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<論説コラム>人気洋食メニュー「ドリア」は日本生まれ~名門ホテルシェフおもてなし心の歴史~

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<論説コラム>人気洋食メニュー「ドリア」は日本生まれ~名門ホテルシェフおもてなし心の歴史~ | CBC論説THEコラム | CBCテレビ


ドリアってフランス料理?イタリア料理?その名前からつい誤解されがちだが、洋食レストランでも人気の定番メニューであるドリア、実は日本生まれである。

横浜港にあるホテルニューグランドは正統派ヨーロッパスタイルのホテルで、関東大震災の4年後、1927年(昭和2年)に開業した。ホテルの初代料理長として招かれたのがスイス人シェフのサリー・ワイルさんだった。「お客様あってこそのホテル」という徹底したサービス精神を持っていたワイルさんは、ホテルのレストランでも決まりもののコース料理以外にアラカルトを取り入れ、メニューにはこう書いた。
「コック長はメニュー以外のいかなる料理にも、ご用命に応じます」
ある日、本当にメニュー以外の注文が来た。

「体調が良くないので、何かのど越しのいいものが食べたい」それはホテルが開業してまもない1930年頃のこと、滞在していた外国人銀行家からのリクエストだった。そこでワイルさんが即席で作った料理は、「バターライスに海老のクリーム煮を乗せて、
そこにグラタンソース、さらにチーズをかけてオーブンで焼いた」ものだった。人気洋食メニュー「ドリア」が誕生した瞬間だった。料理は大好評、それをきっかけにホテルのレストランメニューに「Shrimp Doria(海老とご飯の混合)」が載ることになった。

「ドリア」という名前の由来にはいろいろな説がある。イタリアの港町ジェノバに「ドーリア家」という名門の貴族があり、そこに15世紀頃にいた海軍提督の名前からワイルさんが「ドリア」と名づけたとも言われる。一方で、こんな説もある。フランス・パリのレストランから「ドーリア家」に招かれたシェフが。イタリア国旗の3色をイメージして、「キュウリ(緑)」「トマト(赤)」「卵(白)」を使ったメニューを考えた。ドーリア家のための料理として。そう言えば、ワイルさんが生み出した料理も「パセリ(緑)」「芝海老(赤)」「ホワイトソースまたはご飯(白)」と3色で同じ。そこに名前の由来があるのでは?との説も微笑ましい。

横浜の名門ホテルで生まれた「ドリア」は、日本全国に広がっていく。ホテルではワイルさんの下で沢山の料理人たちが学んでいたが、ワイルさんは自らの技を惜しみなく伝授したそうだ。そんな弟子たちが、日本各地のホテルやレストランに移って、そこでも「ドリア」を作り続けた。ワイルさんがひとりの外国人客のために、心をこめて作った一皿は、洋食の定番メニューとして育っていった。ホテルニューグランドのコーヒーハウス「ザ・カフェ」では、現在も1930年当時のオリジナルな「ドリア」を楽しむことができる。新たにホタテの貝柱が具材に加わり「シーフードドリア」として、訪れる客の人気を集めている。

「たとえメニューになくても注文があればどんな料理にもお応えします」。自らの料理を楽しんでくれるお客様を何より大切に思ったスイス人シェフの“ホスピタリティ”おもてなし心から生まれた「ドリア」。熱々のグラタンソースとバターライスを頬張る瞬間、日本の洋食の奥深さと料理人の真心が、口の中に広がっていくようだ。
日本生まれ・・・「ドリアは文化である」。

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿のコレ、日本生まれです」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして紹介します。

【東西南北論説風(237) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

画像:「ドリア」提供:ホテルニューグランド

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