ちょっとした事故!?「これがデフォルト」豪快すぎる山車パフォーマンスの「若宮まつり」
重さ4tの巨大な山車が大回転する「若宮まつり」。大迫力の神輿行列が縦断するのは、なんと名古屋市のど真ん中です。しかも祭りの参加者には、ほぼ地元民がいません。その裏には、歴史をさかのぼる「ある事情」と、祭りの存亡をかけた思いがありました。300年以上の歴史を誇る祭りの現場で、タレントの寺坂頼我くんが一番アツい人「OMATSURIちゃん」を探します。
「これは勲章」4tの山車を担ぐ男たちの体に異変が
毎年5月15日・16日に開催される「若宮まつり」。名古屋市中区栄にある「若宮八幡社」と「那古野神社」が、かつて隣接し一緒に祭りを行っていた繋がりから、その間を神輿行列が往復し、無病息災・五穀豊穣などを願います。
見物人の目を引くのは、栄の道路を封鎖しながら練り歩く巨大な山車。高さ6m以上にも及ぶ「福禄寿車」の重量は、なんと約4tにもなります。
重たい山車を担ぎ、往復4時間以上もある道のりを歩く男たちの肩にはコブが!「若宮まつり」を愛し、5年以上担ぎ続けたあたりからこの「担ぎダコ」ができてくるといいます。
(山車を担ぐ是澤賢さん)
「(うれしいもの?)これは勲章」
華やかなからくり人形の下では…人が足りずギリギリの運営
そんな巨大な山車が道中で披露するのが「からくり人形」。七福神の福禄寿のからくりを筆頭に、合わせて4体が華やかな演技を繰り広げます。
そして今回特別に、山車の中を見せてもらえることになりました。外から見ると、可愛らしい子どものからくりが逆立ちをしたり、太鼓を叩いたりして無邪気に遊んでいる様子が演じられていますが…。その裏側では、3畳ほどのスペースに男たちがひしめき合い、無数の紐を器用に操作していました。
さらに、4つの車輪で進む「福禄寿車」は、曲がるときに前輪を持ち上げて回転します。そして回転が終わると「ガシャーン!」というけたたましい音を立てて、男たちが地面に山車を叩きつけるのです。その豪快さも祭りの見どころですが、あまりの衝撃に、中に乗っていた寺坂くんは悲鳴をあげます。その声は、外で撮影していたカメラまで聞こえるほど…。
寺坂くんを中に乗せ、貴重な体験をさせてくれたのは人形方のリーダー・山本晃大さんです。
(人形方リーダー・山本晃大さん)
「『カメラ入れるなんて馬鹿馬鹿しい』と思ってた。今の人形方に起こっている事情を知ってもらいたい」
実はこのからくりたちは、本来9人で動かすべきものです。しかし、時代の流れにコロナ禍が加わり、この日集まったのは4人だけ。細かい動きの幾つかは諦め、人形方以外の役割の人にも助けをお願いすることで、何とか祭りを続けていたのです。
(人形方リーダー・山本晃大さん)
「(見に来る人から、参加して迎える人になってほしいですよね?)そういう人が増えてほしい」
なぜ?地元出身者がほとんどいない「若宮まつり」
祭りにアツい気持ちで臨む山本さん。この「若宮まつり」に、ただならぬ地元愛で臨んでいるのかと思いきや…。
(人形方リーダー・山本晃大さん)
「(ここが地元?)いや違います。四日市です、三重の」
他の参加者にも聞いてみると、近い人で愛知県名古屋市の他区や他の市、果ては四国や沖縄など様々です。中区出身者がほとんどいない理由を聞きました。
(祭り総監督(元老)で最年長・杉浦達郎さん)
「太平洋戦争で、燃えちゃうといかんから(山車が)よそへ売りに出されちゃった」
戦火を逃れるために若宮八幡社を離れた「福禄寿車」。終戦後、山車は無事に買い戻したものの、祭りの関係者は散り散りになりました
そのため、祭り好きが声を掛け合い、仲間のつながりで脈々と支えられてきた「若宮まつり」。みんなの力に支えられながら進む神輿行列は、無事「那古野神社」に到着しました。
最大の見せ場「本八重」!地元はバラバラでも気持ちは一つ
那古野神社に到着した山車は、最大の見せ場「本八重」を披露します。那古野神社の神様へのあいさつとして、山車を通常の曲がり方90度に加え、さらに一回転させる大技です。
この本八重を仕切るのが、網頭の神野政美さん。「福禄寿車」の運行に関わる総勢100人ほどの大所帯の先頭に立ち、その進行を一手に担う、いわば山車のリーダーです。神野さんも、地元の愛知県豊明市から毎年この祭りに駆け付けています。
(綱頭・神野政美さん)
「一番責任が重い役職。いろんなところから集まってきていて、なかなかうまく調整がとれない。僕ももう30年やってますので、知識や技術を伝承させていけるかな」
「若宮まつり」を支えて30年。そこにはすでに、地元愛を超える祭りへの思いが蓄積されているようです。地元はバラバラでも気持ちは一つに、「若宮まつりを盛り上げたい!」という気持ちを胸に始まった「本八重」。
担ぎ手たちは、前の人の後頭部に顔をうずめて、まさに必死の形相です。神野さんも声を張り上げて、発破をかけます。そして、山車が450度ぐるっと回り、無事に「本八重」が成功しました。
「福禄寿車」を次世代へつなぐ覚悟
最大の見せ場「本八重」を終え、気分晴れやかなOMATSURIちゃんたち。山車も無事に「若宮八幡社」へと戻ります。その後はみんなで提灯を飾りつけ、昼の激しさとは打って変わり、温かな光に包まれる「福禄寿車」の姿がありました。
今回も祭りに対する様々な思いに触れた寺坂くんが、一番アツかったOMATSURIちゃんに選んだのは?
(寺坂頼我くん)
「(網頭の)神野さんです!頭としての責任感や気概をすごく感じた」
(綱頭・神野政美さん)
「若宮まつりが、これからも末永く続いていくように我々が継承していかなければ」
支えてくれる人たちへの感謝と、継承への誓いを口にした神野さんからアツ~い手形をしっかりいただきました!
CBCテレビ「チャント!」5月24日放送より