に達成したノーヒットノーランを祝して、福田永将選手、高橋周平選手、加藤匠馬捕手、笠原祥太郎投手、藤嶋健人投手、梅津晃大投手、が集結した。それぞれの選手たちの目線でノーヒットノーランの試合を振り返り、普段の試合では見られない大野雄大投手の人となりに迫る。
スタメンマスクでバッテリーを組んだ加藤捕手と試合の前半について試合の序盤を振り返る。
大野投手の試合前の感触は普通だったと感じていたが、試合に入ると調子の良さが表れていたようで3回くらいからその気配に気づいていたという加藤捕手。加藤捕手は「何が良かったのか?」と聞かれると、興奮気味にこう答える。
「(あの日のピッチングは)全部良かった、まず一番はストレートが良かった。」
そんな昂ぶった精神状態の中、悲劇は訪れた。タイガース・マルテ選手のスイングのフォロースルーが加藤捕手の手の甲に直撃し、病院に向かう事態になり途中交代となる。その瞬間に大野投手は達成はもう無いなと感じたようだ。それに対して加藤捕手は不敵な笑みを浮かべながらこう話した。
「でも、キャッチャーが変わったから達成したかもしれない。」
いろいろなことが絡んで成し遂げられる特別な試合だとみな同意していた。途中交代の悔しさもある中、冷静に振り返られる加藤捕手がこの試合で感じたものは多かったのだろうと思わせるコメントだった。ちなみに途中交代した加藤捕手にも、大野奨太捕手と同様に試合の記録球が贈られたことからもバッテリーの信頼関係が伺える。
達成をアシストした鉄壁の守備陣
2度の強い当たりのサードゴロにも自身では普通と語る高橋選手。各選手の堅い守備がありながらも、大野投手は終わりが見えるにつれてスカしにかかっていたため、打ち取っても冷静な振る舞いを見せていた。
そして迎えるフィナーレのあの姿は、最後の打球が悪かったから格好がつかなかったのだと語る。フライなら考える時間があるので、落ち着いてカッコいいガッツポーズが決められたのに、サードライナーのため慌てて感情が爆発し、奇跡的にダサいと話題のジャンプが完成したのである。
また試合翌日に唯一のエラーについて尋ねられた京田陽太選手は大野選手にむけこうコメントする。
「あのエラーがなければ完全試合だったかもしれないんで、もっと練習してうまくなれるように頑張ります。笑顔でハイタッチしてくれる大野さんが好きです!」
それに対して大野投手はこう語る。
「翌日に聞くのはちょっと酷ですね(笑) ほんまにあれがあったから、大山選手にフォアボールを出せたし、(木浪選手のゴロを捌くファインプレイも)あの球は京田じゃなきゃ捕れなかった。」
フォローではなく、心からそう説明していて高橋選手はじめ、他の選手も強く同意していた。こういったひとつのプレイがそれぞれの選手の大切なマイルストーンとなるのだろうと感じる。
最終回にあった完璧な準備と駆け引きが生んだドラマ
負傷交代した加藤捕手に代わって大野奨太捕手が最終回までの女房役を務めた。その突然降ってきた機会を大野捕手はこう語る。
「公式戦で初めて(バッテリーを)組んだ試合だったので、正直どうなのかなという感覚はあったんですけど(サインに首を)振らないなと思っていた。素晴らしい試合を経験させていただけたことを感謝している。」
そんな状況の中勝敗と、それ以上の記録を決するという緊張感の中、梅津投手が忘れられないシーンがあると言う。
「9回大野(奨太)さんがバーって走ってきてロッカーで相手のデータを最終回調べてからヨシって行ったんですよ。それがめちゃくちゃ印象に残っている。」
抜かりなく準備して漏れたヨシと言う確信。自信をもって挑めたからこその達成だったかもしれない。
高橋選手もこのエピソードに思わずこう言った。
「全部飲んでいいっすか?いまの話はグッときた」
さらに大野投手はこんな事を考えて投げていたと言う。
