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自動販売機はじめて物語~コーラとコーヒーが日本での歴史を開拓した!

自動販売機はじめて物語~コーラとコーヒーが日本での歴史を開拓した!
CBCテレビ:画像『写真AC』より「自動販売機」

真夏に沖縄の離島でサイクリングをした時のことである。のどの渇きに気づいた時に、さとうきび畑の脇にポツンと自動販売機があった。冷たいさんぴん茶の味は忘れられない。日本国内で「自動販売機」は飲料を中心に“探す必要がない”くらい多くの場所にある。

世界最古の自動販売機は、紀元前エジプトの寺院にあったという説がある。それは「聖水自販機」で、コインを入れるとその重さによって、祈りの前に清める聖水が出てくる仕組みだったようだ。現存する日本で最も古い自動販売機は、1904年(明治37年)に作られ、切手とはがきを売っていた。箱型をしていて、コインを入れると右側から切手、左側からはがきが出てくる仕組みで、下半分は郵便ポスト。そのまま手紙を投函できるという“一石三鳥”だった。

CBCテレビ:画像『pixabay』より「コカ・コーラの自動販売機」

「自動販売機」の国内での本格的な普及は、60年前の1962年(昭和37年)、今なお人気の飲み物、コカ・コーラだった。日本における清涼飲料水用の自販機、その記念すべき第1号で、日本コカ・コーラ株式会社のホームページによれば、この年だけで全国に880台が設置された。鮮やかな赤い色をした自販機には、縦に長い扉があって、コインを入れてボタンを押すと扉の向こうに「ガチャン」とコーラの瓶が転がり出てきた。自販機の正面には栓抜きも付いていて、それで開栓して冷えたコーラを飲んだ思い出がよみがえる。

次なる画期的な発明は、缶コーヒーの自動販売機である。ポッカコーポレーション(現・ポッカサッポロフード&ビバレッジ)創業者の谷田利景さんは、開通してまもない名神高速道路を走っていた時、運転手さんとコーヒーを飲んでひと息つこうとサービスエリアに立ち寄った。しかし店には長蛇の列、コーヒー1杯を飲むために30分かかったと言う。
「手軽に買って車の中で飲むコーヒーがあればいいのに」
缶コーヒーと自動販売機の歩みがスタートした。夏は冷やした缶コーヒー、冬は温めた缶コーヒー、この両方を提供できる自動販売機を開発しようと、電機メーカーにかけあって挑戦した結果、サービスエリアでのアイデア閃きから4年後の1973年(昭和48年)に、画期的な「冷温式自動販売機」が完成した。コーヒーやお茶を日常的に飲む、いかにも日本ならではの画期的な自動販売機だ。

「1970年代前半・開発当時の自販機」提供:ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社

コカ・コーラとポッカコーヒーなど飲料にけん引されて、「自動販売機」は日本国内に一気に広がっていく。かつてニュース取材した自販機メーカーの担当者が語ってくれた言葉が印象的だ。
「自販機1台を置くことは、店舗1軒を開くようなものだ」と。
日本自動販売システム機械工業会の発表によると、自動販売機の台数は2020年12月の時点で404万台。この内の半数以上が飲料を販売している。米国には日本を上回る数のおよそ650万台があると言われるが、国土の広さから見ても、1台あたりの売り上げは圧倒的に日本が勝る。それは、屋外に自動販売機が置かれている国は日本だけという事情が大きい。自販機を壊して中のコインを持ち去るという犯罪も「ない」とは言えないが少ない、治安の良さがそこにある。海外から日本を訪れる人は、当たり前のように道端に設置されている自動販売機の風景に驚くそうだ。

最近ではますますユニークな自動販売機が登場している。米、パン、和菓子、洋菓子、卵、だし汁、鍋物セット、花束、明太子などなど、「店舗1軒を開くようなもの」という言葉を裏付けるように、日本の「自動販売機文化」は歩み続けている。

いつでもどこでもコインを入れれば商品が手に入る。世界トップクラスの「自販機大国」ニッポン、そこには開発技術と共に、治安の良さという世界に誇りたい社会環境が横たわっている。「自動販売機はじめて物語」のページには、日本の文化の歩み、その確かな1ページが刻まれている。
          
【東西南北論説風(311)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿の日本はじめて物語」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして執筆しました。

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