ホクホクの炒飯や、ピリッとした辛味がクセになる熱々の麻婆豆腐。時々、無性に食べたくなる味があるのが、大衆中華料理店、通称「町中華」です。人気町中華には必ず、長年愛されてきた「常連メシ」が存在します。常連客を唸らせる「看板メニュー」には、一体どんな“ルーツ”が隠されているのか？

今回は、愛知県名古屋市にある「夜来香」の焼き餃子を調査しました。

名古屋のど真ん中！県外や海外のファンもいる超老舗の焼き餃子

名古屋市中区栄にある「夜来香（エイライシャン）」は、人だかりができるほどの人気店。看板メニューは、一口サイズが大人気の焼き餃子です。

（40年通う常連客）
「名古屋の餃子＝夜来香の餃子」

お客さんは、愛知県内だけでなく、遠方からもやって来ます。「夜来香」の焼き餃子を食べるためだけに、大阪・東京・岐阜から集まったグループもいました。

（大阪から来た常連客）
「餃子のニンニクの広がり方が、大阪と全然違う。広がり方が普通の餃子と違って…なかなか言葉にできない！」

さらには、名古屋出身の奥さんの故郷に帰省中で、「夜来香」のファンだというフランス人家族もいました。

（フランス在住・帰省中の妻）
「野菜がたっぷり！野菜が多いので、どんどん食べられちゃう。野菜の甘さですね」

甘さの秘密は、野菜。野菜と合い挽き肉が8：2の割合で入っています。キャベツとニラ、そしてちょっと変わっているのがタマネギ。たっぷりの野菜に、火が入ると餃子を頬張ったときに“独特の甘味”が口の中に広がるのです。若い女性たちに支持されるのも、納得。中には、餃子だけ頼み、〆にライスを注文して、「餃子丼」にする常連客もいました。

元プロ野球選手も夢中！「最高の食べ方は2～3個いっぺんに食べること！」

常連客の中に、元阪神タイガース選手で“浪花の春団治”と呼ばれた川藤幸三さんの姿もありました。

（元阪神タイガース選手・川藤幸三さん）
「ナゴヤ球場の中に、夜来香の餃子が入っとった」

名古屋で仕事があれば、必ず「夜来香」に立ち寄るという筋金入りの常連客！取材した日も、偶然来店していました。

（元阪神タイガース選手・川藤幸三さん）
「わしらタイガースはな、現役のころから先輩たちと夜来香に通って、わしらは後輩に夜来香をつないで」

代々、タイガースの選手御用達の店のようです。「夜来香」の餃子の魅力について聞きました。

（元阪神タイガース選手・川藤幸三さん）
「一番の魅力は、（サイズが）小さいやろ？ピョッと食べれるやろ？2～3個まとめて食べれる」

２～３個いっぺんに食べるのが、夜来香の餃子の最高の食べ方だといいます。実際に店内を観察していると、２～３個まとめて食べている客がほとんど。この食べ方は、冷たいビールとも相性抜群です。大量の餃子を手土産に、川藤さんは帰っていきました。

「名古屋の人にも焼き餃子を食べてほしい」戦地中国で食べた味を独学で再現

とにかく熱狂的ファンが多い「夜来香」は、名古屋の“焼き餃子発祥の店”です。名古屋で初めて焼き餃子を始めたのは、亡くなった先代の社長・小縣新一郎さん。

（2代目代表取締役・小縣潤一郎さん）
「（父が）中国に出兵して大佐として兵隊を率いていた。戦地の中国で焼き餃子に出会った」

先代社長は戦時中、陸軍大佐として中国に出兵。そのとき出会った料理が、当時まだ日本では珍しかった「焼き餃子」でした。当時、餃子といえば「水餃子」が主流でしたが、現地で食べて感動した焼き餃子を、名古屋の人にも食べてほしいと考え、中華料理店立ち上げを決断しますが…

（2代目代表取締役・小縣潤一郎さん）
「中国の料理人にお願いしたが、『焼き餃子は作れない』と」

当時、本場中国でも水餃子が圧倒的主流で、焼き餃子を作れる中国人はなかなか見つかりません。困った先代社長は、現地での記憶を頼りに、独学を重ね、焼き餃子を開発。昭和30年、ついに中華料理店「夜来香」を創業することができました。店名の由来についても聞きました。

（2代目代表取締役・小縣潤一郎さん）
「歌姫の李香蘭が軍の慰安に来た。代表曲「夜来香」の歌声に感動して、日本に帰って店を始めるなら『夜来香』」

先代社長が戦地中国で感激した、焼き餃子と歌姫の声。そのときの感動は、70年以上経った今でも、名古屋のど真ん中で息づいています。

CBCテレビ「チャント！」8月15日放送より