バットに対する“貪欲さ”!石川昂弥、あきらめない開幕一軍スタメン!
「【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム」
一旦リセット、選手ファーストの調整を
新聞を広げればコロナ。テレビをつければコロナ。そしてネットをつなげればコロナと、新型コロナウィルス感染拡大が止まらない。日本プロ野球も当初予定していた3月20日の開幕を延期。現在では4月24日を目指し、調整を進めているとのことだが、タイガースの3選手に陽性反応が出るなど、事態は日を追うごとに変化。先行きは不透明な状況だ。何もなければ今頃無事開幕し、日本各地の球場で大歓声が起きていたはずだと思うと、この“目に見えない敵”に対し、どうすることもできない苛立ちとともに、怒りしか感じない。今我々がやれることは不要不急な外出は避け、これ以上感染拡大を広げないこと。大好きなプロ野球を取り戻すためにやれることはなんでもやっていきたい。ただその一心である。
「正直なところ“集中力が落ちてきました”という選手もいる。それは当然なことだと思う。選手たちの気持ちをリセットさせる環境を我々が作ってあげなければいけないと思っている」
前代未聞のこの事態に与田監督は選手ファーストで対応しようと懸命だ。選手の思いはそれぞれ。順調に調整を進めてきたベテラン大島外野手は冷静にそして淡々と答える。
「ボクらも開幕したいという思いはありますが、こればかりは仕方ないから」
反対に調子が一向に上がらず、時間が少しでも欲しい藤嶋投手は調整に勤しむ。
「ボク自身はオープン戦で結果が出ていないので、しっかりそれをプラスに捉えて、練習していきたい」
まずは新人王、そしていつかは三冠王
そして藤嶋同様、開幕が先延ばしとなることをしっかりプラスにしようと考える選手がいる。与えられた時間を有効活用、開幕一軍入りを虎視眈々と狙うスーパールーキー、ドラ1の石川昂弥だ。
「プロでの目標は三冠王」
入団会見で掲げた大目標。高卒ルーキーとは思えないビッグマウスはサンドラ初出演時でも健在だった。
「一年目から活躍して新人王を獲得。そして与田監督を胴上げしたい」
言葉を替えれば、自分が活躍して自分の力で優勝する。なんとも頼もしい18歳ではないか!ドラゴンズでは稀有な存在である。
物怖じしないバットおねだり
何事にも動じず、物怖じしない大物ルーキーのここまでを振り返ってみよう。一年目のキャンプは二軍の読谷でスタート。すると初日からさく越えを連発。筆者も間近で彼のフリーバッティングを見たが、日本人であれほど気持ちよくボールを飛ばす打者は初めて。しかも高卒ルーキー。何度も“凄いっ”を連発したことを今でも記憶している。まさに“金が取れる打者”であることは間違いない。
その実力はすぐに発揮された。2月7日に行われた沖縄電力との練習試合で早速タイムリーを放つなど、実戦での強さを見せつけた。キャンプ終盤、左肩の違和感を訴え、バッティングは封印。別メニュー調整を余儀なくされたが、完治に時間は要さなかった。
スイングが解禁された3月14日、タマスタ筑後で行われたホークス二軍戦での初打席。いきなりヒットを放ち、左肩の心配を一発で吹き飛ばした。その福岡遠征で石川昂は驚きの行動を見せる。打撃練習中、二軍調整していた内川、柳田というホークスを代表する左右の好打者に対して、バットをおねだりする大胆さを発揮!
「どういうバットを使っているのかなと思って。意外と軽くて、でも結構ヘッドが効いていました」
傍から見ても、バットに対する“貪欲さ”は新人ばなれしているように見えた。そこもスーパールーキーと呼ばれる所以だろう。
悠々とダイヤモンドを一周
17日、由宇で行われた対カープ二軍戦では内川からもらったバットを早速使用。相手は一軍の面々も毎年きりきり舞いさせられている左のエース・ジョンソン投手。復帰後初のスタメン4番として打席に立つと、しっかり結果を残すタイムリーツーベースを放った。
「復帰していきなり4番を打たせてもらったので、その期待に応えたいと思っていましたし、結果を出して一軍でやれるようにもっともっと打っていきたいです」
その言葉通り、そこから5試合連続ヒットと結果を出し続けた石川昂。そして24日、地元ナゴヤ球場の対バファローズ戦で待望の一発が飛び出す。
「今までの試合ではなかなか打球が上がらなかった。その中で一本出たのは良かった」
プロ入り初アーチに興奮せず、悠々とダイヤモンドを一周。そんな大物感漂わせる孝行息子に仁村二軍監督も目を細める。そしてこう言葉を残した。
「1回一軍で見てもらいたい」
一球で仕留める
その時はすぐに来た。翌日の25日、ナゴヤドームでの対ジャイアンツとの練習試合。3番サードで先発出場。結果は3打数ノーヒット、2三振と結果は残せなかったものの、貴重な経験を積んだ。
「3打席の中でしっかり打てるボールは1、2球あるかないか。良いバッターはそれをしっかり打つことができる。そういうバッターになりたい」
そして課題もしっかり挙げた。
「一球で仕留めることが今後の課題として練習に励んでいきたい」
翌日、二軍に戻っての二軍練習試合で課題としていた狙い球を一発で仕留めるバッティングを早くも見せつけた。順応性の高さは相当なものだ。この日のゲストコメンテーター、井端弘和さんも彼のバッティングには一目を置く。
「反対方向に大きいものが打てたのは、彼の持味だと思うし、そこでホームランを打つあたり、さすがだなと思います。結果は出なかったものの、一軍を経験したのはこれからの彼にとってはプラスになるはず。一軍投手のすごさを見て感じ取れたこと。そのイメージを頭の中に持てたのは大きい。あとは打つためにどれだけ練習するか。それだけです!」
コロナウィルスで重苦しい空気が流れる世の中。そんな時こそ最高のヒーローが現れることを期待したい。石川昂弥こそ、まさに適役ではないか。高卒ルーキー?経験がない?そんな規格に当てはまる野球人ではないことをこのキャンプ、オープン戦で立証済!清原和博さんが残した高卒一年目の記録、ホームラン31本を超える活躍を見てみたい。だからこそ与田監督にはドラゴンズファンの総意として是非ともお願いしたい。
石川昂弥!開幕からスタメンだがや!
がんはれドラゴンズ!われらのドラゴンズ!
(竹内茂喜)