「9回は全部大野捕手に任せてたんですよ。それは信頼していたというのもあるし、大野(奨太)さんのせいにしよう打たれたらと」
「大野さんのサインで打たれたんでしょうという笑 ヒット打たれたら知らんぷりしようとするつもりだった笑」
とんでもない緊張感の中だからこそ、振り切ってそう考えることで断ち切れたものもあると思う。それをしっかりと準備で応えた大野捕手。それぞれの思惑とそれぞれの努力が実って成し遂げられたことだと改めてわかる。
そんな時を同じくして、ブルペンではまた違ったドラマがあった。ノーヒットノーランの気配がある試合では、記録が途切れないように口に出さないという暗黙の了解がある。1人だけその掟を破ってまでも熱い気持ちをぶつける人物がいたと藤嶋投手は語る。
「誰一人として最初はまだヒット打たれていないということを言わないんですが、6回に祖父江大輔投手が 『マジで頼む!!』 周りのみんなが「はぁああ!」となったが、そこに構わず祖父江投手は『もういいだろ~』」と返したんですよ。」
大野雄大は身内キラー?選手への質問で素性に迫る
「大野投手の大嫌いなところ、直して欲しいところは?」という質問に対する藤嶋投手の答え。
『投げ切って欲しいところでHR打たれる』
「9回大野さんが最後まで投げるだろうと、リリーフ陣も気を抜いていた。(コーチから)もしかしたら1点でも取られたら投げるかもしれないから1回準備しといてって言われた瞬間に、ベイスターズのソト選手にガツンとホームランを打たれてそのあと投げました。」
後輩からのキラーパスに対して、大野投手はさすがの余裕でこう繋げた。
「フォアボールを嫌がってホームランを打たれている。実はこのホームランがあったから、次の試合はノーヒットノーランできた。大山選手にフォアボールを出せたのはこれのおかげ。」
「雄としての魅力は?」という質問に対しては『顔』と3選手が答えた。普段はモテないのに、なぜかドラゴンズ選手の身内に好かれているという。
福田選手いわく、福田選手のお母さん、祖父江投手の奥さん、伊藤準規投手の奥さんは大野投手がお気に入りの模様。このパーティーのような場での無邪気な表情を見ているとその人気も肯ける気がする。来シーズンはマウンド上で何度も弾ける笑顔を見せてイケメンランキングに殴り込みをかけてほしい。
大野雄大の2019と来年へ向けて
0勝の昨年から、プロ9年間で今年にかける思いが一番強いと意気込んで始まった2019シーズン。『間』をテーマに取り組んで調子を取り戻し、キャンプでの首脳陣、解説者の評価も高まっていった。春季キャンプ終盤の練習試合でゲレーロからホームランを打たれ、不安を覗かせたが、首脳陣からの信頼は揺らがず、ナゴヤドームでのホーム開幕戦を託された。
「去年は去年。自信を持って投げて欲しいと言われて変われた。」
その言葉通り3試合目で573日ぶりの勝利をおさめ、以降も順調に登板を重ねた。QS率はリーグ2位の安定感を誇った。そして、記憶に新しいノーヒットノーラン達成。それらの結果を評価されての侍ジャパン選出。
大野投手の一年間を振り返る心技体のグラフを見ても右肩上がりでシーズンを終えた。好調を維持し続けるのは難しいことだが、確実に今年経験できたことは大野雄大の剛健な基礎になることだろう。大野投手は侍を経験して学んだもの得たものは?との問いかけにこう答える。
「中継ぎという形で呼ばれて、先発ピッチャーがしっかり試合を作って終盤まで投げてくれるとすごい助かるなと。スターターとして来シーズンきっちりイニング投げたいなと思いました。」
大舞台でも、しっかりとシーズンの登板に結びつける意識がチームを背負うピッチャーとしての自覚を物語っていると感じる。『2年連続最優秀防御率』という目標も掲げ、ドラゴンズを勝利に導いて欲しい。