32時間ノンストップで舞を奉納する「花祭」のクライマックスは“顔にみそ”!?
32時間ノンストップのお祭りで、一つの釜を囲み夜通し舞い続ける人々!その祭りに魅了される人は後を絶たず、遠方からの観客だけでなく、中には祭りのために移住してきたアメリカ人もいます。愛知県東部に位置する奥三河の山間部、東栄町月地区で行われる「花祭」を取材しました。
32時間ぶっ通し!湯気に神様を宿らせて釜の周りで踊る「花祭」
700年続く伝統の祭があると聞いて訪ねた月地区。大きな釜に湯を沸かし、何やら祈るような様子の人々がいました。
(月花祭保存会・藤田鉄治会長)
「(Qここで何が行われる?)月地区の花祭。全国の神様をここに呼ぶ」
東栄町の10地区で、11月から年明け1月まで順次開催される「花祭(はなまつり)」。地区により様々な特徴はありますが、共通するのは釜に湯を焚いてその湯気に八百万の神様が宿るとされていることです。天井に飾られているのは「湯葢(ゆぶた)」と呼ばれる祭具。それぞれに民衆の願いが込められ、湯気が包み込むことで、願いが叶うとされています。
釜に神様を呼び込むのは森下家。長い世襲制の中で「花太夫(はなだゆう)」と呼ばれる月地区で行われる花祭のリーダーを務めます。
吹き上げる湯気になびく5色の湯葢。一堂に会する神々の気配を感じさせます。「湯立(ゆだて)」の神事が終わると、町民たちが代わる代わる様々な舞を奉納するのも花祭の名物。花祭では、夕方から翌日の昼まで舞がぶっ通し!さらに舞の前後にある神事を合わせると、実に32時間も続く超過密スケジュールです。
一番の見どころは鬼の舞!遠方から来る観光客や移住した人も
祭りを楽しんでいるのは舞い手や地元民だけではありません。観客は日本全国各地から訪れます。
(月花祭の常連客・村田もも子さん)
「福岡県から来ました。毎年必ず来ている。(Q何年くらい?)25年。子どもの舞を踊っていた人が大人になって、(今では)そのお子さんが舞っている。脈々と受け継がれるさまも見ていると面白い」
地元で愛され、全国からのファンも駆けつける花祭ですが、今年は初の試みとしてキッチンカーが登場。この町で古民家ダイニングを営む夫婦が、近くに飲食店がない月地区の祭りを自分たちの料理で支えたいという思いから、キャンピングカーを手づくりで改造しました。
さらに、奥様のタナさんは、生粋のアメリカ人。花祭に魅せられて、名古屋から月地区に移住しました。そんな夫婦が花祭に魅了された一番の見どころが夜に行われる「鬼の舞」。月地区では3体の鬼が深夜から明け方にかけて登場し、山を割り、大地を耕し、人々に実りを与える姿を舞いで表現します。
(古民家ダイナー月猿虎・タナさん)
「特に鬼が一番インパクトある。アメリカだったら…『NG!』『危ない!』。あれは面白い」
さらに鬼たちは、まさかりをもって会場を飛び出したかと思うと、焚き火の山を跳ね上げ、あたりに火の粉をまき散らし、祭りを盛り上げます。これは、月地区でしか見られない光景です。
顔に味噌を塗る!?最後は釜からお湯を観客にかけてフィナーレ
32時間ぶっとおしの花祭り、2日目の朝には変わった舞いも行われます。逃げる観客を追いまわし、捕まえて顔に「みそ」を塗りたくるのです。
(観客)
「(顔に味噌を)塗られると、健康でいられる。楽しい」
タナさんも、顔にみそを塗られて喜んでいました。健康を願う縁起物は味噌だけではありません。2日目の午後、再び観客が埋め尽くす会場でクライマックスが!
(月花祭保存会・藤田鉄治会長)
「これは湯ばやし。最高潮」
最後は神聖な釜の湯を観客に直接ぶっかけ、祭りは終わりを迎えました。
(月花祭の常連客・村田もも子さん)
「毎年来ても楽しい。神聖なものとガヤガヤしたものが隣り合わせ、それも魅力」
長かった奉納の舞が全て終了すると、世襲で13代に渡り祭りを支える、花太夫の森下さんが観客のいなくなった会場で1人、2時間に及ぶ神事で神々を鎮め、おかえししました。
700年の伝統を守り、32時間ぶっ通しで行われる月地区の花祭。月地区の代表者にOMATSURIちゃんの手形をいただきました。徹夜で臨む覚悟を決めれば、きっとあなたも、不思議な魅力に取りつかれるはずです。
CBCテレビ「チャント!」12月13日放送より